2025.08.08
グローバルモデルの運用と評価検証 〜世界の気象災害に関する予測精度向上の取り組み〜

概要
7月28日から29日にかけて、中国・北京市の郊外では、低気圧からのびる前線が通過しました。さらに、上空に強い寒気が入り、台風8号の接近により湿った空気が流れ込んだことで、大気の状態が非常に不安定になり、大雨となりました。
この大雨により洪水が発生し、8万2千人以上が避難しています。また、市内では3,200か所以上の建設現場が操業を停止しています。1
実況
北京市の観測データによると、24日から29日にかけて合計200mm以上の大雨となりました。北京の7月における1ヶ月分の降水量の平年値は170.6mmで、1ヶ月分を超える量の降水が数日で降ったことになります。24日から25日にかけて100mm近い雨が降り、そのあと28日から29日にかけて24時間降水量が115mmに達する大雨となりました。洪水が発生した28日だけでなく、その前にも前線に伴う大雨があったことから、北京市では洪水や土砂災害が発生しやすい状況にあったと言えそうです。この大雨に対し、北京市は暴雨(大雨)に関する警報を発令し、市民に注意を呼びかけていました。
各国のモデル予測比較
ウェザーニューズでは日々、自社独自の予測モデルに加え、世界各国の気象予測モデルも運用しています。 今回、中国で甚大な災害をもたらした大雨について、降水予測を検証しました。 北京の観測地点で最も降水が多かった、28日から29日にかけての24時間降水量を比較すると、27日12:00(UTC)をベースタイムとしたカナダ気象庁(CMC)のモデルが、最も多い47.0mmの降水を予測していました。また、その12時間前の27日00:00(UTC)をベースタイムとした予測では、ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)の予測が他のモデルよりも多い39.6mmの降水を予測しています。
今回比較した7つの気象予測モデルは、実際に観測された降水量よりも少ない降水量を予測していましたが、24時間〜12時間前にはまとまった降水の可能性が示唆されていました。
当社では、高精度の予報を提供するため、ウェザーニューズ独自の予測モデルに加え、他機関のモデルも活用したアンサンブル予報を行い、精度評価を通じて継続的な予報改善に努めています。当社では、引き続き様々な予測モデルの精度検証を重ねることで、モデルの特性を深く理解し、皆様により高精度な気象情報をお届けできるよう努めてまいります。

モデルのベースタイム:2025年7月27日12時(UTC)、地点はSYNOPの北京 ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター NCEP:アメリカ国立環境予測センター JMA:日本気象庁 BOM:オーストラリア気象局 CMC:カナダ気象庁 DWD:ドイツ気象局 UKMET:イギリス気象庁