2025.07.17
熱中症を未然に防ぐ、気象IoTセンサー「ソラテナPro」が建設現場や学校で続々導入
近年、地球温暖化の影響により夏の気温が異常なレベルに達することが常態化し、職場での熱中症による死傷者数が増加傾向にあります(※1)。
今回は、ウェザーニューズが取り組む熱中症対策として需要の高いサービス、高性能気象IoTセンサー「ソラテナPro」を担当する瀬戸崇史氏に話を聞きました。
暑さ指数をピンポイント把握、熱中症を未然に防ぐ環境づくりをサポート
熱中症は発症から重篤化までの進行が早く、他の労働災害と比べても致死率が非常に高いため、早期発見と迅速な対応が極めて重要とされています。こうした状況を受け、2025年6月1日には、熱中症の重篤化を防止するための新たな労働安全衛生規則が施行されました。この改正により、事業者は熱中症が発生した際の報告体制や、熱中症が生じた場合の必要な措置を事業場ごとにあらかじめ定めることが義務付けられています。また、熱中症のリスクを示す指標として、熱中症警戒アラートが発表されていますが、都道府県単位で発表されるアラートだけでは、現場のリスクを的確に把握することは難しいと考えています。
そこで、当社では法人のお客様向けに、小型の気象IoTセンサー「ソラテナPro」を活用した熱中症対策をご提案しています。建設現場や学校など、実際に作業している場所の熱中症リスクを正確に把握するには、その場の気温や湿度を考慮した詳細なリスク評価が不可欠だからです。これにより、現場ごとの詳細な熱中症リスクを把握し、より効果的に対策をとることが可能になります。

暑さ指数(WBGT)とは、Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)の略称で、黒球温度をもとに算出されます。しかし、黒球温度計は特殊な温度計で観測機器の入手も簡単ではありません。そこで「ソラテナPro」では、環境省熱中症予防情報サイトで提供されている実況推定値と同じ手法で、気温(℃)、相対湿度(%)、全天日射量(kW/m2)、平均風速(m/s)を活用した手法で算出しています(※2)。
「ソラテナPro」では、暑さ指数の危険度を“注意”、“警戒”、“厳重警戒”、“危険”の4段階で表示します。「ソラテナPro」の観測データや暑さ指数は、パソコンやスマートフォンから簡単に確認ができ、暑さ指数に応じてウェザーニュースアプリのプッシュ通知も受信することができるため、素早く関係者に情報共有することができます。 また、実際に現場に設置した観測機器のデータから熱中症のリスクを判断できるため、ピンポイントの熱中症リスクが分かると好評で、屋外作業を中心とする建設業や農業の分野はもちろん、工場で働く職員や小学校の生徒の安全を確保するためにお役立ていただいています。
昨年同月比で4倍の導入数、性能・利便性の高さで活用が広がる

2024年の夏には、熱中症の疑いで小学生が倒れ、亡くなるという痛ましいニュースもありました。小学校の現場では6〜10月のあいだ毎日、学校のグラウンドや体育館、特別教室など、空調設備のない場所を利用する際には、1時間ごとに先生方が休み時間を利用して熱中症のリスクを観測機器で手計測し、熱中症の危険性がある場合は授業の中止などを判断しているところもあるようです。
想像するだけでもかなりの負担だったと思いますが、「ソラテナPro」を活用いただくことで、観測の自動化、モニターによる観測データの表示が可能になり、大幅に負担が軽減したと考えられます。

建設現場などで「ソラテナPro」の利用が広がっている理由は、ニーズにマッチした魅力があるからだと感じています。 一般的に観測機器を設置するとなると、機器の購入や専用回線のネットワーク準備、観測したデータを確認するためのインターフェース開発など、数百万円以上のコストと運用開始までに数ヶ月以上の時間を要します。
一方で、「ソラテナPro」の魅力は小型かつ高性能でありながら手頃な価格帯であること。片手で持てるほど小型で、電源をコンセントに挿すだけで観測が始まりますし、センサー開発を得意とするオムロンと共創したため性能には自信があります。
また、データ通信用のSIMを内蔵しているので、観測の開始と共に観測データはクラウド上に集約されます。観測データが手元のスマートフォンでリアルタイムに確認できるソフトウェアを観測機器とセットでサービス提供しています。なお、企業向けにAPIによるデータ連携も可能となっており、総合的な利便性の高さも、利用が広がる理由だと思います。現在、ソラテナProは建設現場や学校の熱中症対策を始め、様々な業界で活用が広がり、昨年同月比で4倍の導入台数となっています(2025年6月末現在)
熱中症リスクを抱える世界中の人々にご利用いただけるコンテンツへ
今までは「ソラテナPro」自体の開発、その観測データを使ったコンテンツ開発、視認性や暑さ指数の算出方法のアップデートを進めてきました。「ソラテナPro」の活用が広がるにつれ、ユーザーインターフェースの細かい課題も新たに見えてきたため、今後、さらに使い心地や機能性を上げていきたいと考えています。 また、「ソラテナPro」は日本で初めて、補完観測の予報業務利用の承認を取得しました。これにより、設置地点の予測が出せるようになりますので、暑さ指数の予測も可能になる見込みです。
熱中症の被害は日本に限った話ではありません。地球温暖化の影響により、世界各国で異常な高温に見舞われることが増え、世界中で熱中症による健康被害や死亡例が報告されています。「ソラテナPro」を活用した熱中症対策はまだあまり知られていないかもしれませんが、より多くの方々に知っていただき、活用いただけたら嬉しいです。
【ウェザーニューズの猛暑見解2025】 7月末〜8月前半はダブル高気圧の影響で40℃級の酷暑に警戒 〜「猛暑日」日数予想、最も多いのは京都で26日・甲府で25日など内陸ほど顕著に~ 今年の7〜9月の気温は全国的に平年より高くなる見込みです。特に、7月末〜8月前半にかけて暑さのピークとなることが予想されます。太平洋高気圧に加え、チベット高気圧が日本付近にまで張り出し、高気圧が上空で重なり合う「ダブル高気圧」が発生した場合、35度を超える猛暑日が継続し、地域によっては40度前後に達する「酷暑」となるため、厳重な警戒が必要です。 こまめな水分補給などの暑さ対策をしっかり行い、熱中症には十分警戒してください。
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