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気象データベース開発 / AIサービス研究開発

2014年入社
萩行 正嗣
防災分野に"自然言語処理"の知見を生かして開発に挑むエンジニア
大学で自然言語処理を研究し、博士号も取得、防災チャットボットのプロダクトオーナーとして基本設計や技術検証を担当してきました。 「気象」という情報科学やITとは一見無関係に見える分野で、計算機工学の知見を生かして活躍するエンジニア。
-身近なサービス実現に向けて──「防災チャットボット」の可能性
私は2020年現在、防災科学技術研究所や情報通信研究機構との共同研究として国の研究開発プロジェクトである「防災チャットボット」の開発に携わっています。このプロジェクトのメイン担当は、ウェザーニューズです。防災チャットボットの研究開発と並行して、システムの安定性の確保や、災害時に利用できるようスケールアウトさせることなど、実際に使ってもらうための活動を推進しています。このサービスを「どこにいるどんな人が必要としていて、どうすれば永続的に使ってもらえるのか」、ふたつの研究機関と共に研究内容をより良いプロダクトに変えていく部分も担っています。

当社では私含めて3名が関わっていて、1名がエンジニアとして外部パートナーと連携しながらスケールアウトさせる部分を担い、もう1名はサービスの認知を広げていく担当として、どういったプロダクトでどういう機能があるのか、プロダクトの社会実装、マーケティングを担っています。そして私はプロダクトオーナーとして、全体を俯瞰しながらプロジェクトを推進しています。「どういった研究の要素を盛り込むのか、共同研究をどこと進めるのか」などを主に考えていますね。比較的、研究者に近いポジションかもしれません。プロジェクト全体としては、外部機関も含めると20~30名が関与して、外部パートナーのエンジニアグループの10名ほどと、共同研究先の研究機関の10名ほどとは、よくコミュニケーションしていますね。

このサービスは、メインでふたつの機能があります。ひとつ目は、災害時に災害情報を集めていく機能。神戸市と1万人規模の実証実験を進めています。そこでは、阪神淡路大震災を想定して、実際に情報を送ってみるテストを重ねており、今後は実際の災害で活用していく予定です。ふたつ目は、問い合せ対応のチャットボット機能。2019年に台風15号や19号が発生した際には実証実験的に1万人ほどにご利用いただきました。ただ、「台風が来たから提供する」ではなく、いつでも使えるように準備を進めています。これまでの進捗を踏まえて本格利用したいという声も出ているので、現在トライアルでの提供を開始し、2021年度からの本格提供開始に向けて進めています。このプロジェクトは、ふたつの研究機関から声が掛かったことがきっかけなんです。私は、研究機関や外部との交流が会社の成長にとって重要だと考えているので、「参加したい」と手を挙げました。
-研究部門と現場メンバーの隔たりがない環境
大学時代は、AIのテキスト分析を研究していたので、さまざまなテキストデータを持っている会社という軸で就職活動をしていました。
そんな中、ウェザーニューズに出会い、入社することに。そのときは、気象についてまったく知らなかったです。ただ、仕事の中での研究部門と現場メンバーとの関わり合いについて聞く機会を持てたことが大きかったですね。
企業によっては研究者は研究のみをしていますが、ウェザーニューズでは営業やマーケティング担当から直接「こういったプロダクトができないか?」と声を掛けられます。「なんの研究をしているのかわからない人」という認識ではなく、そういったコミュニケーションが取れている点に魅力を感じました。

2014年に入社して、一番最初は研修も兼ねる形で予報センターの部門に半年ほど在籍していました。予報と言っても、一般的な天気予報ではなく、主に海上を対象としている部門でした。予報の仕組みを現場で身をもって知ることで、天気予報全般で計算機が重要な役割を担っていることを理解できる良い機会でした。
その後の本配属で部署異動し、そこでAIの社内への導入を推進する新しい部署「AIイニシアチブ」に在籍することに。
その部署では、ユーザーからの情報提供の分析やアナウンサーの原稿の自動化などに取り組んできました。大学での研究経験も生かし、AIに関する研究は社内で中心になって進めていきました。実際にローンチされているものもある一方で、うまくいかず失敗になったものもあります。

現在では、社内でのAI活用が一般的になったことにより、先進的にAIを導入する役割のAIイニシアチブは発展的解散をし、データ分析の部門などと合わせて、ビッグデータ解析やAIを活用する常設の部署となっています。私自身はより先進的な技術を開発するために、現在進めている防災チャットボットプロジェクトを立ち上げました。
-苦労を重ねて形になったものが、世界中の人々の元に届く喜び
「ウェザーリポート」という機能で、ユーザーからの情報をもとにした冠水状況の解析は、とくに力をいれたプロジェクトのひとつですね。テキストデータを分析に活用して、各地の冠水の状態を当てるというものです。
私の関わってきた数々のプロジェクトは、既存の自然言語処理技術だけではできない分野のため、大学との共同研究として取り組み、最終的には国際会議での学会発表もしてもらいました。
よく研究の場では、きれいなデータがそろっている中で研究することが多いのですが、実際にはきれいなデータがそろっていないことがほとんどです。また、研究のためのデータではなく、ビジネスをするためのデータのため前提が大きく異なります。
「研究に使うには、どうするべきなのか?」それを考えながらデータの前処理をして、いかに使いやすく整備するかは苦労したポイントですね。ただ、ウェザーニューズのメンバーは、部署に関わらず声を掛けると協力してくれる風土があるので、力を借りながらなんとか解決してこれました。

さまざまな苦労を重ねて形になったものが、実際に人々に使ってもらえているときはやりがいを感じています。もちろんサービス品質の継続的な向上や、新しいサービスを提供していくためには売上も欠かせませんが、社会に役に立っている実感を得られることは非常に大切だと感じていますね。

加えて、コロナウイルスによる影響があっても、ウェザーニューズは状況に応じて柔軟に変化できている実感があります。働き方の見直しが必要な中で、出産や子育てなど、一人ひとりの状況に配慮をしながら助け合っていますよ。
私自身も子どもの面倒を見ながらの在宅勤務となり、普段通りの働き方が難しい場面がありましたが、チームメンバーの協力を得られたのがすごくありがたかったです。
-77憶人の情報交信台として、質の高いサービスを発信していく
ウェザーニューズは、77億人の情報交信台として、一人ひとりの気象リスクに合わせた情報を提供すること、そして双方向にコミュニケーションすることを目標にしています。
私が現在携わっている防災チャットボットもまさに双方向性の高いサービスだと感じています。LINE等のSNSによる対話を通して被災者とコミュニケーションを取り、対話の中から安否確認や不足物資、被災状況などの災害関連情報を集約し、最寄りの避難所など被災者に必要な情報を自動で提供。自治体や消防などの災害対応者にとっては被災状況がスムーズに確認でき、被災者にとっても必要な情報を迅速に得られる、双方向ならではのメリットがあります。

加えて、一般的な言語処理技術だけでなく、ウェザーニューズという防災に身近な環境に身を置くことで培われたナレッジが開発に役立つ場面があるのを感じます。会社全体に、「いざというとき、人の役に立ちたい」という想いが根底にあるので、災害発生時は、まさに「いざというとき」。台風がどこにいるかや、給水車はどこにあるかなど、サポーターにとって必要な情報はなにかを考え、自然にチャットボットに入れ込むことにつながりました。
そんなとき、自分がこれまで研究してきた専門分野とウェザーニューズで求められるものがかみ合っているのを感じますね。
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