2026.01.27
気候変動リスクの可視化に挑んだ「試練」を経験値に〜「地球の未来」を共に考えるパートナーでありたい〜

「船乗りの命を守りたい」
これはウェザーニューズが創業以来掲げ続けている、私たちの原点とも言える想いです。しかし、気候変動が深刻化する現代において、私たちが守るべき対象は海の上だけにとどまりません。私たちは今、創業以来の想いに加えて、「地球の未来も守りたい」という新たなDream(夢)に向かって突き進んでいます。
ウェザーニューズは2021年に専門部署を設立し、気候変動の緩和と適応をはじめとした環境課題への取り組みを推進、情報開示も行ってきました。
今回は、私たちがどのように気候変動という大きな課題に向き合っているのか、ウェザーニューズのサステナビリティ推進室の工藤成史氏に、取り組みの内容を聞きました。
独自の気象技術を核に、緩和と適応の両面から持続可能な社会に貢献
気候変動に対処するための対策として、大きく分けて2つの柱があります。 1つは、温室効果ガス(GHG)排出量の削減などで温暖化を食い止める「緩和策」。これに対して企業各社は、脱炭素社会へと進むための具体的な目標と行動をまとめた「移行計画」を示しています。 もう1つは、避けられない気象の変化に備え被害を防ぐ「適応策」。こちらは、気象リスクを最小限に抑えつつ、新たな機会を捉えることを目指す「適応計画」として示しています。
実は、私たちのサービスは企業の「適応策」そのものなのです。
ウェザーニューズは創業以来、約半世紀にわたり、気象災害から人々の安全と社会活動を守るサービスを提供してきました。近年では、アジア各国の政府機関とパートナーシップの構築を積極的に進め、これまで培った気候変動適応に関するノウハウを共有することで、現地の防災・減災対策を多角的に支援しています1。
創業当初、海から始まったサービスは現在では空や陸へと広がり、世界中の自治体や企業の意思決定を支えています。
また、船舶向けの航路支援サービスは、燃料消費を抑えることで結果としてCO2排出量の削減にも貢献しており、企業の「緩和策」をサポートしています。
もちろん、自社においてもCO2排出量削減の「移行計画」を策定しています。2030年に向けた温室効果ガスの削減目標を立て、自社活動におけるエネルギーの切り替えや排出削減を具体的に進めた結果、国際的な気候変動イニシアチブ「Science Based Targets initiative (SBTi)」より、科学的根拠に基づいた削減目標であるとの認定を受けています2。
このように私たちは、気象技術を通じて被害を防ぐ「適応」と、温暖化を食い止める「緩和」の両面から企業を支援しています。
情報開示は試行錯誤の連続。ゼロから始めた「気候変動リスクと機会」の可視化
私は、自社の取り組みを整理し、社外へ正しく発信していくサステナビリティ推進室の一員として取り組んできたのですが、このプロセスは一筋縄ではいきませんでした。当社の情報開示は、国際的な情報開示の枠組みである「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の提言に沿って、ウェザーニューズにとっての気候変動リスクを洗い出すことから始めました。
「リスクを数値的に可視化し、財務インパクトを算出する」と、言葉にするとシンプルですが、当時は、参考となるテンプレートや標準的な計算手法も少なく、物理的リスクを定量的に評価することは容易ではありませんでした。そこで私たちは、リスクマネジメントの担当としてBCP策定時に実施してきた事業影響度分析の知見をもって、2020年に新設した気候プロジェクトチームが解析した高度な気候予測データを活用。国土交通省などが公開している財務インパクト算定の考え方を参考にしながら、物理的リスクを一つひとつ定量的に評価していきました。
試行錯誤の結果、日本国内の各事業所が将来どのような気象リスクに直面し、それが経営にどのような影響を与え得るのかを、具体的な形で可視化することができるようになっていったのです。この経験は、単なる情報開示対応にとどまらず、気候変動への「緩和と適応」を事業として捉えるという、ウェザーニューズ本来の強みを改めて認識するきっかけにもなりました。
世界の22,000社以上が回答するCDP:企業の環境対応を測る国際指標

こうした透明性の高い情報開示と、具体的な削減アクションの積み重ねが、国際的な評価へとつながっています。私たちが毎年取り組んでいる「CDP」は、企業や自治体の環境に関する情報開示を促進する国際的な非営利団体です。企業が行う情報開示の充実度、環境リスクに対する理解度、さらには野心的な目標設定やアクションの検証など、企業の活動状況を評価します。
2025年の調査では、世界で約22,100社以上、日本だけでも3,000社を超える企業が回答しています。その中でウェザーニューズは、気候変動部門で最高評価となる「Aリスト」に選定されました3。
実は、当社のCDPスコアも最初から良かったわけではありません。かつては「D」評価を受けたこともありました。気候変動ビジネスを推進する企業として、まずは自らが信頼される存在でありたい。その想いで、情報開示のレベルを徐々に高めていくことができたと思います。
CDPでA評価を受けるということは、単に成績が良いということではありません。自社の活動を包み隠さずオープンに公表し、経営のトップから現場までが「地球のために」という責任を持って行動していること。つまり、世界共通の「環境を守るための正しいロードマップ」をしっかり歩み、世界をリードする存在であると認められた証なのです。
気候変動に対応できる社会を目指し、共に悩み、考えるパートナーでありたい

CDP気候変動部門で最高評価をいただいたことは大変光栄なことですが、決してゴールではありません。CDPの質問書に回答することは、世界基準の素晴らしい取り組みを学ぶ重要な機会だと考えており、これからも情報開示を通じて自社の取り組みをアップデートしていきたいです。
また、私たちがかつて壁にぶつかったように、多くの企業の方々も今、同じように悩んでおられるはずです。私たちは単に気象・気候データを提供するだけのベンダーではありません。自らも悩み、実践してきた経験を活かし、皆さまと同じ目線で「気候変動に対して、これから何をすべきか(緩和や適応)」を共に考えていけるパートナーでありたいと願っています。
「地球の未来も守りたい」――この大きな夢を掲げる私たちにとって、気候変動への挑戦は避けられない使命です。ステークホルダーのみなさまとともに、地球への負担を減らしながら、持続可能な社会に貢献していきたいです。
私たちの気候変動への挑戦は、まだ始まったばかりです。


