2025.08.08

AIを活用した「お天気エージェント」で天気をもっと身近に

近年、AI・人工知能への注目度は非常に高くなっており、スマートフォンの音声アシスタント、お掃除ロボット、自動翻訳アプリ、顔認証、レコメンド機能、自動運転機能など私たちの私生活にも徐々に浸透し始めています。

ウェザーニューズでは天気特化型のAIサービスを開発し、2025年からサービスとして提供を開始しました。今回、ウェザーニューズが開発したAIサービス「お天気エージェント」について、モバイルインターネット事業部開発担当の影山 拓哉(KAGEYAMA Takuya)氏に話を聞きました。

AI時代の新サービスが天気予報を変える!?

ー お天気エージェントとは?

ウェザーニューズは、天気アプリ「ウェザーニュース」内に生成AIを活用した新機能「お天気エージェント」を2025年1月30日にリリースしました。「お天気エージェント」は、天気に関する複雑な質問にもAIが答えるチャット機能で、ユーザーが知りたい天気の情報を自然な会話形式で提供し、これまでの天気予報にはない新しい体験を届けます。

天気予報についてわかりやすく回答してくれる他、花粉、桜、ゲリラ雷雨に関する情報など、様々な気象情報に対応できるようアップデートしてきました。チャットのコミュニケーションにおいては、親近感が湧くように絵文字やシンプルな表現を使うことで柔らかく天気情報の提供に導くメッセージを返すなどしています。

また、チャット機能のためユーザーが天気と無関係な投稿をすることも想定されますが、その場合もきちんと対応できるように開発しています。例えば、天気情報提供に特化していることを明確に伝えたり、具体的にどの地域の天気が知りたいか補足質問を提示し、対話を天気情報へ誘導しています。

ー 開発の過程での苦労はありましたか?

「お天気エージェント」の開発では、回答の精度を上げることが大きな課題でした。当初、AIモデルが学習データから誤った回答をしたり、必要なデータをうまく引用できなかったりすることがありました。 そこで、この問題の解決策として、ウェザーニューズ独自の正確な気象データをAIモデルが回答に利用できるよう調整しました。

その結果、モデルの推測に頼るのではなく、専門機関であるウェザーニューズの信頼性の高い気象データに基づいた、気象特化型のAIエージェントを完成させることができました。

ー なぜ今、AIを使ったサービスの開発を行ったのでしょう?

ウェザーニューズでは、全社員を対象としたAIハッカソンを開催する1など、日々の業務にAIを積極的に取り入れています。 AI技術は目覚ましい進化を遂げており、業務効率を大きく改善してくれました。社員が実際にAIに触れる中で、その品質がユーザーに新しい価値を届けられるレベルにあると確信したことが、サービス開発のきっかけとなりました。

また、社内で先行して開発・利用していた天気予報特化型のAIエージェントを、アプリユーザーにも体験してほしいという思いから、正式にリリースすることが決定しました。「お天気エージェント」の開発には、先行チームの協力も得られたため、サービスのリリースを決定してからわずか1か月という短期間でコンテンツの開発を完了させることができました。

豊富な気象データ「お天気エージェント」のここがすごい!

ウェザーニューズ モバイルインターネット事業部 開発担当 影山拓哉氏
ウェザーニューズ モバイルインターネット事業部 開発担当 影山拓哉氏

ー 「お天気エージェント」があると、私たちの生活はどう変わるのでしょう?

例えば、「千代田区で最後に雨が降ったのは何日前?」や「今週末、車で2時間以内で行ける観光地で晴れる場所はどこ?」といった詳細な条件を指定した質問にも対応可能です。また、テキストによる回答だけでなく画像やグラフを用いて解説するなど視覚的にわかりやすく回答してくれます。

この「お天気エージェント」の登場により、天気に関する情報収集が簡易でかつ身近なものとなり、日々の天気チェックがより便利になります。

ー 「お天気エージェント」おすすめの使い方を教えてください

「お天気エージェント」の魅力は、ウェザーニューズ社内にある天気予報、災害情報、過去の気象データ、自然現象に関するデータ、アプリ内の関連する機能の提案など、質問に応じて多彩な情報を引用して回答してくれるところです。

例えば、お出かけ先の天気を調べた際には、天気予報だけでなく、おすすめの服装や注意点など、より生活や行動に結びついた具体的な情報もあわせて教えてくれます。天気について少しでも気になることがあれば、ぜひ気軽に「お天気エージェント」を試していただけると嬉しいです。

ちなみに、チャット画面のトップに表示されるサンプルの質問は、アプリ運営を担当するエンジニアではないスタッフが手軽に変更できるよう、柔軟性の高い仕組み作りを実現し、ユーザーの利用促進を図っています。

ー 今後「お天気エージェント」はどのように進化していきますか?

「お天気エージェント」のログは収集しており、質問を匿名で一定期間保存できるようにしています。

ウェザーニューズでは、対話ログを日々のサービス品質向上に活かしています。ユーザーからの入力に対してシステムが適切な回答をしているか、その反応を継続的に分析することで、常にサービスの品質を検証しています。また、類似した質問をグループ化し、対話の傾向やテーマを整理することで、ユーザーのニーズをより深く把握しています。この分析結果に基づき、ユーザーが本当に求めている情報を提供できるよう、コンテンツの更新を続けています。

最近では、雨雲レーダーにユーザーからのリポートに基づいたAIによる解説コメントを追加し、「現地の声」2として提供を開始しました。今後は、既存の人気コンテンツにもAIを活用し、ユーザー満足度の向上を目指す予定です。

また、利用者から音声対応を望む声が寄せられているお天気エージェントについても、生成AIの技術進化に合わせて、さらなる機能向上を進めていきたいと考えています。

お客様のビジネスに精通したAIエージェント提供へ、ウェザーニューズが見据える天気×AIの未来とは

現在、個人向けサービスでは「お天気エージェント」を有料会員限定で提供していますが、今後はより多くの方にAIを活用したサービスを届けたいと考えています。

ウェザーニューズは、船や飛行機、道路、鉄道といった業界にも気象情報サービスを提供しており、今後は法人向けにもAIを活用したコンテンツを展開していきます。 業界によって求められる情報や専門用語は異なりますが、ウェザーニューズには40年にわたる法人向けサービスの提供実績があり、お客様の業務を深く理解しているのでノウハウが蓄積されています。この強みを活かし、各業界に特化した法人向けの「お天気エージェント」を新たに開発し、業務効率の向上に貢献したいと考えています。

近年、AI技術は急速に進化しており、AIが天気を予報する技術も開発されています。ウェザーニューズでは、従来の天気予報モデルとは異なる特性を持つこれらのAI予報モデルを日々評価し、その特性やメリット・デメリットを深く理解する取り組みを進めています。

気象分野は膨大なデータを扱うため、AIとの相性がとても良いと感じています。ウェザーニューズは、これからも様々な場面でAIを積極的に活用し、ビジネスの発展とユーザーへの新しい価値創造を追求していきます。

Footnotes

  1. 1: 社員の8割がAIハッカソンに参加、生成AIを活用した新価値創造が加速 ↩︎
  2. : AIが周囲の気象状況から精確なコメントを生成、雨雲レーダーを“現地の声”で強化 ↩︎