2025.07.13

「いざという時、信頼される情報でありたい」 3年連続予報精度No.1獲得までの道のり

「ウェザーニュース」は株式会社ウェザーニューズが運営する個人向け気象情報サービスで、ウェブやアプリから見ることが可能です。お天気アプリは累計4800万ダウンロードを突破するなど、多くの方にご利用いただいています。当社は「当たる天気予報」に徹底的にこだわり、第三者機関による天気予報サービスの予報精度調査において、2022年〜2024年の3年連続で予報精度 No.1を獲得しました。

今回は、予報センターで天気予報の精度向上に取り組む宇野沢達也気象予報士に、これまでの取り組みや試行錯誤について聞きました。

「普段からの信頼がいざという時につながる」精度向上への取り組みの原点

ウェザーニューズ予報センター 宇野沢達也氏
ウェザーニューズ予報センター 宇野沢達也氏

私たちは、2017年頃から「もっと当たる天気予報を届けたい」という強い想いを持って、予報精度向上に力を入れてきました。 スマートフォンの普及によって、お天気アプリやサイトの利用者が増加し、ユーザーはいつでもどこでも最新の天気予報を確認できるようになりました。天気予報がより一層皆さんの生活に密着した存在になったからこそ、災害発生時など「いざという時」に安心して使っていただくためには、普段から私たちが発表する情報の信頼性を高める必要があると強く感じたのがきっかけでした。 皆さんの生活をより豊かに、そして安全に。そんな想いが、私たちの精度向上への取り組みの原点となっています。

生活への影響が大きい「雨の見逃し」の減少へ、降水捕捉率向上の取り組み

予報の当たり外れを地図で表示
予報の当たり外れを地図で表示

「突然の雨でずぶ濡れになった」「洗濯物を干したまま出かけてしまって後悔…」といった経験は、誰にでもあると思います。私たちがまず取り組んだのは、皆さんの生活に最も影響が大きい「雨を見逃さないこと」、つまり降水捕捉率(※1)の向上でした。

ウェザーニューズの予報センターでは、気象予測モデルの計算結果をもとに天気アイコンを作成し、アプリやウェブサイトを通じて皆さんに天気予報をお届けしています。 降水捕捉率を向上させるため、まずは自分たちの天気予報を評価するところから始めました。日本の気象庁が発表している評価基準に基づき、朝5時に発表された当日の天気アイコンを評価します。 予報が外れてしまった場所は地図上に落とし込み「どうして外れてしまったのか」徹底的に分析します。予報の改善点は運営メンバーにフィードバックされ、次の予報へと活かされます。また開発メンバーにも共有され、弱点を克服するためのシステムの改良も行いました。予報センターが一丸となって予報精度の向上に取り組んだんです。 こうして予報の評価と改善を繰り返すことで、降水捕捉率90%を達成することができました。

「雨予報の空振り」を減らし高品質な天気予報へ、適中率向上の取り組み

降水捕捉率が上がると「雨を見逃す」ことは減りますが、同時に「雨予報の空振り」が増える可能性もあります。そこで次に取り組んだのが、適中率の向上でした。 具体的にいうと、極端な話ではありますが毎日雨の予報を出していれば雨を見逃すことはなく、降水捕捉率は100%になります。しかし、それでは皆さんの生活に本当に役立つ天気予報とは言えません。このため、雨や雪が降ると予想して実際降ったのか、逆に、降らないと予想して降らなかったのかを評価する適中率(※2)を高めることも非常に重要です。

降水捕捉率と同様に、適中率についても評価を開始し、降水捕捉率を維持しながらも適中率を下げない予報への挑戦が始まりました。毎日天気予報の精度評価を行い、週次・月次で細かく予報を振り返りました。 特に予報が難しい日には、都道府県を一つ一つチェックし、天気アイコンを修正することもあります。日本に前線がかかる複雑な天気や、ゲリラ雷雨が発生するような大気が不安定な時など、天気のパターンによって最適な天気予報を見極めることで、降水捕捉率も適中率も高水準な予報を実現しました。 このように天気予報の評価と改善を繰り返すことで精度を高め、2022年に初めて、第三者機関による調査で年間を通した天気予報精度No.1に認定されました。その後も努力を重ね、2023年と2024年の3年連続で予報精度No.1として評価されました。

業界一の観測網とサポーター情報が支えるウェザーニュースの天気予報

ウェザーニュースの天気予報は、圧倒的な観測網と、全国のサポーターの皆さんから届く「ウェザーリポート」、経験豊かな気象予報士たちのノウハウ、そしてそれらをシステム化したAIによって作られています。 予報精度を向上させるためには、まず「今、何が起きているか」をより詳しく正確に捉えることが不可欠です。ウェザーニューズは、気象庁のアメダスに独自観測などを加えた全国1.3万地点の観測網のデータを活用しています。高密度の観測データがあるからこそ、詳細な実況を捉え、精度の高い予測に繋げることができます。

全国13,000地点の観測網
全国13,000地点の観測網

さらに全国のユーザー(サポーター)からは、1日約20万通の天気報告と、約3万通の空や雲の写真や動画「ウェザーリポート」が届きます。一般の方から天気の情報をもらう取り組みは、世界でも珍しい、ウェザーニューズオリジナルの取り組みです。サポーターからの情報は、例えばレーダーに映らない雨雲が降らせる雨や、ゲリラ雷雨をもたらす積乱雲の発達具合、雨と雪の正確な境目など、観測機だけではわからない現地のリアルな状況を把握するのに役立ちます。さらに2024年3月からは、サポーターに小型のクラウドカメラ「ソラカメ」の設置に協力してもらう取り組みを始め、現在までに全国に2500台のソラカメが設置されています。予報センターでは、ウェザーリポートやソラカメの映像を常にモニタリングし、正確な実況把握に役立てることで、天気予報の精度向上へと繋げています。

日本中から集まる空や雲の写真や動画「ウェザーリポート」
日本中から集まる空や雲の写真や動画「ウェザーリポート」

予報センターでは、自社の気象予測モデルに加えて、気象庁や世界各国の気象予測モデルの予測値をもとに、天気予報を組み立てています。気象予測モデルにはそれぞれ癖や特徴があり、計算結果も異なります。予報センターの経験豊かな気象予報士たちは、どの気象予測モデルが確からしいかを判断し、予測のシナリオを決定します。さらにそれをAI解析によって最適化することで、高精度な天気予報を実現しています。

ウェザーニューズ 予報センター
ウェザーニューズ 予報センター

ウェザーニュースの天気予報には、サポーターの皆さんからの天気報告やウェザーリポートが欠かせません。3年連続予報精度No.1は、日頃からウェザーリポートを投稿してくれるサポーターの皆さんと一緒に達成することができたと思っています。

高品質な天気予報を、グローバルでも実現していきたい

気候変動によって気象現象が激甚化する中、気象情報の重要性はますます増してきます。ウェザーニューズではこれまでも、ゲリラ雷雨など予測困難と言われてきた気象現象にも、サポーターとともに取り組んできました。今後も皆さんへ本当に役立つ情報を発信するべく、予報精度への挑戦を続けていきます。 また、現在は日本における予報精度No.1ですが、今後国外の天気予報の精度向上にもチャレンジしていきたいと考えています。世界から見ると、日本は気象防災・減災に対して最先端といっても過言ではありません。日本の最先端の気象情報を世界にも拡大し、世界の防災に貢献していきたいです。

関連リンク:

※1 降水捕捉率とは?

※2 適中率とは?