2025.11.13

大西洋エリア過去最強クラスのハリケーンMelissa

ハリケーンMelissa(メリッサ)は、2025年10月28日にカテゴリー5の勢力でジャマイカ西部に上陸し、甚大な被害をもたらしました。

メリッサは21日にカリブ海で発生して西進し、ジャマイカ付近で北向きに進路を変えました。28日15時(UTC)に発達のピークを迎え、中心気圧が892hPa、最大風速は80m/s(160kt)に達しました。これは、大西洋エリアのハリケーンとしては1988年のGilbertや2019年のDorian1などと並ぶ、過去最強クラスの勢力2です。

ハリケーンの接近、通過に伴い、広範囲で被害が発生しました。ハイチで30名、ジャマイカで19名の方が亡くなりました。特に沿岸部は壊滅的な被害を受けており、家屋の倒壊や停電、電気や水道の停止など、多くの人の生活に影響が出ています3




台風の進路評価

ハリケーンメリッサの進路予測について、8つの予測モデルを比較しました。 図1は、ハリケーンが発生した日における、各予測モデルの進路予測を示しています。各モデルの予測には大きな差がありましたが、ヨーロッパ中期予報センターの物理モデルとドイツ気象局のモデルがジャマイカに上陸する進路を予測していました。

図1:2025年10月21日12時(UTC)時点における、各国の気象予測モデルの進路予測
図1:2025年10月21日12時(UTC)時点における、各国の気象予測モデルの進路予測

図2は、台風の中心位置の予測と実況の誤差を表したグラフで、横軸は予報時間(*時間先の予測)を、縦軸は予測と実況の誤差を示します。ヨーロッパ中期予報センターの物理気象モデル(ECMWF HIRES)が120時間先までの予測誤差を200km未満に抑えており、AI気象モデル(ECMWF AIFS)が54時間先までの予測誤差を90km未満に抑えていました。 120時間までの予測誤差の積算値を比較すると(図3)、ヨーロッパ中期予報センターの物理気象モデルが最も予測誤差が小さい結果となりました。

図2:台風の中心位置の予測誤差と予報時間の関係
図2:台風の中心位置の予測誤差と予報時間の関係
図3:各モデルにおける台風の中心位置の予測誤差の積算
図3:各モデルにおける台風の中心位置の予測誤差の積算

GFS(NCEP):アメリカ国立環境予測センター ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター UKMET:イギリス気象庁 GSM(JMA):日本気象庁 CMC:カナダ気象庁 HFSA(NOAA):アメリカ海洋大気庁 ICON(DWD):ドイツ気象局




台風の風速評価

台風の風速予測についても比較しました。 図4は、台風の最大風速の予測と実況の誤差を表したグラフで、横軸は予報時間(*時間先の予測)を、縦軸は予測と実況の誤差を示します。アメリカ海洋大気庁(HFSA)の気象モデルが、120時間先までの予測において常に予測誤差を30kt未満に抑えており、他のモデルよりも明らかに予測精度が高いことがわかります。

図4:台風の最大風速の予測誤差と予報時間の関係
図4:台風の最大風速の予測誤差と予報時間の関係
図5:各モデルにおける台風の最大風速の予測誤差の積算
図5:各モデルにおける台風の最大風速の予測誤差の積算

GFS(NCEP):アメリカ国立環境予測センター ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター UKMET:イギリス気象庁 GSM(JMA):日本気象庁 CMC:カナダ気象庁 HFSA(NOAA):アメリカ海洋大気庁 ICON(DWD):ドイツ気象局




当社では、高精度の予報を提供するため、ウェザーニューズ独自の予測モデルに加え、他機関のモデルも活用したアンサンブル予報を行い、精度評価を通じて継続的な予報改善に努めています。引き続き、AI気象予測モデルも含め様々な予測モデルの精度検証を重ねることで、モデルの特性を深く理解し、皆様により高精度な気象情報をお届けできるよう努めてまいります。





Footnotes

  1. 1:https://weathernews.jp/s/topics/201909/020115/ ↩︎
  2. 2:ハリケーンのカテゴリーについて ↩︎
  3. 3:ハリケーン・メリッサ、カリブ海で49人死亡、北上へ ↩︎