2025.10.10
台風発生時の番組制作の裏側 〜あなたに情報を「届ける」キャスターでありたい〜

地上波で放送される報道番組のお天気コーナーとは異なり、独自のスタイルで気象情報を伝えているウェザーニュースLiVE。今回は、ウェザーニューズ広報兼ウェザーニュースキャスターの江川が、台風接近や上陸時のウェザーニュースLiVEの裏側の様子を皆さんにご紹介します
台本のない気象情報番組、災害から「命を守る」番組作り
ウェザーニュースLiVEでは、天気予報はもちろん、花火や紅葉といった季節の話題、お洗濯情報など生活に密着した内容もお届けしています。番組の運営レベルは3段階に分かれていて、それに応じてテロップの帯の色も変えて放送しているんですよ。
レベル1(青色): 気象のリスクがない時 レベル2(黄色): 交通の乱れなど、生活に影響する気象リスクがある時 レベル3(赤色): 人命や財産に影響を及ぼす気象リスクがある時
レベル1の穏やかな天気の時は、季節を感じるワンニャン(犬猫)リポートに癒されたり、地域ならではのB級グルメリポートにお腹を鳴らせてしまうキャスターもいたり(笑)。でも、台風が接近している時はレベル2〜3。笑いや癒しは一旦置いておき、言わば「真面目モード」に切り替わります。
私たちキャスターと解説員とディレクターは、この運営レベルに応じて番組の構成を検討するため、番組ごとに気象ブリーフィングを行っています。
以前、私の出演時間帯がレベル3だった時、間も無く台風が発生するという特別な緊張感があり、いつものルーティンを少し前倒しに。身だしなみを整え、鏡に向かって発声練習をしました。解説員と挨拶すると、第一声、解説員からは「次の番組中に、台風の上陸の可能性が高いです。」と情報共有がなされました。
数日前から、ずっと監視してきた台風。実際に自分の担当する番組内で台風が発生するとなると、一気に身が引き締まるのを感じましたが、一瞬で気持ちを切り替えます。この日、私の声は、何万もの人々の運命や人命を左右するかもしれない、と気合いが入りました。

台風が接近している時は、 「この台風は『雨台風』なのか『風台風』なのか?」 「もし、進路が西にずれたら?」 「もし、台風に伴って線状降水帯が形成されたら?」
解説員とのブリーフィングを通じて、この台風がもたらすリスクを徹底的に洗い出し、最悪のシナリオも想定して確認を進めます。
ブリーフィングの中で特に大切にしているのは、台風の「温度感」や「ニュアンス」を確認することです。不必要に不安を煽らず、かといって危険を過小評価しない表現をするための言葉選び。この緊迫感を解説員と綿密にすり合わせることで、キャスターとして選ぶ言葉に責任感を持っています。 社内に台風の発生の知らせが入ると同時に、ディレクターさんから「キャスターさん!急きょ構成を変更して、台風発生の速報を入れます。」と言われて、私たちは構成の変更に対応します。
実はウェザーニュースLiVEには台本がありません。なぜかというと「天気は生き物」だからなんです。臨機応変に番組を放送する必要があるため、私たちの手元にあるのは「構成表」だけなんです。台本がないからこそ、目の前の情報を元にした臨機応変なトークが必要になります。 最近は発声練習を通して、滑舌が良くなるように努めているので“カミ(噛み)様”と呼ばれることも減りました(と、思いたい(笑))。
14年間共に気象情報番組を作ってきたユーザーは心強い存在

もしも、ウェザーリポートやチャットのコメントが一切なかったら、、、想像できないですね。 ウェザーリポートやチャットは、雨量計や風速計では捉えきれない局地的な強雨や突風、道路冠水といった、現地で起こっている具体的な状況を教えてくれる心強い存在です。過去には、ハワイ島の火山噴火について現地にいるサポーターと電話を繋ぎ、現地の状況や心配事など生の声を伺ったことがありました。視聴者の皆さんと海外災害の防災や減災を考えるきっかけにもなったと思います。日本に留まらず、世界各地にいるサポーターと空や自然などを通して繋がることができる、これって本当に素晴らしいことですよね。この時に「世界は一つの空で繋がっているんだ」と改めて実感しました。
ウェザーニュースLiVEは24時間365日放送をしていて、リポートも未明から夜遅くまで一日中届きます。 写真や動画付きのリポートは一日2〜3万通も届いていて、番組の中で紹介しない日はありません。新人研修では、何通もの様々な種類のリポートを読んでトークするという研修も行っていて、番組はリポートがあるというのが前提です。
以前は「気になるリポート」というコーナーがあって、番組前にその日届いたリポートの中から5通ほどキャスターがピックアップして番組でご紹介するということを行っていました。私はよく季節の雲を紹介していました。なんてお話ししていると、またコーナーを実施したくなってきちゃいました。復活させよう!
8月にはウェザーリポートが1億通を突破。私たちは、全国のサポーターと一緒に気象・防災情報番組ウェザーニュースLiVEを作っているのです。
不安な気持ちで私の声に耳を傾ける誰かのために、情報を「届ける」キャスターでありたい

数字や言葉の羅列が、画面の向こうにいる誰かの心にまで染み込んでいるかどうか、その答えは分かりません。しかし、ウェザーニューズなら、視聴者の反応を見ながら番組として情報を届けることができます。
情報を「伝える」ことと「届ける」ことは、似ているようで少し違うと思うのです。私は番組出演中、視聴者の皆さんが受け取り、理解し、そして行動へと移してもらえるように、画面の向こうにいる一人ひとりの顔を想像します。
今、この瞬間も、不安な気持ちで私の声に耳を傾けているかもしれない誰か。その人に、命を守るための行動を、心を込めて「届ける」キャスターでありたいです。