2025.09.04
ベトナムで大雨や洪水などの被害、台風13号の予測精度を評価

気象概況
南シナ海で発生した台風13号(KAJIKI)は発達しながら西進し、8月25日に強い勢力でベトナム中部に上陸しました。上陸後は急速に勢力を弱めながらベトナムを通過し、26日6時(UTC)にラオスで熱帯低気圧に変わりました。 台風の接近、通過により、ベトナムでは最も降水の多かったハティンを中心に、各地で150mmを超える大雨となりました。ハティン省では3名が亡くなった他、住宅144棟が浸水し、621棟の家屋が破損しました。また、停電や、沿岸部では高潮による洪水も発生しました1。
予報精度の振り返り
台風13号の進路予測について、8つの予測モデルを比較しました。 図1は、台風がベトナムに上陸する3日前における、各予測モデルの進路予測を示しています。多くのモデルが西進したのち、ベトナムに上陸する進路を予測しています。

GFS(NCEP):アメリカ国立環境予測センター ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター UKMET:イギリス気象庁 GSM(JMA):日本気象庁 CMC:カナダ気象庁 HFSA:アメリカ海洋大気庁 ICON(DWD):ドイツ気象局
図2は、台風の中心位置の予測と実況の誤差を表したグラフで、横軸は予報時間(*時間先の予測)を、縦軸は予測と実況の誤差を示します。48時間までの予報時間においては、ヨーロッパ中期予報センターのAI気象モデル(ECMWF AIFS)が予測誤差を50km未満に抑えており、他のモデルよりも予測精度が高いことがわかります。また、102時間までの予測誤差の積算値を比較すると、イギリス気象庁のモデルが最も予測誤差が小さく、次いでドイツ気象局、ヨーロッパ中期予報センターのAI気象モデル(ECMWF AIFS)が小さい結果となりました(図3)。


GFS(NCEP):アメリカ国立環境予測センター ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター UKMET:イギリス気象庁 GSM(JMA):日本気象庁 CMC:カナダ気象庁 HFSA(NOAA):アメリカ海洋大気庁 ICON(DWD):ドイツ気象局
ベトナム気象局によると、最も降水が多かったのはハティン省ソンキムで、8月25日12時から25日20時(UTC)までに211.1mmの降水を観測しました2。今回ウェザーニューズは、台風13号に伴うこの大雨について、各国が開発した8つの全球モデルの予測を比較しました。
8月25日0時(UTC)の時点で、多くのモデルが8月25日12時から26日0時(UTC)までの12時間で100mm以上の大雨の可能性を示していました。最も多く降水量を予測していたモデルはアメリカ国立環境予測センターと日本気象庁のモデルで、193mmの降水を予測していました。実際に観測された211.1mmには達しなかったものの、誤差10%以内の精度で予測できていたといえます(図4)。

モデルのベースタイム:2025年8月25日0時(UTC) 地点:ハティン省ソンキム
ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター NCEP:アメリカ国立環境予測センター JMA:日本気象庁 BOM:オーストラリア気象局 CMC:カナダ気象庁 DWD:ドイツ気象局 UKMET:イギリス気象庁
当社では、高精度の予報を提供するため、ウェザーニューズ独自の予測モデルに加え、他機関のモデルも活用したアンサンブル予報を行い、精度評価を通じて継続的な予報改善に努めています。引き続き、AI気象予測モデルも含め様々な予測モデルの精度検証を重ねることで、モデルの特性を深く理解し、皆様により高精度な気象情報をお届けできるよう努めてまいります。