【スクリプト】中期Vision2026
2026年7月22日
2026年7月22日に開催した中期ビジョン説明会のスクリプトです。資料のダウンロードはこちら
中期Vision 2026について説明させていただきたいと思います。
これまでは、中期事業計画として3年間の計画を策定するスタイルでした。今回の中期Visionも3年後をターゲットに中期Vision 2026を策定しました。
ただし、昨今は市場環境の変化も大きいため、1年ごとに大きな変更の可能性もあると想定しており、基本的には毎年更新していきたいと考えております。
最初に、私たちが向き合う巨大な市場環境です。
2025年の気象の市場規模は、今だいたいグローバルで4,300億ぐらいですね。その中で、当社の売上は245億程度ですが、気候変動による災害は経済損失39兆円ありますので、気象会社がやれていることはまだまだ少ないのかなと思っています。
2030年になると、気象市場自体は6,000億に伸びる予想ですが、気候変動に伴う経済損失に関しては、60兆円とさらに大きくなります。
われわれが向き合う市場という意味では、成長ポテンシャルは極めて大きく、気象業界、そして私たちがしっかり頑張っていかなければならないと思っている次第です。
ここからは、われわれの歴史を振り返ります。
今年40周年ですが、これまでの40年をわれわれの第一創業期と定義し直しました。そして、ここから第二創業期が始まります。
これまでの第一創業期においては、本当にさまざまなビジネスをゼロから立ち上げ、健全化し、最後は利益体質化を進めてきましたが、この第二創業期に関しては、スケールしていきたいと考えています。
最初の3年ぐらいは国内の成長で得られるものをグローバルに投資しながら、3年目以降は、どんどんスケールしていく、収益化していくプランを考えております。この10年で1,000億。そこまでいくという覚悟を持って、第二創業期を進めていきたいなと思っています。
中期Visionの中で、この三つを軸に戦略の柱を立てました。
一つ目ですが、AI Fusion Companyへの進化と全社変革です。
AIは、人間の仕事が取られるとか、いろいろと言われることもありますが、われわれ、AIと戦うというよりも、どちらかというと、自らAIと融合していく。
われわれのプロダクトも、基本的にはAIと融合していく。積極的にAIを使って、AIのパワーをフル活用して、価値創造していきます。
まず今期、2027年の5月までには、全てのプロダクトに対して、AI Agentを投入します。
単にチャットボットが横に出てくるという、そういうエージェントではなく、自律的に動くようなエージェント、本来のエージェントたるエージェントを、全てのプロダクトに入れていこうと思っております。
船の業界の例でいうと、チャットで答えてくれるだけではなく、自分の危ない船があれば自動的にそれを検知して、自動的に船長に知らせてくれる。そういったようなエージェントというのを全てのプロダクトに入れていきたいなと思っています。
次は、これはかなり大きな仕事になるかなと思っていますが、2028年5月に関しては、われわれの心臓部そのものをAIネイティブにしていく計画です。
従来型の予報は、データソースやモデルがたくさんありましたし、データはサイロ化されていました。こういったものをAIネイティブ化します。これはさまざまな気象のデータであって、それが仮に観測データの中で数値化されてないようなもの(マルチモーダル)、例えば、カメラの映像や雨の音、そういった全ての情報をしっかりとAIネイティブな予報のモデルに組み込み、そのAIネイティブな予報から、さまざまにカスタマイズした予報をお客さんに出していくことを考えております。
AIが得意なところは高解像度化、精度を良くするところです。さらには、自分が出した予報を自分で修正する。モデルそのものをAIが検知して、修正して、キャリブレーションしていくというようなことも自律的にやっていく予報モデル。
まさに心臓部(予報)がAIとフュージョンする、そのような変革を、この2年間で実施していこうと思っております。
おそらく、この気象業界の中でも、気象の予報モデルというと、だいたい各国の気象局さんが先端を走っておりますが、その中でも、われわれは物理モデルのみではなく、AIに全振りしていきますので、気象の予報という世界においては、ここまでドラスティックに短期間でやる企業は他にはないと思います。
3年後、こちらは今も進めておりますが、既存のオペレーション、すでにやっているオペレーションは、全てAIで自動化していく予定です。
極端にやると、今の運営が崩れてしまいますし、お客様もその運営についておりますので、これはじっくりやっていく必要があるのかなと思います。
この運営で、リソースはかなり浮きますので、今、作業をやっているスタッフは、右下にも書いてありますが、そもそものAIの基盤を設計、もしくはハーネスエンジニアリングといった制御をしていく。
何よりも、お客さん側がどういうところで困っているのか。ときにはお客さんの場所に行って、実際の現場を学び、それを製品やAIにフィードバックする。そういったものを行っていく。
最終的な責任は人間が持ちますので、意思決定において人間は人間がやるべき仕事、作業に関してはAIが行うことで、3年以内に、今のオペレーションは全てAIになると踏んでおります。
最後に、こちらは人的投資にも関わる部分ですが、このWNI Intelligence Coreという社内的なAIを作っております。
このIntelligence Coreが日々、本当に賢くなっています。このIntelligence Coreには、本当にこれまでのスタッフの知識、もしくはお客様が持っている、そういった知識、ないしはサポーター1人1人が持っているような知識、アンド、何よりも40年間ためてきた気象会社としての知識。これらを、このIntelligence Coreの中に今どんどん入れています。
例えば、このIntelligence Coreと一緒にわれわれのスタッフが働くと、営業がこれまでリーチできなかったお客さんにアプローチできます。また、1人の営業が多くのお客さんにアプローチしたり、クロージングの機会をかなり早くできるようになります。
カスタマーサクセスであれば、これまでは、アカウントマネージャー1人が5顧客、6顧客ぐらいを電話などでいろいろとサポートするのが限界でした。でも、AIの力を借りると、ほとんどの会話はAIとお客さんで行われている。そんな世界が生まれ始めておりますので、1人のCSが30顧客、100顧客、1,000顧客のサポートを行う、ということが可能な体制になっていきます。
予報士に関しては、さまざまな本当に細かい予報、ピンポイントな予報、ビジネス予報、そういったものを1人の予報士が、どんどんクリエイティビティを高めて作っていく。
本当にさまざまなエンジニア、バックオフィスも含めて、AIでパワーアップして、これまで1人では絶対できなかったようなことを、このIntelligence Coreと一緒に行っていきます。
このように、1年ごとに、AI Agentの投入、ネイティブ化、さらには、既存のオペレーションの移行を進めていきます。
Intelligence Coreと一緒に仕事をするという意味では、もうすでに始まっておりますが、これからどんどん色が濃くなっていく。最終的には、全スタッフがAIと完全に融合して、気象のプロフェッショナル集団に変革していくイメージです。
2つ目の重点は、WNI型成長モデルの確立とグローバル展開です。
私たちは、気象会社の中でも、保有するアセットを含めて非常にユニークな立ち位置にいると考えています。
個人向けには、サブスクリプションや広告のビジネスモデルがあります。どうすれば有料会員になっていただけるのか、どうすれば広告単価やページビューを上げられるのか。そこには多くのノウハウが蓄積されています。
法人向けにも、さまざまなコンサルティングを含むビジネスを展開しています。行政や自治体を含め、お客様の予算をどのように価値へつなげるのかというノウハウもあります。このように、顧客ごとに異なるビジネスモデルを、私たちは幅広く展開しています。
産業別には、陸・海・空・インターネットの4つのドメインで、さまざまなサービスを提供しています。
さらに、コンテンツを届ける部分についても、PC、スマートフォン、AI Agent、API、データなど、すべてを独自に開発しています。つまり、届けるための技術も自社で保有しています。
これらのアセットを掛け合わせ、多様なサービスを生み出し、トップラインを飛躍的に成長させていくことが、私たちの特徴です。 例えば、Land Domainでは、鉄道のオペレーションを行うお客様に、さまざまな法人向けサービスを提供しています。
一方、そのお客様の別の部署に、「暑い夏には鉄道の利用が減るが、涼しい避暑地へ行くキャンペーンを通じて、より多くの方に鉄道を利用して楽しんでもらいたい」というニーズがあれば、Internet Domainで広告を提供できます。
実際に「避暑旅」をサポートしていますが、これはクロスドメインの一例です。
また、法人向けサービスをセンターのオペレーターがPCで見るだけでなく、現場で働くすべてのスタッフにも見せたいのであれば、スマートフォンで提供することもできます。
お客様が社内のAI Agentをさらに賢くしたい、ウェザーニューズのAgentと連携させたいということであれば、Agent自体をサービスとして提供することもできます。
このように、さまざまなアセットを掛け合わせながらサービスを提供できることが、私たちのユニークな点です。特に日本では、そのための環境がかなり整っています。 まず日本で、ウェザーニューズの成長モデル、サービスモデルを確立し、それをグローバルへ展開していく。これが、次の3年間で取り組みたいストーリーです。
グローバル展開においては、すでにグローバルに進出しているか否かで、2つに分けました。
SEAとSKYでは、すでに売上の65%がグローバルです。ここにはグローバルで成長するための土壌があります。一方で、競合もある程度多い市場です。
まだ顕在化されている市場が残されているため、まずは、プロダクトを充実させ、および、営業やCS、そういったところをしっかりとグローバルで立ち上げるところが一つのポイントです。
かつ、われわれ船の世界であれば、海の気象、空の気象、こういった気象のデータが軸にはなるのですが、例えば、その船、飛行機の位置情報、もしくはパフォーマンスの情報、そういった情報というのも掛け合わせると、さまざまなサービスが出てきます。ですので、われわれは気象のデータにこだわらず、外部データ、周辺データも購入したり、パートナーシップを組みながら、そことの掛け合わせでやっていくのも、一つ重要なテーマになってくるかなと思います。
また、アライアンスに関しても、これは非常に重要なテーマとなっております。後ほど、M&Aのところを詳しく説明しますので、そこもフォローさせていただきたいなと思っています。
まず、SEA Domainです。
市場から見ると、私たちは船のルーティングを行う会社として認識されています。これから目指すのは「脱ルーティング会社」です。ルーティングだけではなく、Maritime Business Partnerを目指します。
現在、私たちがサービスを提供している船舶は1万500隻です。3年後にはこれを倍にし、同時にサービス単価も上げることで、成長させていきたいと考えています。
単純に売上を倍にすることも、もちろん目指します。しかし、売上高1,000億円を実現するには、それだけでは十分ではありません。
個々の船舶に対するルーティングで料金をいただくだけではなく、ルーティングを前提としながら、より高付加価値なサービスを提供していきます。
例えば、AXの支援、お客様のアセットの有効活用、どこに船を配置すれば最も売上が上がるのかといった領域まで広げ、売上を伸ばしていく施策を考えています。
続いて、SKY Domainです。
SKYにも、まだ大きなポテンシャルがあります。現在は日本やアジアを中心に展開していますが、今後は世界中の空港へ広げていきます。
また、航空機が飛べるか、飛べないかという判断だけではなく、飛行後の乱気流リスクなども含めて、サービスを広げていきたいと考えています。
LANDとInternetは、現時点では売上のほとんどが日本です。したがって、今後グローバルへ大きく展開できると考えています。
この2つのドメインについては、まず日本国内でのシェアを拡大します。広告投資などを行うことで、国内モデルでもまだ伸びる余地があります。
LANDでは、例えば安否確認という市場があることも、最近あらためて発見しました。国内にも、まだ多くの可能性があると考えています。
国内事業は、ある意味でキャッシュカウとなっています。そこで得たものを使いながら、グローバルへ展開していきます。
LANDとInternetのグローバル展開では、各国の気象機関とのアライアンスやリレーションが非常に重要です。法律上の課題もあるため、それらをしっかりとクリアすることが事業推進のテーマになります。
LANDでは、新たに「LANDコアプロダクト」を定義しました。
これまで「ウェザーテックシリーズ」として展開してきた「ウェザーニュース for business」「気象観測ソラテナPro」、およびデータサービスを、LANDのコアプロダクトとして位置づけました。
これらのプロダクトは、すでにプロダクトマーケットフィットを終えていると認識しています。これからは、導入というよりも、どのように普及させ、拡大していくかがポイントです。
広告投資も積極的に行いながら、現在のプロダクトを広く普及させていくフェーズだと考えています。
Internet Domainは、日本国内でも、今後3年程度はまだ成長できると考えています。
一方、売上高1,000億円という規模を考えれば、日本国内だけではなく、世界へ出ていくタイミングです。私たちは「世界No.1の天気アプリ」を目指します。
この5年程度、さまざまな海外の天気アプリを見てきましたが、大きなイノベーションはあまり起きていません。それぞれの国にはNo.1の天気アプリがありますが、世界全体でNo.1といえる天気アプリはありません。
日本で培ってきた優れた予報精度と、利用者数を伸ばすノウハウを生かします。広告はもちろん必要ですが、広告を広げていくノウハウも含めて世界No.1のアプリになれば、売上高1,000億円も決して夢ではないと考えています。
ここは、これから非常に面白い市場になると思っています。
3年以内に、すべてのドメインで売上高成長率を前年比10%以上にすることが、一つの目標です。
最初の1年、2年は5%、7%程度かもしれません。しかし3年目に10%へ到達し、すべてのドメインが上昇気流に乗る。その後、12%、14%、18%と成長率を高めることができれば、10年後には売上高1,000億円を超えます。
まず、この10%という成長軌道にしっかりと乗せ、さらにそこから伸ばしていきます。そのためには、グローバル市場を獲得しなければなりません。
日本には、事業やキャッシュの面で、グローバル展開に向けた良い基盤があります。それを活用しながら、グローバル市場へ挑んでいくための準備が、この3年間で非常に重要になります。
最後に、資本戦略についてご説明します。
これまで私たちは、次の成長、次の勝負に向けて、ある程度の資本を蓄積してきました。ここからは、それを循環させていきます。
優先順位としては、まず投資によってトップラインを伸ばします。その中でアライアンスを組めるのであれば、M&Aも含めて検討します。それらを進めながら、バランスよく増配も行っていく。これが「蓄積から循環へ」というコンセプトです。
こちらは、キャッシュ・フローのアロケーションです。
現在、現預金は約188億円あります。今後3年間の営業キャッシュ・フローは、160億円から180億円程度になると見込んでいます。その大部分を、成長投資と株主還元へ振り向けます。
スライドでは、現預金から下向きの矢印を描いていますが、ここには強い意図があります。現預金を減らしてでも、しっかりと投資と配当へ回し、資本を循環させていくことがポイントです。
当社は、40億円程度の現預金があれば、何かあった場合でも会社を運営できると考えています。必要最低限の水準はしっかりと確保しながら、「蓄積」から「循環」へ移行していきます。
何に投資するのか、重点項目をこちらに挙げています。
まず、AIへ投資します。データも購入します。インフラにも、しっかりと投資していきます。
人材についても、AIと融合していくための投資を行います。グローバルへ展開するために、営業やカスタマーサクセスの人材を配置する投資も必要です。マーケティング投資も行います。
M&Aについては、このあとご説明します。
どのような会社とM&Aやアライアンスを行うのか。その基本となるのが、私たちがこれまでお話ししてきた「Data・Forecast・Community」の循環です。
Dataがあれば、良いForecastをつくることができます。良いForecastは人を呼び込み、集まったCommunityから、さらにDataが生まれます。
この3つの強みを補完、または強化できる企業が、M&Aやアライアンスの対象になります。
私達だけでは手に入れられないデータがあれば、積極的にアライアンスを行います。
私達だけではつくることが難しい予報や、各地域に固有の予報、まだ私たちが展開していない市場向けの予報があれば、アライアンスやM&Aによって時間を買います。
すでにお客さまのコミュニティを持っている企業であれば、その企業と一緒に取り組み、この循環の中へ入っていただくことを考えています。
具体的には、すでに気象メディアを持つ企業、各地域でさまざまなサービスを提供している気象会社、独自の気象データを持つ企業、観測技術や予報技術を持つ企業などが、M&Aやアライアンスの対象になると想定しています。
株主還元については、普通配当における累進配当を維持し、今後3年間は毎年増配することを検討しています。
2027年5月期は、普通配当として1株当たり50円を予定しています。それ以降も、成長投資とのバランスを取りながら、毎年増配していく考えです。
中期Vision 2026の財務目標になります。
3年後に関しては、この右側です。前中計に関しては売上、営業利益、ROEなどを目標に掲げていました。今回は、売上高成長率、3年後にはYoY10%。営業利益率というよりも粗利、売上高総利益率で、これを60%程度。今は47~48%ですが、AIを使えば、この60%へ十分いけるなと思っていますので、60%。そして、3年連続増配が、今回の目標です。
以上、中期Vision 2026の説明をさせていただきました。ありがとうございました。
[Q1]:目標の総利益率60%について、今のままでの営業利益率を軸とした理由を教えてください。
石橋 [A1]:今回の中期Visionでは、プロモーションを積極的に行い、販促費も使っていく方針を示しています。営業利益率には、こうした販促費も含まれますが、粗利率には含まれません。
そのため、今回はコストを管理する指標として粗利率60%以上を掲げました。これは、必要なプロモーションを行いながら、トップラインをしっかり伸ばしていくという意思表示でもあります。
[Q2]:10年後の売上高1,000億円に向けて、4つのドメインをどのように成長させていく想定でしょうか。
石橋 [A2]:基本的なシナリオは、SEA、SKY、LAND、Internetのすべてのドメインが成長していくというものです。
いくつかのシナリオを想定しており、Internetがグローバルで大きくブレイクすれば、非常に大きな事業になる可能性があります。
一方、より現実的なシナリオとしては、SEAがマーケットドミネーションに近づくスピードを上げていくことに加え、LANDが大きく成長することを想定しています。LANDは、特にアジアを中心に市場そのものがまだ十分に形成されていない一方、気候変動による経済損失が拡大しており、実は非常に大きなポテンシャルがあります。
したがって、すべてのドメインを伸ばすことを前提としながら、SEAとLANDについては、1,000億円に向けて比較的大きな成長を見込んでいます。
[Q3-1]:グローバル展開に向けたM&A・アライアンスについて、対象とする地域や企業の考え方、また投資規模のイメージを教えてください。
石橋 [A3-1]:M&Aやアライアンスの考え方はドメインごとに異なりますが、地域という点では、日本よりも海外が中心になると考えています。日本では、これまで蓄積してきた事業基盤やノウハウがあるため、自分たちで進めたほうが早いケースが多いからです。
また、今後はM&A後の統合のあり方も変わってくると考えています。これまでのM&Aでは、それぞれの地域に予報を行うスタッフや営業組織、お客様がいて、独立して存在する予報や営業のフローをどのように統合していくかが、PMIの中心でした。
一方、これからはAI時代のM&Aになります。例えば、パートナーとなる企業が持つ気象の知識やノウハウ、お客様との間で蓄積してきた知見を、WNI Intelligence Coreに取り込んでいくことが、統合の中心になると考えています。サービスや価値創造はAIを中心に行いながら、現地のお客様とのリレーションシップやネットワーク、カスタマーサクセスの機能は、引き続きローカルに残していく。そのような形が、AI時代の新しいPMIになるのではないかと考えています。
現在、社内で進めているAIを中心とした知識や業務の統合を、外部のパートナーにも広げていくイメージです。そのため、今後はM&Aそのもののスタイルも変わってくると思います。
投資規模については、対象によってかなり幅があります。気象業界には比較的小規模な会社も多いため、そうした企業とのM&Aやアライアンスであれば、二桁億円、その中でも比較的前半の規模が一つのイメージです。その際には、M&Aによって一緒に進めたほうがよいのか、それとも自社で進めたほうがよいのかを比較しながら判断します。
一方、対象によっては、現在の当社の現預金だけでは対応できない規模になる可能性もあります。その場合には、別の資金調達手法を検討することも考えられますし、必ずしも100%の買収に限定する必要もないと考えています。したがって、現時点で一律の予算を設定しているというよりも、対象や目的に応じて幅広く検討していく方針です。
[Q3-2]:大型のM&Aを行う場合、LBOを含めた外部資金の活用も選択肢になるのでしょうか。
石橋 [A3-2]:第一創業期で事業の基盤をつくり、第二創業期では、その基盤を使って事業を大きく伸ばしていく必要があります。
当社のビジネスモデルや手法、これまで蓄積してきたノウハウに魅力を感じていただけるのであれば、大型のM&Aに際して、外部資金を活用する可能性は十分にあると考えています。現時点で具体的な手法を決めているわけではありませんが、外部からの資金調達も選択肢の一つです。
[Q3-3]:M&Aの対象地域について、米国、欧州、アジアなどの優先順位はありますか。
石橋 [A3-3]:基本的には、当社がすでに拠点を持っている地域が、接点という意味では取り組みやすいと考えています。当社は世界各地に拠点を展開しているため、現時点で特定の地域だけを優先しているわけではありません。
ただし、現在の売上構成を見ると、当社にとって米国は売上比率が低く、今後のチャレンジが必要な地域だと考えています。
[Q4]:AIがもたらす事業リスクについて、特に留意している点を教えてください。
石橋 [A4]:一つは、AIをどのようにコントロールするかという点です。WNI Intelligence Coreに当社の知識やデータを集約していく中で、関係のないお客様が他社の情報にアクセスできてしまうようなことがないよう、適切なガードレールを設ける必要があります。
もう一つは、大規模なAIモデルが進化することで、当社が提供しているサービス自体が代替されるのではないか、というリスクです。ただ、実際にお客さまごとの課題を解決するためには、気象のノウハウだけでなく、それぞれの業務フロー、専用のデータ、お客様固有の事情などを組み合わせる必要があります。そのため、大規模なAIモデルだけで、すべての課題を解決できるようになるとは考えていません。
当社は、大規模なAIモデルを使う側として、その優れた部分を取り入れながら、これまで対応できなかった細かな領域までサービスを広げ、価値創造につなげていく考えです。AIをリスクとして捉えるだけではなく、当社のノウハウやデータと融合させて活用していくことが重要だと考えています。
[Q5-1]:AI化のロードマップに伴い、収益とコストはどのように変化していくと考えていますか。
石橋 [A5-1]:まずAI Agentの開発については、プロダクトをつくるためのAI投資が先行します。その次のAIネイティブな予報モデルについても、一定の開発投資が必要になります。
コストの変化は、オンプレミスからクラウドへ移行したときと似ています。移行期間中は既存システムと新しいシステムが並行するため、一時的にコストが重複しますが、完全に移行すれば一つに集約されます。同時に、クラウドだからこそ可能になる新しいサービスや機能のメリットも得られるようになります。AIへの移行も、同じようにコストの中身が変わっていくイメージです。
一方、既存オペレーションのAI化については、進めるほどコスト削減につながります。すでに過去2年間で、月間約1万5,000時間のオペレーションをAI化しています。2029年5月期に向けて、この取り組みをさらに進めていくことで、継続的なコスト削減効果が見込めると考えています。
[Q5-2]:オペレーションのAI化によって、どの程度のコスト削減を見込んでいますか。
石橋 [A5-2]:現時点では、今後3年間の具体的な削減額まではお示ししていませんが、既存オペレーションについては、かなり大きなコスト削減につながると考えています。
当社の約1,100人のスタッフのうち、およそ半分がオペレーションに関わっています。その業務をAI化していくため、コスト面でのインパクトは大きいと見ています。
もちろん、AIを利用するためのトークンなど、新たに発生するコストもあります。ただし、AIの利用コストは非常に速いペースで低下しており、Open Weightsなどのオープンなモデルを活用することで、さらに下げられる可能性もあります。
人によるオペレーションコストと比較すれば、AIのコストは今後さらに低くなっていくと想定しています。実際に、前回の中期経営計画では、月間約1万5,000時間のオペレーションをAI化したことが、利益率の向上にもつながったと考えています。
[Q5-3]:AI化による売上面の効果について、どのようなアップサイドを想定していますか。
石橋 [A5-3]:現在、数字として表れているAIの効果は、どちらかというとコスト削減が中心です。
今後、AI Agentが自律的に動くようになり、予報についてもAIネイティブな形でさまざまなコンテンツを瞬時につくれるようになれば、売上のアップセルにつながると考えています。
例えば、AIによって新しいサービスを提供する、新しい市場に展開する、これまで当社のサービスを使っていなかった周辺の方々にも利用していただく、といった形で、提供価値や提供範囲を広げることができます。
さらに、当社のサービスを利用したことで、どれだけコストを削減できたのか、どれだけ売上に貢献できたのかを明確にできれば、その成果に応じて対価をいただくようなプライシングも可能になると考えています。
AIによってサービスの提供価値が高まり、価格や提供範囲が広がることで、売上が伸びていく。そのような構造を想定しています。
[Q5-4]:LLMはバージョンアップによって回答や精度が変化することがあります。AI予報やサービスの安定性について、どのように対応しますか。
石橋 [A5-4]:当社が開発しているAIによる予報モデルと、対話などに使うLLMは別のものです。AI予報モデルについては、基本的に当社の中でコントロールする領域です。
一方、予報をどのように表現するか、どのようにお客様と対話するか、どのように情報を処理するかという部分ではLLMを活用します。この部分は、使用するモデルによって受け答えが変化する可能性があります。
当社では、主要なLLMを並行して使用し、それぞれがどのような回答をするのかを把握しています。そのため、モデルのアップデートによる変化も高い確率で検知できます。何らかの問題があれば、別のモデルへ切り替えることも可能です。
また、最新モデルを直ちにお客さま向けサービスに使用するのではなく、一つ前の安定したモデルを使用することもあります。一定の検証期間を設けながら順次導入することで、お客様への回答に問題が生じないように対応しています。
[Q5-5]:世界各国で共通してトップになっている天気アプリが存在しないのはなぜでしょうか。また、御社がグローバルで成長できると考える理由を教えてください。
石橋 [A5-5]:気象サービスは、基本的にローカルで生まれ、その地域の人に利用されることで、ローカルブランドとして成長してきました。国によっては気象に関する規制も異なるため、世界共通のサービスが広がりにくかったという背景もあります。
その中で、当社がどのようにグローバル展開していくかは大きなチャレンジです。各国の気象機関とのアライアンスや規制への対応など、クリアすべきことはあります。
一方、日本では、高い予報精度に加えて、サブスクリプション、メディア、スマートフォン、動画などを組み合わせた気象サービスが成立しています。人口規模との比較で見ても、日本の気象サービス市場は非常に大きいと考えています。
ただし、これは日本人だけが天気にお金を払うということではありません。当社の事前調査では、海外でも天気サービスに料金を払っている方が多く、比較的シンプルなサービスであっても月額5ドル程度を支払っているケースがあります。
日本で鍛えてきた、天気へのこだわりや、きめ細かなサービスを海外でも提供することで、現地の気象会社や気象機関とは異なる選択肢になれると考えています。
さらに、世界中の方々がウェザーリポートに参加し、そのコミュニティによって予報精度が高まる仕組みを、AIの力も活用しながらグローバルに展開できれば、これまでにない世界共通の気象プラットフォームをつくれる可能性があります。これは大きなチャレンジですが、当社が40年間積み上げてきたものを生かせる領域だと考えています。
[Q6]:2029年5月期の売上高成長率を10%以上としていますが、SEA Domainの対象船舶数を約1万500隻から約2万1,000隻へ拡大できれば、10%を上回る成長も可能ではないでしょうか。
石橋 [A6]:現在の対象船舶数は、すべての船舶に対して、年間を通じてサービスを提供しているという数字ではありません。
例えば、冬季や台風の時期など、必要な期間だけ3カ月間利用する船舶も1隻として数えています。それ以外の期間にはルーティングサービスを利用しない船舶も含まれています。
約2万1,000隻という目標についても、すべての船舶を年間を通じてサポートするという意味ではなく、まずは1年に一度でも当社のサービスを利用していただく船舶を増やすという考え方です。
将来的に売上高1,000億円を目指す段階では、年間を通じて船舶をサポートし、船単位ではなく企業全体に対して価値を提供していくシナリオも考えています。
今回の計画は、まず約2万1,000隻との接点をつくることを前提としたものです。その意味では、多少控えめに見えるかもしれませんが、一定の自信を持って実現を目指せる計画として設定しています。
[Q7]:2027年5月までに投入するAI Agentの効果は、2027年5月期の計画にどのように盛り込まれていますか。
石橋 [A7]:すでに、さまざまなプロダクトにチャット形式のAI Agentを導入しており、お客様からも高い評価をいただいています。
2027年5月までには、単に質問に回答するチャット形式ではなく、自律的に動くAI Agentへと、さらに仕上げていく考えです。お客様の業務をより効率化するだけでなく、お客様自身がまだ気づいていない課題についても、当社から提案できるようなものをイメージしています。
このAI Agentには、当社が40年間蓄積してきたデータや知識が活用されます。そのため、一般的なAIとは回答や提案の内容が大きく異なり、プロダクトそのものの価値を飛躍的に高める可能性があります。
現在、他社のサービスを利用しているお客様にとっても、当社のサービスへ切り替えるきっかけになると考えており、売上にも直接つながる効果を想定しています。
[Q8]:SEA Domainでは、まず単発でサービスを利用する船舶を増やしていくということでしょうか。 石橋 [A8]:まずは、少なくとも一度、当社のサービスを利用していただく船舶を増やす考えです。これまで利用していなかった船舶との接点をつくり、サービスのフットプリントを広げていくことが、SEA Domainの取り組みの一つです。




