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Wx Files Vol.28 2014年9月27日 御嶽山の噴火について
この度の御嶽山噴火により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
2014年9月27日午前11時52分頃、長野県と岐阜県の県境にある御嶽山(標高3,067m)が噴火しました。気象庁は噴火警報レベルを3に引き上げ、現在、入山規制が行われています。今回の噴火は登山・紅葉シーズンの好天の昼時であったこともあり、多数の犠牲者を出す甚大な災害となりました。株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)は、二次災害や同様の被害を少しでも減らすことを目的とし、Wx Files Vol.28を通して、噴煙・降灰の状況や当時の火山灰の拡散予測の振り返りを行うとともに、御嶽山噴火による被害を少しでも減らすための支援を行っていくことを発表しました。
1.噴煙の状況の振り返り
2014年9月27日午前11時52分頃、長野県と岐阜県の県境にある御嶽山(標高3,067m)が噴火した。諏訪湖に設置している当社のライブカメラは噴火の様子を捉えていた。写真1の左にある御嶽山の方角から突如として白い噴煙らしき雲が上がり、諏訪湖よりも南側を通過していることがわかる。(写真1)
気象庁レーダーでは、噴火直後から御嶽山の山頂付近に噴煙らしきエコーを捉えていた。図1の気象庁レーダーの北西-南東方向の断面図を見ると、噴煙の高さは12時頃、最大で海抜約8,000m〜約9,000mまで達していることがわかる。エコーは15時頃まで断続的に観測されたが、15時以降は小康状態となった。エコーの水平分布(図2)では、12時以降、東に広がりはじめ、諏訪湖のライブカメラに映った東北東方向と、南東方向の二方向に流れていたことが確認できた。
また、レーダーエコーが現れている山頂付近では落雷も検知された。全国56,000人で雲の監視を行っている当社の「ゲリラ雷雨防衛隊」から、長野県木曽郡木曽町から「雲が発達し雷鳴が聞こえます。」という報告があった。これは噴火の際に火山灰や水蒸気などの摩擦電気により生じる「火山雷」であったと推定される。
2.降灰の状況の振り返り
当社は降灰の広がりを調査するため、空の様子や体感の変化を報告してくれる全国700万人の「ウェザーリポーター」と共に降灰に関する調査を行い、「降灰なし」、「灰うっすら」、「灰どっさり」、「石も降る」の4項目から選択をしてもらったところ、これまでに11,744件の報告が集まった。それらの報告から、27日13時から夜にかけて御嶽山の東-北東側エリアを中心に降灰し、深夜にかけて降灰エリアは南東側の伊那市から山梨県甲府市に拡大し、さらに28日朝にかけて、山梨県と東京西部でうっすらと降灰していたことがわかった。(図4,5)
報告された写真の多くは、白っぽい火山灰が車のボンネットやベランダの手すりに付着しているもので、非常に細かく、うっすらと堆積しているものがほとんどであった。また、天気は良いにも関わらず景色が霞がかっていたり、御嶽山のある長野県内からは夜は硫黄の臭いがするという報告が届いた。また、喉がイガイガしたり、ザラザラするという異常を感じる方も多くいるようだ。
また、全国1,000カ所設置しているウェザーニューズの花粉観測ロボット「ポールンロボ(写真3)」は、火山噴火の際、浮遊している火山灰を検知することがこれまでの桜島の噴火でわかっている。今回の御嶽山の噴火では、降灰エリアの長野県南部、山梨県内のポールンロボの27日午後から28日の朝までのデータからは顕著な増加は認められず(図5)、浮遊している火山灰の量も多くはないと判断できる。
3.ウェザーニューズ地象センターによる火山灰の拡散予測について
ウェザーニューズの地象センターは、火山灰拡散予測として、27日日中は火山灰は東へ流れ、27日夜は山梨県、28日朝にかけては関東西部に広がるという予測を発表していた(図7)。これは御嶽山上空で西風が吹いていたためである。(図8)
一方、実況天気図(図9)をみると、 9 月27 日は高気圧が三陸沖を東進し、小笠原近海を台風17号が北上していたため、本州南岸の地上付近では北東風が強く吹いていた。そのため、東に流されてきた火山灰は、北東風により関東の地上付近には到達しにくいと見て、東京都心や太平洋側への降灰の可能性は低いという予測を出していた。この予測は、2.降灰の状況の振り返りで記載した実況と照らし合わせると、妥当であったと思われる。
4.御嶽山の噴火に対する今後の支援について
火山噴火予知連絡会によると、2014年9月27日の御嶽山の噴火は、マグマを直接噴き出さない「水蒸気噴火」であるという見解が示され、低温の火砕流が斜面を下ったと認定された。今後も27日と同程度の噴火が起きる可能性もあることからウェザーニューズでは以下の2点の取り組みを実施していく。
4−1.御嶽山周辺の気象観測設備の設置
より詳しくリアルタイムに噴煙の状況を把握するために、御嶽山の麓にライブカメラや、ウェザーニューズ独自の小型レーダー「WITHレーダー」を10月上旬までに設置する予定である。この「WITHレーダー」は当社独自の超小型気象観測レーダーであるが、過去、新燃岳の噴火の際に噴煙の捕捉が可能であることがわかっている(図10)。6秒ごとの観測が可能なため、ほぼリアルタイムに噴煙を超高頻度で観測することができる。また、WITHレーダーが設置されるまでの間に9月27日と同程度の噴火があった場合は、より機動性の高い「移動型WITHレーダー」を用いて現地での観測を行う。
4-2.ウェザーリポーターとの降灰実況マップの作成、公開と活火山に関する情報の発信
ウェザーニューズのスマートフォン向けアプリ「ウェザーニュースタッチ」の御嶽山の専用ページにて、噴火活動の状況や今後の火山灰の拡散・降灰予測等の最新情報を更新していく。また、全国約700万人のウェザーリポーターとともに降灰の実態を調査、公開していく。また、フィーチャーフォン向けサイト「ウェザーニュース」における「火山情報」では、御嶽山以外の活火山の火山活動の最新情報を掲載するとともに、避難小屋の位置や突然の噴火の際に取る行動など、皆さんの知見・意見を取り入れながら、最善な対応策を考えていく。