2026.01.15

最先端の技術と知見が集結する「Weather & Climate Forecast Conference 2025」が初開催! 〜AIが拓く気象業界の新しい価値〜

2025年12月16日、一般財団法人 WNI気象文化創造センターが主催する国際会議「Weather & Climate Forecast Conference 2025」が開催されました。ウェザーニューズは本会議が掲げるビジョンに深く共感し、協賛および気象技術に関する講演を行いました。

本会議は「AIが拓く、気象業界の新しい価値」をテーマに掲げ、ウェザーニューズの他にも多くの気象研究者やアジア各国の気象関連機関が参加し、AI気象モデルの進化において世界をリードするGoogle DeepMindも登壇。産官学のトップランナーが一堂に会し、最先端の知見を共有する貴重な機会となりました。

本ブログでは、ウェザーニューズの参加経緯や講演内容についてご紹介します。




産・官・学の連携で国際ネットワークを強化し、災害に備える気象文化の醸成へ

ウェザーニューズの創業者・石橋博良は、ビジネスの枠を超えてアジア・太平洋地域の気象リテラシー向上や技術発展に貢献したいという想いから、2009年に一般財団法人 WNI気象文化創造センターを設立しました。

本会議は、WNI気象文化創造センターのドリームである、アジア・太平洋地域における気象インフラ整備や予測技術の高度化支援の一環として、気象・気候に関する最先端の技術と知見を国際的に発信し、共有する場とすることを目的に開催されました。

ウェザーニューズは、WNI気象文化創造センターが掲げる目標に深く共感し、本会議に協賛いたしました。当日は、弊社のAIを活用した最新の取り組みについても講演を行いました。

開会の挨拶として、同センター代表理事の宮部二朗氏は開催の経緯と想いを次のように話しました。 「昨今の温暖化の影響を目の当たりにすると、石橋の声が聞こえてくるように感じます。今こそ産・官・学が連携し、国際ネットワークを強化する時です。減災に向けた新たな気象文化の醸成を目指し、未来を切り開く実り多い会議にしたいと考えています」

そして本会議冒頭の基調講演では、ウェザーニューズ テクニカルディレクターの西 祐一郎氏が、日本における気象技術革新の歴史を振り返りました。また、AI予測モデルの登場によって予報精度が飛躍的に向上した実例を挙げ、AIによる革新に期待を寄せる一方で、「信頼性を担保するために、AIを正しく活用・評価できる仕組みづくりが不可欠である」と強調しました。




ウェザーニューズによる3つの講演:AIがもたらす気象予測の変革

ウェザーニューズは3つのテーマで登壇し、実際に予報の現場で利用しているAI気象予測モデルの活用事例や精度評価の結果について紹介した他、AIを用いた独自の情報発信のあり方について紹介しました。



予報センター 坂本晃平氏、藤野純平氏:AI気象モデルのアジア領域への応用と課題

坂本晃平氏は、当社で運用中のAI気象モデル「AIFS(欧州中期予報センター:ECMWF)」の活用事例を振り返り、その検証結果を報告しました。具体的な事例として、10日先の気圧配置や台風の進路予測において、従来の物理モデルを10〜20%上回る高い精度が得られたことが紹介されました。

一方で、AIモデルには局地的な豪雨の「強度」を控えめに予測する傾向があることも判明しました。今後AI気象モデルはさらに高解像度化が進むとされていますが、社会実装を進める上では、モデルごとの得意・不得意を十分に理解し、適切な使い分けが重要であると捉えています。

続いて藤野氏からは、自社開発した目先1〜12時間先の予測モデル「AIニアキャストモデル」を紹介しました。現状、12時間先までを高頻度に更新する予測モデルは気象庁のLFM(局地モデル)に限られており、データの選択肢が少ないことから独自開発を決めました。直近の予測には更新頻度の高さが求められますが、AIの計算スピードを活かすことで、その課題にも対応できると考えています。

ウェザーニューズがAIモデルの開発に注力する背景には、従来では困難だった「10分間隔の予報更新」がAIによって可能になる点や、当社の膨大な気象データがAIの活用によって更なる強みになるという確信があります。今後は、ECMWF等の気象機関やビッグテックが大規模なグローバルモデルを担う一方で、民間企業はより高解像度な局地モデルを追求するという、明確な役割分担が進んでいくべきであるとの展望が示されました。



グローバルストームセンター 今野良洋氏:台風予測におけるAIの革命的成果

今野良洋氏は、台風予測におけるAIの圧倒的な優位性と実用性を報告しました。2025年にフィリピンやベトナムに甚大な被害をもたらした台風を例に、Google DeepMindの「FGN Version3」やECMWFの「AIFS」を検証した結果、これらが従来の物理モデル(GFS等)を精度面で凌駕していることが判明しました。

特に「FGN Version3」は、AIの弱点とされた「強度予測」でも物理モデルを20%上回る精度を達成しています。AIは発生初期から予測が安定しており、統計的に優れた物理モデルでも大きく外れる個別事例において高い信頼性を示します。

ウェザーニューズでは既にAIFSを日々の運用に導入し1、2025年後半の台風進路予測において他機関比で最大24%の精度向上を実現しました。想像以上の進化を続けるAI気象予測モデルの検証を継続し、最大限に活かす予報技術を高め、社会に還元していきたいと考えています。



AI CoE(Center of Excellence) 森本顕大氏:意思決定を支える「気象を読む」AIエージェント

森本顕大氏の発表では、ウェザーニューズが独自開発したAIエージェント「お天気エージェント」について発表しました。

現代において気象予報はコモディティ化しており、今後は単に予報精度を競うだけでなく、その情報をいかに「ユーザーの意思決定」に繋げるかが重要になると考えています。当社は、アプリユーザーから届いた天気報告「ウェザーリポート」や独自の予報など、信頼性の高い独自データを活用した「お天気エージェント」を活用することで、ユーザーの意思決定をサポートしています。

従来の「ウェザーニューズのAPI をAIが自動的に選択・利用してユーザの質問に応答する手法」に加え、現在は「Text2SQL」の手法についても検証を行っています。これはAIがデータベースへ直接アクセスすることで、気象データに関する文脈的理解を向上させることを目的としています。

現在、様々な企業が独自の「AIエージェント」を開発していますが、将来的には、AIエージェント同士が連携する新しい時代がくるでしょう。ウェザーニューズという“気象のプロ”が誇りを持って提供するデータを、いかに工夫すれば一般の方々へより分かりやすく届けられるか。新しい時代を見据えながら、その方法を検討していきたいと考えています。




気象予測のパラダイムシフト!最先端技術でアジア各国の防災力向上

本イベントでは、アジア各国の国立気象水文サービス(インドネシア:BMKG、フィリピン:PAGASA、タイ:TMD、ベトナム:VNMHA)の代表者が登壇し、AI活用の現状に関するパネルディスカッションが行われました。

ディスカッションでは、熱帯地域における気象予測や情報発信へのAI活用について、現状の課題と将来への期待が共有されました。特に予測精度の向上だけでなく、国民への迅速な情報伝達という観点でもAIへの期待が高まっています。

また、Google DeepMindのResearch Scientist、Ferran Alet氏が登壇。同社が2025年に発表した最新AI気象モデルの評価結果や社会実装の状況など、最先端技術の進歩について講演しました。

次回のイベントは2026年6月に開催予定です。ウェザーニューズは今後も産官学の連携を深め、気象技術の発展と最新技術の社会実装に向けて積極的に参画してまいります。




Footnotes

  1. 1:AIは台風予測に革新をもたらすか!?台風専門チームが最新のAI予測モデルを運用開始 ↩︎