2025.09.19
AIで線状降水帯を検知し発生をいち早く通知、2025年8月の捕捉率100%

気象庁の調査によると、1時間に50mm以上の極端な大雨が降る現象は増加傾向にあり、土砂災害や洪水といった災害に直結しやすい危険な雨が増加していると言えます1。特に、線状降水帯は同じ場所で強い雨が降り続けるため、大きな災害につながりやすく、私たちの生活に大きな影響を与えます。また、その局所的な現象の特性上、「いつ」「どこで」発生するか予測が難しいという特徴があります。ウェザーニューズでは、こうした特性を踏まえて情報発信を工夫しています。
今回、ウェザーニューズが独自で解析する線状降水帯の発生情報について、評価検証の結果と、この情報がどのようにユーザーに届けられているかについてまとめました。
AIで線状降水帯を早期検知
気象庁の発表によると、2025年8月は合計9件の線状降水帯が発生しました2。気象庁では、線状降水帯による大雨の可能性を半日程度前から呼びかけるほか、「顕著な大雨に関する気象情報」を通じて、国民に注意を呼びかけています。この「顕著な大雨に関する気象情報」の発表基準となるのは、実際に観測された雨量や雨域、雨雲の大きさ・形、警報基準などです3。
一方、ウェザーニューズでは、気象庁が発表した情報をユーザーに伝えるだけでなく、少しでも早く大雨の危険性を通知するため、独自に線状降水帯の早期検知システムを運用しています。
線状降水帯は同じ場所に上昇気流が発生し、暖かく湿った空気がその場所に継続的に流れ込むことで発生します。ウェザーニューズは、気象庁のアメダスやレーダーに加えて、独自で取集している観測データやユーザーからの天気報告を使って独自の解析データを作成しています。
この解析データをもとに、湿度が収束しているエリア、周囲に比べて気温が著しく変化しているエリア、風向・風速が一定の条件になったエリア、息苦しさを感じるような「非常に激しい雨」や「猛烈な雨」が線状になっているかをAIで判定し、線状降水帯の発生を早期に検知できるようにしています。

【線状降水帯アラーム】気象庁解析よりも早く通知
ウェザーニューズが独自に解析する線状降水帯の発生情報は、法人向け気象情報「ウェザーニュース for business」4の「線状降水帯アラーム」として、3,833企業・団体に提供しています5。ユーザーの半径5km以内に、線状降水帯が解析された場合にアプリのプッシュ通知が届く仕組みになっており、ユーザーに注意喚起を行います。下の図は、8月6日から12日にかけて気象庁によって線状降水帯が解析・発表された時間帯と、「線状降水帯アラーム」の通知タイミングを表しています。

今回、上記の事例を含む8月の全ての線状降水帯発生の事例において、ウェザーニューズが解析した線状降水帯の発生について評価検証を行ったところ、気象庁の発表よりも早く解析され、補足率は100%でした。それにより、気象庁による「顕著な大雨に関する気象情報」の発表よりも早く、「線状降水帯アラーム」を通知することができ、危険な豪雨に対する対策・行動をご利用者の皆様に伝えることができました。
ウェザーニュースLiVEで専門的な情報もわかりやすく発信
また、当社は「ウェザーニュース for business」以外にも、線状降水帯のリスクや発生状況について、24時間365日生放送の気象情報番組「ウェザーニュースLiVE」でも情報発信を行っています。
ウェザーニュースLiVEは、24時間生放送の強みを活かし、刻々と変化する気象状況をリアルタイムで伝えています。気象情報会社としての専門知識と、予報センター・番組制作チームの密な連携により、視聴者の安全を守るための情報を迅速に発信することが可能です。
また、危険な気象現象である線状降水帯に対し、発生前、発生中、発生後の3つの段階に分けて情報を提供することで、視聴者の安全をサポートしています。 発生前の段階では、独自のシステムで兆候をいち早く捉え、予測エリアや確率を丁寧に解説します。特に、夜間の発生に備えた具体的な防災行動を呼びかけることで、早めの対策を促します。 実際に線状降水帯が発生した際は、経験豊富な解説員による説明時間を増やして放送し、雨の継続時間や総雨量などについて詳細に解説します。また、最新の雨雲レーダーや現地からの報告を交えながら、土砂災害や河川の氾濫といった具体的な危険性について、繰り返し、分かりやすく伝えます。 発生後にも、なぜその現象が起きたのかを科学的に分析したり、避難生活における注意点を伝えたりすることで、次の災害への備えにつなげるための情報提供を行っています。
番組の放送では、専門的な情報をただ伝えるだけでなく、「防災リテラシーの向上」も重視しています。難しい気象用語をかみ砕いて分かりやすく解説したり、視聴者参加型のコミュニティを築いたりすることで、日頃から視聴者の防災意識を高めています。
本ブログでは、線状降水帯の発生状況(実況)に関して行う情報発信についてまとめました。線状降水帯の危険性を確認する方法として、他にも気象庁から「線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけ」も実施していますし、ウェザーニューズも目先12時間以内の線状降水帯の発生可能性について情報提供を行っています。 引き続き、最新のテクノロジーやAIを活用したコンテンツで、線状降水帯の発生およびリスクについて、いち早く情報発信を行い、ユーザーの生活や職場での安全確保を支援し、命を守る行動につなげていただけるよう取り組んでまいります。
Footnotes
- 1:https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html ↩︎
- 2:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jirei/senjoukousuitai/R07jisseki.pdf ↩︎
- 3:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/kishojoho_senjoukousuitai.html ↩︎
- 4:https://wxtech.weathernews.com/products/wfb/ ↩︎
- 5:線状降水帯アラーム、のべ3,833企業・団体に通知(2025/8/6〜11) ↩︎