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雨雲を30秒で360度高速スキャン、アジアの気象予測の精度向上へ
3次元観測する新型気象レーダーのグローバル展開を開始
〜第一弾としてベトナム・ハノイに設置、洪水リスクの早期発見や警報の発表に活用〜
航空気象 > 道路気象 > 鉄道気象 > 株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)はベトナム気象水文総局(総局長:Dr. Tran Hong Thai)と連携し、高頻度観測小型気象レーダー「EAGLEレーダー」の海外展開を開始し、第一弾としてベトナム・ハノイに設置します。当社は、4月27日にベトナム気象水文総局とレーダーの提供に関する協定を締結しました。2022年7月にはハノイに設置し、運用を開始する予定です。
「EAGLEレーダー」は、周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型の気象レーダーです。半径50km以内の積乱雲の発達状況をほぼリアルタイムに捉えられるため、集中豪雨や突風、ヒョウなど、局地的な気象現象をより正確に把握することができます。
当社とベトナム気象水文総局は、ハノイに「EAGLEレーダー」を設置することでより高解像度な観測を実現、予測精度を向上します。これにより、洪水リスクの早期発見や警報の発表を決定する際の参考情報として活用されレジリエンスの強化を進めていきます。その他、本レーダーの観測データは鉄道や道路、空港など交通インフラでの活用も期待されます。
今後は、2年以内に日本を含むアジアの計50カ所に設置していき、グローバルにおける気象現象の監視体制を強化していきます。
新型の小型気象レーダーをベトナムに設置、レジリエンス強化へ
ウェザーニューズとベトナム気象水文総局は、2015年に戦略的パートナーシップを締結しており、都市のレジリエンス強化を目的に、気象データの共有や観測インフラの設置など様々な取り組みを行ってきました。ベトナムは熱帯低気圧が発生しやすく、フィリピンの付近で発達した台風の影響も受けやすい環境下にあります。このため、毎年のように洪水が発生しており、人々の生活や社会経済に大きな影響を与えています。
そこで今回当社は、ハノイへ「EAGLEレーダー」を設置し、運用を開始します。これは、世界気象機関及び日本の気象庁との連携のもと、世界気象機関の国際協力プログラムの一環となっています。新型レーダーの設置により、現在ベトナムに設置されている気象レーダーよりも高解像度な観測が可能になり、集中豪雨などの局地的な気象現象をより正確に把握する効果が見込まれます。ベトナム気象水文総局は、このレーダーを洪水リスクの早期検知や予測精度の向上に活用します。
また、レーダーの観測データは企業に対しても提供可能で、鉄道や高速道路、航空の業界での活用を見込んでいます。
ベトナム気象水文総局 副局長 Dr. Hoang Duc Cuong のコメント
「現在、ベトナムの気象レーダーネットワークは全土をカバーしています。しかし、ベトナムの地形は複雑で山岳地帯もあり、局地的な短時間の雨を検知することが難しい状況です。このため現在の観測技術では、予報と警報を発表するには不十分だと感じています。EAGLEレーダーの導入は、局地的な大雨を引き起こす雲の検出、監視、観測、および警報の発表に大いに役立ちます。レーダーの装置に加えてウェザーニューズとの取り組みを通じて、ノウハウを共有し、ベトナムにおけるEAGLEレーダーの活用・運用に役立ていきたいと思います。今後、気象水文総局とウェザーニューズの取り組みが新たな一歩を踏み出し、災害リスクの軽減と持続可能な経済発展に貢献するために、より発展していくことを願っています。」
株式会社ウェザーニューズ 代表取締役社長 草開 千仁 のコメント
「ベトナム気象庁との協力関係の強化は、ウェザーニューズのグローバル展開において非常に重要で、特にレーダーのような技術協力と新たな気象マーケットの展開において期待しています。また、この取り組みは世界の気象業界において初めての試みであることから、気象業界における官民パートナーシップの成功事例としてWMOでも注目が集まっています。その観点でもぜひ成功させたいと思っています。そして、何よりもEAGLEレーダーがベトナムの人々の暮らしや経済活動に対して、自然災害リスクを減らすことで少しでも役に立てることを期待しています。」
30秒で周囲を3次元観測、高頻度観測小型気象レーダー「EAGLEレーダー」
当社は、2014年よりオクラホマ大学と共同で新たな高頻度観測小型気象レーダー「EAGLEレーダー」の開発を進めてきました。「EAGLEレーダー」は360度全方位を高速スキャンすることで、ほぼリアルタイムで雲の移動方向を立体的に観測したり、雨粒の大きさ観測できる独自の気象レーダーです。最短で5秒ごとに1回転し、半径50kmの詳細な3次元観測データを30秒ですばやく取得することができます。高頻度な観測が実現したことにより、ゲリラ豪雨や線状降水帯、大雪、突風、あられ、ひょうなど、局地的に発生する気象現象の把握が可能となります。
今後約2年間で、日本を含むアジアの計50カ所に「EAGLEレーダー」を設置する予定です。引き続きレーダーの設置を進めることで気象現象の監視体制を強化し、最新技術の活用で観測データが十分ではない途上国の災害リスクの低減に努めます。
関連のプレスリリース
2021年10月4日発表
「周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験開始」
/news/37718/
2017年6月22日発表
「ウェザーニューズ、NANOWAVE社と新型マルチビームレーダーの量産に向けて覚書締結」
/news/16953/