2025.10.07

台湾やフィリピンで猛威を振るった2025年台風18号について

気象概況

台風18号(ラガサ)は、2025年9月18日(木)にフィリピンの東で発生しました。一時猛烈な勢力にまで達し、勢力を維持したままフィリピンと台湾の間を通過して南シナ海を西進しました。24日に中国の華南に上陸した後は勢力を弱め、25日に熱帯低気圧に変わりました。

非常に強い勢力の台風が接近したフィリピンや台湾では、大雨による災害が発生しました。 台風18号の影響により、フィリピンでは11名の死亡者が出ています1。また、台湾の花蓮県では山間部の堰き止め湖が決壊したことによって洪水となり、14人が死亡し、152名が行方不明(2025年9月24日時点)という大きな被害が発生しました2

台風の進路評価

台風18号の進路予測について、8つの予測モデルを比較しました。 図1は、2025年9月17日0時(UTC)時点における各予測モデルの進路予測を示しています。各モデルの予測進路は、台風18号の経路と同じようにフィリピンと台湾の間を通過して西進予測をしていますが、特にフィリピンより東側では、実際の経路よりも北側に進路を予測しているモデルが多いことがわかります。


図1:2025年9月17日0時(UTC)時点における、各国の気象予測モデルの進路予測
図1:2025年9月17日0時(UTC)時点における、各国の気象予測モデルの進路予測

GFS(NCEP):アメリカ国立環境予測センター ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター UKMET:イギリス気象庁 GSM(JMA):日本気象庁 CMC:カナダ気象庁 HFSA:アメリカ海洋大気庁 ICON(DWD):ドイツ気象局

図2は、台風の中心位置の予測と実況の誤差を表したグラフで、横軸は予報時間(*時間先の予測)を、縦軸は予測と実況の誤差を示します。

120時間までの予報時間において、ドイツ気象局のモデルとヨーロッパ中期予報センターのAI気象モデル(ECMWF AIFS)が予測誤差を約150km以下に抑えており、他のモデルよりも予測精度が高いことがわかります。また、120時間までの予測誤差の積算値を比較すると、ドイツ気象局(ICON)のモデルが最も予測誤差が小さく、次いでヨーロッパ中期予報センターのAI気象モデル(ECMWF AIFS)が小さい結果となりました(図3)。

図2:台風の中心位置の予測誤差と予報時間の関係
図2:台風の中心位置の予測誤差と予報時間の関係
図3:各モデルにおける台風の中心位置の予測誤差の積算
図3:各モデルにおける台風の中心位置の予測誤差の積算

GFS(NCEP):アメリカ国立環境予測センター ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター UKMET:イギリス気象庁 GSM(JMA):日本気象庁 CMC:カナダ気象庁 HFSA(NOAA):アメリカ海洋大気庁 ICON(DWD):ドイツ気象局

降水量比較

大雨による被害が発生したフィリピンと台湾において、各国の気象予測モデルの降水予測精度の比較を行いました。 フィリピンのバギオでは、9月22日0時から23日0時(UTC)の24時間で327mmの降水が観測されました。最も降水を多く予測していたのは、ヨーロッパ中期予報センターのAI気象予測モデル(ECMWF AIFS)で、190mmの降水を予測していましたが、実際に観測された327mmには及びませんでした(図4)。

図4:各国の気象予測モデルにおける、2025年9月22日0時〜23日0時(UTC)の24時間降水量の比較
図4:各国の気象予測モデルにおける、2025年9月22日0時〜23日0時(UTC)の24時間降水量の比較

モデルのベースタイム:2025年9月21日0時(UTC)、地点はSYNOPのバギオ ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター NCEP:アメリカ国立環境予測センター JMA:日本気象庁 BOM:オーストラリア気象局 CMC:カナダ気象庁 DWD:ドイツ気象局

台湾気象局によると、台風18号の影響で数日間にわたって大雨となり、多いところでは3日間の降水量が1,000mmに達しました。災害が発生した花蓮県では、9月22日16時〜23日16時(UTC)にかけて降水量のピークを迎え、24時間降水量が500mmを超える大雨となりました。 最も多く降水を予想していたのはアメリカ国立環境予測センターのモデル(NCEP GFS)で、200mmを超える降水を予測していました。他にも200mm近い降水を予測したモデルもあり、台風による大雨を示唆していましたが、実際の降水量には達していませんでした(図5)。

図5:各国の気象予測モデルにおける、2025年9月22日18時〜23日18時(UTC)の24時間降水量の比較
図5:各国の気象予測モデルにおける、2025年9月22日18時〜23日18時(UTC)の24時間降水量の比較

モデルのベースタイム:2025年9月22日0時(UTC)、地点は台湾花蓮県龍澗

ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター NCEP:アメリカ国立環境予測センター JMA:日本気象庁 BOM:オーストラリア気象局 CMC:カナダ気象庁 DWD:ドイツ気象局





当社では、高精度の予報を提供するため、ウェザーニューズ独自の予測モデルに加え、他機関のモデルも活用したアンサンブル予報を行い、精度評価を通じて継続的な予報改善に努めています。引き続き、AI気象予測モデルも含め様々な予測モデルの精度検証を重ねることで、モデルの特性を深く理解し、皆様により高精度な気象情報をお届けできるよう努めてまいります。





Footnotes

  1. 1:Flash Update #1 - Tropical Cyclone RAGASA – 22 September 2025 ↩︎
  2. 2:超大型台風18号、台湾で14人死亡 中国南部で189万人避難 ↩︎