2025.08.06
累計2000回超、トカラ列島の地震を気象予報士山口剛央が解説
6月から7月にかけて、トカラ列島で2,000回を超える地震が観測されており、その多さに注目が集まりました。しかし、鹿児島県で続くこの地震の今後の見通しについては、見極めが非常に難しい状況です。地震活動の考えられる要因、そして今後想定されることについて、気象予報士の山口剛央氏に話を聞きました。
トカラ列島近海を震源とする地震活動の推移
この一連の地震は、トカラ列島近海を震源とする、体で感じる地震の回数を示したグラフになります。地震が始まったのは6月21日で、これまで2週間にわたって地震活動が継続しています。
右側の数字は累計回数を示していますが、6月21日の午前8時台に始まった一連の地震は、その後23日に大きくピークを迎えました。ここまでは過去の事例から想定される増加の仕方でした。過去の事例では、2〜3日でピークを迎え、その後1週間から10日ほどで減衰して収まっていくのが常でした。確かに今回も、28日頃まではその傾向が顕著に出ていました。

しかし、状況が変化したのは29日からです。29日からは、また一気に回数が増えています。1最初の2、3日は多くて1時間に15回から20回ぐらいだったものが、ここ数日の間は多いタイミングですと1時間に30回レベルで起きています。3日に発表されました通り、震度6弱の強い揺れも観測されるようになってきており、これが7月に入ってからの特徴ということになります。ご覧の通り、累計回数は増加の一途を辿っています。
火山活動との関連性と今後の見通し
このエリアは、今から40〜50年ほど前まではそもそも地震計がないような、観測点の少ない領域でした。観測の歴史は長くありませんが、地震活動の観測の歴史を振り返っても、第2波の方が第1波よりも活動が活発な事例は珍しいです。これが、今後の見通しを立てることが非常に難しい現状の理由の一つになっています。
そして今回の地震活動は、火山活動に関連して群発地震が起きているのではないかと言われています。というのも、このトカラ列島は日本の中でも活火山が多く存在する場所だからです。実際に現在も噴煙を上げている活火山もあれば、1万年以上前に活動していた元々活火山だった地域もあります。このような場所では地下の深いところにマグマが存在していると考えられ、それが動くなどすることによって、周辺の断層を破壊し、多数の地震を起こしているのではないかと考えられています。
もし、今回の地震がマグマの動きに関連した地震だとすれば、地震活動はマグマの動きが収まるまでは周辺に影響を及ぼし、地震活動を続けることがあります。過去の群発地震では、約2ヶ月の間に体で感じる地震が実に1万3,000回にも及ぶ活動が起きた事例もありました。
能登半島地震も地下の流体、何らかの地下水などが関連しているかもしれないと言われています。2020年12月から群発地震活動が続き、その後、2024年1月1日の地震まで3年ほど地震が継続的に発生しました。現在は余震として減少してきてはいるものの、やはり数年にわたって続いてしまうケースもあります。
南海トラフ地震との関連性について

南海トラフ地震との関連性を気にされている方もいらっしゃるようですが、南海トラフ地震とは関係ありません。「南海トラフ巨大地震」とは、西日本の下に潜り込んでいくプレートが、潜り込む際にプレート境界付近でエネルギーが溜まり発生する巨大地震のことを言います。過去には1946年や1944年にも起きました。このあたりは非常に注意すべきエリアですが、南海トラフ巨大地震は先ほどお話しした通り、沈み込むプレートが絡んだプレート境界型地震です。このタイプでは、海のプレートであるフィリピン海プレートが西日本の下に沈み込み、沈み込む際にエネルギーが溜まります。ここで限界に達すると、一気にプレートが跳ね上がり地震が起きています。
今起きているトカラ列島の地震はどこで起きているかというと、今回は陸のプレートの中で地震が起きているので、南海トラフ巨大地震とは別物です。2,000回もの体で感じる地震が起きているとはいえ、トータルのエネルギーはごく小さなものです。マグニチュード5クラスの地震は、壊れるエリアがせいぜい5キロから10キロ行くかどうかです。200キロ先のプレート境界が結合している部分(南海トラフ)に、何かエネルギーを与えてしまう可能性は小さいと思いますので、関連は考えなくていいでしょう。
この辺りは火山列島と言えるほど、九州から南の方をめがけて火山が連なっています。ここに火山ができるのはプレート境界が絡んでいることになりますが、これは規模の大きな話から小さい話、あるいは規模の小さい話から規模の大きな話に影響が出るというのは、考えにくいと思いますので、ここはあまり意識される必要はないでしょう。

最後に、先ほどお伝えした通り、今回の地震のような群発地震の見通しは非常に難しいものでしたが、すでにトカラ列島の地震活動はかなり落ち着いてきていて、終息に向かったと言って良いでしょう。
※本ブログは、7月5日に放送された「ウェザーニュスLiVE」2を参考に作成しています。