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10月8日の阿蘇山噴火について
2016年10月8日1時46分頃、阿蘇山中岳第一火口で爆発的噴火が発生しました。ウェザーニューズは、阿蘇市に設置した独自観測機「WITHレーダー」が観測した情報から噴煙高度を算出し、火山灰の拡散予測を発表しました。また、噴火直後に全国のウェザーリポーターとともに降灰状況の調査を実施した結果、火山灰は四国まで達していることがわかりました。阿蘇山からの距離によって降灰までに時間差があり、8日未明から朝にかけては阿蘇山北東側から大分県、昼頃にかけては四国で降灰していることを確認しました。
今回の噴火は1980年1月26日以来の規模で、気象庁は8日1時50分に噴火速報を発表するとともに、55分に噴火警戒レベルをレベル3(入山規制)に引き上げています。今後、当社は阿蘇山の麓にライブカメラや「WITHレーダー」を設置して24時間体制で観測するなどして、被害の軽減につながる情報を提供していきます。
1.噴煙状況
2014年11月26日以降、阿蘇山の連続的な噴火が始まったことから、当社は阿蘇市に独自観測機「WITHレーダー」を設置し、24時間体制で観測を行ってきました。「WITHレーダー」はゲリラ雷雨を捉えるために全国80カ所に設置している超小型気象観測レーダーです。2011年に新燃岳や桜島が噴火した際に、噴煙も捕捉できることが実証されました。「WITHレーダー」は6秒ごとに観測するので、ほぼリアルタイムに噴煙を捉えることができます。
今回は、2016年10月7日21時52分頃の噴火と、10月8日1時46分頃の噴火の際に、噴煙を捉えています。7日21時52分、山頂からわずかな噴煙を確認できましたが、高く立ち上ることはありませんでした。8日1時46分には再度、噴煙が火口から立ち上り、1時58分頃には山頂直上で海抜約8,000mを観測しました。その後、噴煙の高さは11,000mに達して山頂から切り離され、東北東方向(大分県方面)に流れたことが確認できました。
2.降灰状況
降灰の広がりを調べるため、全国1,000万人の「ウェザーリポーター」とともに降灰に関する調査を実施しました。8日3〜18時、スマホアプリ「ウェザーニュースタッチ」を通して「阿蘇山の降灰状況は?」と質問し、「降灰なし」「灰たっぷり」「灰うっすら」の3項目から選択していただいたところ、九州や中国、四国を中心に2,158通の降灰報告が集まりました。8日未明から朝にかけては、阿蘇山の北東エリアや大分県から「灰たっぷり」の報告が寄せられ、昼頃にかけては四国から「灰うっすら」の報告が届きました。
また、ウェザーニューズには写真付きの降灰報告も寄せられ、報告の多くは黒い火山灰が車のボンネットやベランダの手すり、壁に付着しているというものでした。阿蘇市にお住まいの方からは、「火口から東北に10km付近の阿蘇市です。雹が家に当たるような音で目が覚め、外を見たら、砂利混じりの降灰でした。一時停電していましたが、今は復旧しています。」というコメントも寄せられました。また、福岡県や愛媛県からは、硫黄のような匂いが漂っているという報告もありました。
図3:8日18時までに届いたウェザーリポート
3. 火山灰の拡散予測
8日1時46分の噴火発生時、当社の地象センターは、“8日昼過ぎにかけて、火山灰は四国を通過し、関東の東海上へ広がる見込み”(図4)と発表しました。上空の風は高度によって風向や風速が変わるため、阿蘇山直上の噴煙高度をどれだけ正確に見積もることができるかで、予測精度は変わってきます。今回の噴火は夜間になりましたが、「WITHレーダー」の観測データから地象センターは噴煙高度をより正確に見積もることができました。
その後、ひまわり8号赤外3バンドによる火山灰解析画像(図5)を元に、上空高く舞い上がった噴煙をモニタリングしました。その解析画像と拡散予測を比較した結果、上空8,000m以上の火山灰の拡散予測に関しては妥当であったと考えられます。地上付近の火山灰に関しては、予測されたような九州北部や中国などへの広がりが、ひまわり8号による解析ではほとんど見られません。これは、下層の火山灰については予測より濃度が薄まったか、ひまわり8号による解析では上層の雲の影響を受けて映りにくくなったことが考えられます。今後もウェザーリポーターとともに行っている降灰調査を元に検証していきます。
4. 阿蘇山の噴火に対する今後の取り組みについて
気象庁によると、8日の阿蘇山の噴火は、マグマが水と接触して起こる「マグマ水蒸気噴火」の可能性があるという見解が示されています。阿蘇山の火山活動は活発な状態となっており、今後も8日の爆発的噴火と同程度の噴火が発生する可能性があることから、当社では以下の内容に取り組んでいきます。
・阿蘇山周辺の監視強化
今回の「WITHレーダー」の噴煙検知のようにリアルタイムに噴煙の状況を把握するために「WITHレーダー」の観測を強化し、モニタリングを継続します。
・降灰状況マップの公開や「火山アラーム」の提供
全国1,000万人のウェザーリポーターとともに今後も降灰の実態を調査し、降灰状況マップを一般に公開していきます。また、スマホアプリ「ウェザーニュースタッチ」を通して、噴火速報の通知サービス「火山アラーム」(気象庁が2015年8月より始めた噴火速報)の配信や、地象センターからの火山解説の提供を行い、火山の近くにお住まいの皆様の安全をサポートできるよう努めていきます。