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デジタル技術で進む学校の熱中症対策、気温など7要素を1分毎に観測する気象IoTセンサー活用
山形市、学校の熱中症対策として「ソラテナPro」を本格導入
〜市内全52校でリアルタイムのデータ活用、教職員の負担軽減と子どもたちの安全確保の実現へ〜
株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:石橋 知博)は、山形市が高性能気象IoTセンサー「ソラテナPro」の本格運用を開始したことを本日発表しました。観測データは山形市立の小中高の全52校の子どもたちの熱中症対策に役立てられます。
これまで山形市内の学校では、教職員が休み時間や部活動の前などにWBGT計を用いて暑さ指数を測定しており、近年の猛暑により測定頻度が増加し、業務負担が課題となっていました。この課題を解決するため、山形市と当社は令和6年1月に包括的な連携・協力に関する協定を締結し、デジタル技術を活用した熱中症対策として、全国に先駆けて市立学校6校に「ソラテナPro」を設置する実証実験を行いました。
「ソラテナPro」は気温・湿度・気圧・雨量・風向・風速・照度の7要素を1分毎に観測する小型の気象観測機です。観測データをもとに環境省熱中症予防情報サイトに示されている計算式に基づいて「暑さ指数(熱中症リスク)」を算出し、 “危険”や“厳重警戒”など4ランクで判定します。観測データはアプリや専用ウェブサイトから確認でき、学校のモニター表示やスマホのプッシュ通知を活用することで、校庭での測定が不要になります。
山形市が実証実験時に実施した教職員へのアンケートで、全ての設置校から「教職員の負担軽減につながった」「学校での活動判断に役立つ」と肯定的な回答を得られ、今回の本格導入にいたりました。当社の調査で山形市内の気象状況が概ね8つのエリアで区分できることがわかったため、山形市は設置校を8校に拡充し、観測データを近隣の44校に共有する形で、全52校の熱中症対策に活かします。当社は、今後も熱中症対策における教職員の負担を軽減し、子どもたちが安全で健康に過ごせる教育環境の整備を支援していきます。
「ソラテナPro」のサービスサイトはこちら | お問い合わせはこちらから |
https://wxtech.weathernews.com/soratena.html | https://wxtech.weathernews.com/contact/inquiry/ |

山形市の小中高校で気象IoTセンサーの本格導入開始
山形市は奥羽山脈と白鷹丘陵に囲まれた盆地に位置しており、東北とはいえ夏は暑いことで知られています。1933年に山形市で40.8度の最高気温を記録し、その記録は2007年まで74年間も日本の最高記録として続きました。山形県内の熱中症による救急搬送者数(5〜9月)は令和6年673名、令和5年1,111名となっており、しっかりとした熱中症対策が求められています。
山形市の学校現場では教育委員会が作成したマニュアルなどに基づいて、各学校の実情に応じて対応を行っていました。ところが、近年の異常な暑さの影響で測定の頻度が増え、教職員の負担が増加していたため、熱中症対策の徹底と教職員の業務負担の軽減を両立することが課題となっていました。
このような相談を受けたウェザーニューズは熱中症対策に関する協力を打診し、令和6年1月25日、ウェザーニューズと山形市は包括的な連携・協力に関する協定を締結しました(※1)。本協定のもと、令和6年度のデジタル技術を活かした子どもたちの熱中症対策として、「暑さ指数」をリアルタイムに算出する高性能気象IoTセンサー「ソラテナPro®︎」(※2)を全国で初めて山形市立の小中高校に設置し、有用性を検証する実証実験を行いました。

(株)ウェザーニューズ 代表取締役会長 草開千仁 (左)、市長 佐藤孝弘 氏(右)
実証実験は山形市の主導で、まず市立の小中高校全52校の中からモデル校を選定し、6校に「ソラテナPro」を設置しました。「ソラテナPro」は、設置場所のピンポイントな気象データを1分毎に観測し、観測データをクラウド上に蓄積していきます。それまでは教職員が1日に何度もグラウンドなどにWBGT計を持って行き、暑さ指数を測定して用紙に記録していましたが、試験導入後は校舎内にいながらいつでも教職員用の端末などで暑さ指数や気温などの観測データを把握できるようになりました。これにより、教職員の業務負担が軽減されたほか、正確なデータに基づく熱中症対策が可能になりました。
一方、機器の設置場所については課題も見つかりました。「ソラテナPro」は電源を確保する必要があるため、設置校の中にはグラウンドから離れた場所のコンクリートやアスファルト上に設置しなければならないケースもあり、輻射熱の影響によりグラウンドで測定した値よりも暑さ指数の数値が高く算出されました。反対に木や建物の陰になる設置場所では、暑さ指数が日向のグラウンドよりも低くなるケースが確認され、そうした設置環境の改善策として、山形市は太陽光パネルによる電源供給が最適であると判断しました。
また、近隣校に観測データを共有するため、運用に最適な台数を検討しました。ウェザーニューズが山形市内の気象状況を調査し、市立学校全体が概ね8つの気象区分に分類できることがわかりました。
加えて、山形市が実証実験中に設置校や近隣校にアンケートを実施したところ、全ての設置校から教職員の負担軽減につながり、学校での活動判断に役立つとの回答が得られました。
これらの実証実験の結果を踏まえて、山形市は太陽光パネルの活用や気象区分に基づいた「ソラテナPro」の設置場所を検討し、令和7年度から設置校を8校に拡充して本格導入することになりました。設置校と近隣校を合わせて全52校の熱中症対策に役立てられます。

高性能気象IoTセンサー「ソラテナPro」
「ソラテナPro」は、気温・湿度・気圧・雨量・風向・風速・照度の7つの要素を1分毎に観測する小型の気象IoTセンサーです。センサー開発を得意とするオムロン株式会社(本社: 京都市下京区、代表取締役社長 CEO: 辻永順太)と予報精度No.1の技術を有するウェザーニューズが、両社の強みを活かして開発しました。
小型かつ軽量なため設置が容易で、電源を入れるだけで観測が開始します。災害レベルの大雨(雨量50mm/h)や強風(風速50m/s)も観測できる高い性能が特徴で、「ウェザーニュース」アプリやパソコン版の専用ウェブサイトから、観測データだけでなく天気予報や雨雲レーダーまで確認できる点で利便性にも優れています。

暑さ指数のリスク上昇で黄・赤色に変化
また、「暑さ指数(熱中症リスク)」も確認できるため、熱中症対策にも有効です。気温、湿度、風速などの観測データをもとに、環境省熱中症予防情報サイトに示されている屋外でのWBGTの計算式を用いて算出し、“注意”、“警戒”、“厳重警戒”、“危険”の4ランクで判定します。「暑さ指数(熱中症リスク)」や気温、雨量、風速などが利用者の設定条件を満たした場合は、プッシュ通知やメールでお知らせするので見逃しの軽減につながります。さらに、1分毎の観測データがクラウドに記録されるため、いつでも過去データを分析して今後の対策に活用できます。
なお、本製品は高い信頼性と安全性も担保されており、国土交通省の新技術情報提供システムNETISに登録済(KT-240014-A)で、気象庁から補完観測の予報業務利用の承認を日本で初めて取得しています(※3、4)。
参考:観測データをトリガーにしたプッシュ通知の設定例
「ソラテナPro」の通知機能 | 基準値の例(利用者がアプリ上で設定変更可) |
気温アラーム | 35℃以上 |
雨量強度アラーム(1分) | 10mm/h以上 |
10分雨量アラーム | 5mm以上 |
時間雨量アラーム | 30mm以上 |
連続雨量アラーム | 50mm以上 |
平均風速アラーム(1分) | 8m/s以上 |
平均風速アラーム(10分) | 8m/s以上 |
最大瞬間風速アラーム(1分) | 8m/s以上 |
最大瞬間風速アラーム(10分) | 8m/s以上 |
暑さ指数アラーム | 「警戒」以上 |
暑さ指数アラーム(10分平均) | 「警戒」以上 |
寒さ指数アラーム | 「警戒」以上 |
寒さ指数アラーム(10分平均) | 「警戒」以上 |
道路凍結指数アラーム | 「注意」以上 |
ご利用方法はレンタルと購入の2種類からお選びいただけますので、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちらから:https://wxtech.weathernews.com/contact/inquiry/
「ソラテナPro」の製品仕様
製品名 | 「ソラテナPro」 |
寸法 | 縦×横×高さ: 約125mm×125mm×267mm |
本体重量 | 約1kg |
観測データ | 7要素:気温・湿度・気圧・雨量(mm/hに換算)・風向・風速・照度 |
観測頻度 | 1分毎 |
測定範囲 | 気温 -20〜50℃、湿度 0〜100%、気圧 600〜1100hPa、雨量 0〜50mm/h、風向 0〜360°、風速 0〜50m/s、照度 150,000 lx |
提供データ | <最新データ(実況、過去24時間):1分毎> <過去データ:1日毎> |
消費電力 | 1.5W(平均値) |
電源電圧 | AC100V / DC5V〜DC12V |
付属品 | 電源ケーブル(AC版12m / DC版4m) |
通信 | IoT SIM |
※1 2024年1月発表 ウェザーニューズと山形市「包括的な連携・協力に関する協定」を締結
/news/45648
※2 2023年7月発表 新型気象 IoT センサー「ソラテナ Pro」を開発
/news/43713/
※3 2024年5月発表 「ソラテナPro®」が国土交通省 新技術情報システムNETISに登録
/news/46841/
※4 2025年1月発表 「ソラテナPro」が日本初の補完観測の予報業務利用の承認を取得
/news/50737/