2025.12.09
【ウェザーリポート20周年】世界に類を見ない唯一無二のコミュニティの軌跡と未来
この度、サポーターの皆さんと共に歩んできた「ウェザーリポート」は、20周年という大きな節目を迎えることができました。
ウェザーニューズ1では、ユーザーの皆さんを「サポーター」という愛称で呼んでいます。 20年にわたり、毎日空を見上げ、貴重な情報を報告してくださった全国のサポーターの皆さん、そして長きにわたりご支援くださった全ての方々に、心より感謝申し上げます。
2005年11月1日、最初のウェザーリポートに胸を高ぶらせたあの日から今日まで、サポーターの皆さんと一緒に、世界に類を見ない「みんなでつくる天気予報」の文化を築き上げてきました。
本ブログでは、ウェザーリポートの20年の軌跡を振り返るとともに、私たちが目指す未来、そして新たな挑戦について、皆様にお伝えしたいと思います。
きっかけは桜 確信した参加型の情報革命
ウェザーリポートの原点は、「桜」にあります。
ウェザーニューズでは毎年、全国の桜の開花予想を発表していましたが、サポーターから「自分の家の周りでは今このくらい咲いてますよ」とメールをいただくことがありました。この情報に着想を得て、2004年3月に「さくらプロジェクト」を立ち上げ、全国の皆さんから桜の開花状況の投稿を募りました。 全国から寄せられた情報を地図上にプロットしたとき、従来の気象台の観測データだけでは表現しきれなかった詳細な桜前線が、驚くほど明確に見えたのです。
2004年の夏には「台風リポート」を募集。現地からの投稿を通じて、現地の被害状況がリアルタイムで可視化されました。さらに2005年の春には、全国の花粉症の皆さんに観測機を配布し、花粉の観測データと症状報告を集めて花粉の飛散量予測に活用する「花粉プロジェクト」も始まりました。
私たちは、桜をきっかけに、台風や花粉の実績から「みんなで情報を持ち寄ることで、より正確で詳細な情報を生み出すことができる」という大きな可能性を確信しました。そして、2005年11月1日にウェザーリポートを本格的にスタートさせたのです。 記念すべき初日に投稿されたウェザーリポートは244通。この244通から、サポーターの皆さんとの「共創」の歴史が始まりました。

ウェザーリポートで天気予報が変わった日
ウェザーリポート開始当時は、まだガラケー(フィーチャーフォン)が主流で、写真を送るのにもお金がかかる時代でした。またウェザーリポートは当初、情報の信頼性を担保するため、ウェザーニュースの有料会員向けの機能として提供していました。 SNSなどで写真や動画を無料で投稿できる今の時代から考えると、お金を払ってまで参加してくれる人がどのくらいいるんだろう、と思う方がいるかもしれません。 それでも「自分の投稿が何かの役に立つなら!」と、ウェザーリポートを送ってくれる方が段々と増えてきました。
「全国から寄せられるリアルタイムの情報を、もっと予報に活かせないか」 「1時間や3時間ごとの天気予報が当たり前の時代に、サポーターの”もっと細かく知りたい”というニーズに答えられないか」 そんな想いから2008年6月に誕生したのが「10分天気予報」です。
「10分天気予報」は、現在地の1時間先までの天気予報を10分単位で確認できるサービスです。最大の特徴は、サポーターから届くリアルタイムの天気報告を元に、天気予報が作られていることです。例えば、気象レーダーにはその特性上、レーダーで捕捉していなくても実際には弱い雨が降るケースや、レーダーで捕捉していても実際には雨が降っていないケースが存在します。「10分天気予報」ではこういった状況にいち早く気がつき、予報に反映することができます。サポーターからの貴重な情報から新たな天気予報が生まれた瞬間でした。

「予測不可能」への挑戦
ウェザーリポートの力で、「不可能」と言われた予測へも挑戦してきました。
2008年7月、ゲリラ豪雨による痛ましい水難事故が発生しました。ゲリラ豪雨は、半径が十数キロ程度の小さな積乱雲が急に発達して豪雨をもたらします。当時、ゲリラ豪雨はその突発性から「予測不可能」と言われていました。
「ゲリラ豪雨による被害者をなくしたい」という強い使命感のもと、2008年7月30日に「ゲリラ雷雨防衛隊」を発足。サポーター(隊員)から寄せられる「ゲリラ豪雨の前兆となる雲のリポート」を元にゲリラ豪雨の発生を事前に予測し、発生の危険が高い地域に通知するというサービスが誕生しました。
開始当初はゲリラ豪雨が発生する10数分前にしか通知できませんでしたが、現在では約1時間前には通知できるようになっています。ゲリラ豪雨のリポートは、シーズン全体で30〜40万通にも及びます。この膨大な情報こそが、「不可能」と言われた予測への挑戦の原動力となりました。

未曾有の災害、その時ウェザーリポートは
ウェザーリポートの歴史において大きな転機となったのが、2011年3月11日に発生した東日本大震災です。
非常事態の中、現地の被害状況を迅速に把握するため、それまで有料会員向けだったウェザーリポートを一時的に無料で開放。その結果、2日間で約4万件ものリポートが被災地から集まりました。
時々刻々と変化する被害状況をリアルタイムマップで公開したデータは、国の機関や大学などで広く活用されました。この経験は、多くの方に報告いただくことで、社会へ還元できる新たな価値が生まれるということを、私たちに実感させてくれました。
このことをきっかけに、開始より有料サービスとして展開していたウェザーリポートを、2012年7月に無料化することを決定。ウェザーリポートは、誰でも参加できるコミュニティとして、新たなスタートを切りました。

天気予報に参加する時代、そして予報精度No.1へ
2015年、ウェザーリポートは開始から10年が経過し、「今の天気を報告する」段階から、いよいよ「予報に参加してもらう」ステージへと飛躍します。
2015年11月に開始した「プロジェクトicon」は、天気予報のアイコン(天気マーク)の編集に、サポーターが参加する取り組みです。特に貢献度や意欲の高いメンバーに、地元の天気マークのコントロールを委ねるという、極めて挑戦的な試みでした。サポーターは発表されている目先6時間以内の天気予報のマークに違和感があれば、正しいマークを提案し、予報センターにて確認・修正する仕組みです。これに伴い、サポーターの気象リテラシーを高めるため、「全国セミナー」や「空のウェブセミナー」も開催しました。
ウェザーニュースはサポーターと共に一番当たる天気予報に挑み続けました。そして、2022年には、第三者機関(東京商工リサーチ)の検証により、予報精度No.1であることが初めて確認されました。これは、「みんなでつくる天気予報」が、天気予報で最も重要な価値である予報精度においてトップレベルの成果をあげた瞬間でした。 ウェザーニューズではその後も天気予報の精度向上への取り組みを継続し、2022〜2024年の3年連続で予報精度No.1を維持し続けています。

共創の成果が社会を支えるインフラへ
ウェザーリポートの活躍は、天気予報の精度向上にとどまらず、人々の生活を守り、社会を支える様々なコンテンツへと広がっています。 寄せられたウェザーリポートを解析することで、これまで数多くの独自予報が次々と誕生しています。
天気痛予報(2020年) 医師と共同開発した独自指数。天気痛の症状報告と気圧データの詳細な分析に基づき、天気痛の発症リスクを4ランクで予報。
体感予報(2020年) 過去9年半、約1,500万通にのぼる体感報告を分析し、「暑い」「寒い」など人の体感を10ランクで予報。地域特性も反映。
路面凍結予報(2020年) 路面凍結の報告と気象条件との分析から、路面凍結のリスクを「アイスバーン」「デコボコ凍結」「シャーベット」「積雪」の4ランクで予報。
停電リスク予測(2021年) 過去の台風時の停電報告と当時の風速との解析に基づき、停電のリスクを4ランクで予測。
電力需給予報(2022年) 独自の電力需要予測と電力会社から発表される供給力のデータを元に、電力ひっ迫度を予報。サポーターの体感報告を活用し、予測精度を向上。
ドライブリスク予報(2022年) 道路状況に関する調査に基づき、ルート上の「路面」「視界」「強風」の3項目への影響を「危険」「警戒」「注意」の3ランクで予報。
ひょうリスク予測(2024年) 雹の報告と気象条件を分析し、36時間先までの降雹リスクを2ランクで予測。
これらの独自予報は、個人向けのお天気アプリだけでなく、企業向けのデータAPIでの提供や、実際の製品やサービスへの導入が進んでいます。ウェザーリポートは、ウェザーニュースの予報にはなくてはならない存在であると同時に、自治体との連携、放送局での利用、企業のビジネス最適化など、様々な業界において活用され、社会インフラとしての役割を担い始めています。

唯一無二のコミュニティを、日本から世界へ
20年間積み重ねてきた歴史は、サポーターの皆さんとの間に、強固な信頼関係を築き上げました。ウェザーリポートのコミュニティは、ハーバードビジネススクールのケーススタディにもなるほど、世界的に見ても極めてユニークな存在です。
このコミュニティが生み出す価値は、これからさらに活用が広がっていくと確信しています。私たちは、防災最先端の国である日本から、この「みんなで助け合う」減災の輪を、ウェザーリポートというプラットフォームに乗せて世界へ広げていくという新たな挑戦を始めています。
ウェザーリポートは、これからも皆さんと共に、次の未来へ歩みを進めてまいります。
引き続きのご支援、ご参加を心よりお願い申し上げます。


