2025.08.25
台風11号は台湾を直撃、大雨と台風進路の予測精度を評価

気象概況
台風11号(Podul)は北マリアナ諸島付近で発生し、西進しながら徐々に発達して、8月13日に台湾南部へ上陸しました。上陸後は時速約36kmで西進し、台湾南部を横断したのち、午後には台湾海峡を抜けて中国方面へ移動しました。その後、華南に再上陸し、勢力を弱めて熱帯低気圧へと変わりました。
台湾では、最大瞬間風速53m/sを観測し、南部の山岳地帯では2日間で最大660mmの大雨となりました。高雄や台南を含む9つの市や県では休校・休業措置が実施され、約5,500人が避難しました。台湾中央災害応変センターの発表によると1、国内線252便、国際線129便が欠航するなど、交通機関にも大きな影響が出ました。また、台風11号により、14日8時30分時点で1名が行方不明、143名が負傷しています1。
降水量の予測精度を検証
台湾気象庁によると2、最も降水が多かったのは屏東県春日郷で8月13日0時から14日0時(UTC)までの24時間降水量は644.5mmを観測しました。今回ウェザーニューズは、台風11号に伴うこの大雨について、各国が開発した7つの全球モデル3の予測を比較しました。
8月12日0時(UTC)の時点で、多くのモデルが8月13日0時から14日0時(UTC)までの24時間で200mm以上の降水量を予測しており、大雨の可能性を示していました。最も多く降水量を予測していたモデルはカナダ気象庁のモデルで、343mmの降水を予測していましたが、実際に観測された644.5mmには達しませんでした。

モデルのベースタイム:2025年8月12日0時(UTC) 地点:屏東県春日郷(大漢山頂)
ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター NCEP:アメリカ国立環境予測センター JMA:日本気象庁 BOM:オーストラリア気象局 CMC:カナダ気象庁 DWD:ドイツ気象局
台風進路の予測精度を検証
今回は台風11号の進路予測についても8つの予測モデルについて検証を行いました。 図2は、台風が台湾に上陸する5日前の時点における、各予測モデルの進路予測を示しています。ヨーロッパ中期予報センターのAI気象モデル(ECMWF AIFS)以外の7つの物理モデルは、台風が台湾より北側を進む予測を示しているのに対し、AIFSは台湾に上陸するような進路を示しています。

GFS(NCEP):アメリカ国立環境予測センター ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター UKMET:イギリス気象庁 GSM(JMA):日本気象庁 CMC:カナダ気象庁 HFSA:アメリカ海洋大気庁 ICON(DWD):ドイツ気象局
また図3は、台風の中心位置の予測と実況の誤差を表したグラフで、横軸は予報時間(*時間先の予測)を、縦軸は予測と実況の誤差を示します。このグラフでは縦軸の値が0に近いほど誤差が小さく精度が高いことを意味しますが、今回の事例でAIFSは、120時間前から一貫して誤差を100km程度に抑えていました。また、予測誤差を積算してみても(図4)AI気象モデルの進路予測が最も誤差が小さく、物理モデルより精度が上回ったと言えます。

GFS(NCEP):アメリカ国立環境予測センター ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター UKMET:イギリス気象庁 GSM(JMA):日本気象庁 CMC:カナダ気象庁 HFSA(NOAA):アメリカ海洋大気庁 ICON(DWD):ドイツ気象局

GFS(NCEP):アメリカ国立環境予測センター ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター UKMET:イギリス気象庁 GSM(JMA):日本気象庁 CMC:カナダ気象庁 HFSA(NOAA):アメリカ海洋大気庁 ICON(DWD):ドイツ気象局
当社では、高精度の予報を提供するため、ウェザーニューズ独自の予測モデルに加え、他機関のモデルも活用したアンサンブル予報を行い、精度評価を通じて継続的な予報改善に努めています。引き続き、AI気象予測モデルも含め様々な予測モデルの精度検証を重ねることで、モデルの特性を深く理解し、皆様により高精度な気象情報をお届けできるよう努めてまいります。
Footnotes
- 1:https://tw.news.yahoo.com/楊柳快閃-台東狂風暴雨慘虐-140912075.html , https://tw.news.yahoo.com/颱風楊柳襲台釀災情-已1失蹤143傷-累計1052件災情|不斷更新-090040065.html , https://apnews.com/article/taiwan-typhoon-crop-damage-7ac077d3644bb29e9ba43467a0c77c3d ↩︎ ↩︎
- 2:台湾気象局が発表する8月13日雨量図 ↩︎
- 3:全球モデル:地球全体を対象とし、主に低気圧や台風などを予測する気象モデルのこと ↩︎