Weathernewsの人工知能

LAPLACE

ウェザーニューズは、観測機器で観測した気象データだけでなく、花粉をリアルタイムに観測するポールンロボ、外洋航海する船長から送られる波や風のリポート、一般の方からの天気のリポートなど、IoTを駆使したビッグデータを収集・解析し、そこから予測される情報をもとに、様々な市場のお客様に対して、気象リスクの対応策となるリスクコミュニケーションサービス(対応策コンテンツ)を提供しています。このサービスは、それぞれお客様の業務と気象に起因する課題をよく理解しているリスクコミュニケーターが担っています。
これらリスクコミュニケーションサービスを提供するまでのプロセスにおいて、適宜、AI技術を組み込むことで、コンテンツの精度向上や生産性向上はもちろんのこと、人の力だけではできなかったコンテンツや問題解決ができることがあります。
ウェザーニューズではこのAI技術を、18世紀のフランスの数学者・物理学者・天文学者であるラプラスが提唱した、今を正しく知ることができれば、その延長である未来の現象を知る(計算する)ことができるという「ラプラスの悪魔」の考え方になぞらえて、LAPLACE(ラプラス)と呼んでいます。

LAPLACEはウェザーニューズ社内のいろいろな箇所で使われています。

LAPLACEの使用事例

ウェザーリポート解析

〜人の体感や文章を数値化〜

ウェザーニューズでは1日に約18万通以上届くウェザーリポートやグローバルに約1000台設置しているライブカメラなど、人間の五感を反映した”感測データ”を収集しています。これらのデータは、気温18度、降水3mm/hのような物理量で表すことはできないため、当初は気象専門家の目で一つ一つ確認していましたが、量が膨大なため、リポートされた内容をその後の予報プロセスにリアルタイムに活かすことができないケースが多々ありました。しかし、LAPLACEにより、リポートに含まれる天気予報独特の文章表現を数値化する自然言語処理を行ったり、写真に収められている雲からその形と発達度を画像認識し、特徴の重み付けを学習できるようになると、そのあとの予報をつくるプロセスに、ほぼリアルタイムに利活用することができるようになりました。

カメラ画像からリスク判別

〜お客様の知見をカメラ画像に反映〜

ヘリコプターは有視界飛行するので、飛行ルート上に霧や雲がかかっていると安全な運航ができません。ウェザーニューズはコンテンツサービスとして、お客様の経験をもとに要所となる山や峠にカメラを設置し、空や雲の様子を安全飛行のために随時監視しています。しかし、すべてのヘリコプターが同じところを飛行するわけではないので、日本全国に設置されているカメラを人の目で見続けることは不可能です。

そこで、お客様やリスクコミュニケーターが普段気にしている、山や峠の空や雲の見方、タイミング、現地感覚をLAPLACEに学習させ、カメラ画像からデータ化しています。データから判断できる情報をお客様に提供するコンテンツに反映したり、同じ状況が予想されたときにアラートを出すなどして、悪天の予兆をいち早く捉え、安全運航のための見逃し低減に努めています。

メールハンドリングの最適化

〜10000通のメールを判別〜

ウェザーニューズの航海気象グループでは、現在世界中を航行する船舶と陸地のオペレーターから、1日におよそ10,000通のメールを受信しています。この膨大で重要なメッセージは、一つ一つが非常に特徴的で、海運業界特有の用語や表現スタイルがあります。例えば文字数によって課金されるTELEXが主流であった時代から続く、通信費用を極力少なくするために工夫して短縮された単語や文章、また海運会社ごとのメールフォーマット、更にはメールをつくる人の国籍や文化、パーソナリティによるものなどです。これらメールの内容を、瞬時に正しく理解するには相応の訓練が必要です。

これまで一人当たり1日に約1,500通のメールを読み、次の工程を行うスタッフに1通ずつ「緊急のもの」「スケジュールに追加するもの」「観測値」に振分けるという業務を実施していましたが、メッセージが集中する時間帯には振分けに時間を要してしまい、必要とするアクション実施に時間がかかってしまうことがありました。
2017年、この様々な様式のメールを解読するノウハウを学習したLAPLACEが、このメール振分けのおよそ60%を担うことに成功したことで、お客様へのアクションをより迅速に行うことができるようになりました。

アジア新興国の降水量推定

〜過去画像との相関・非相関性学習〜

アジア新興国では、雨量計や気象レーダーなどの観測インフラは日本に比べるとまだ十分に整備されていません。気象実況を把握するには観測インフラを現地で整備していくことがまず重要ですが、観測機の手配、設置場所の設置条件等々、国ごとの事情があり簡単には進みません。一方で、その整備を待っていては、今、起きるかもしれない気象災害に、それが判る可能性があるのに対応できない事態にもなりかねません。そこでウェザーニューズは、ひまわり8号がアジア地域もカバーしていることから、この衛星画像と過去の雨量について、相関することも関連しないこともLAPLACEに機械学習させ、アジア新興国地域の降水量を推定し予報の一部として使っています。

RCコミュニケーション支援ツール

〜お客様との対話からリスクを読み解く〜

将来的には、お客様に気象リスクをお伝えするリスクコミュニケーターの業務にもLAPLACEを導入していきます。ウェザーニューズでは今、お客様との対話から、そのときの状況を把握する音声認識技術の他、機械学習を用いた各種気象データ処理、ユーザ特性に適合する対応策情報を作るコンテンツマッチング技術など複数のLAPLACEを掛け合わせる次世代のコミュニケーション支援ツールの開発に取り組んでいます。

例えば、道路の補修工事でアスファルト打ち替え時に、少しでも雨が降ると仕上げの品質が落ちるため作業がやり直しとなり、工程調整などコスト増につながります。これらの原因となる気象現象は最新の技術を用いても100%予測する事はできませんが、そのときの状況判断と対応策が良ければ損失を小さくすることができます。そこで、時事刻々と変化する気象現象の大規模データと、お客様との対話の中で発見した「気になっているリスクやイベント」「お客様側の状況」「緊張度」等に関するデータを読み解き「そのお客様にとってどの程度の大きさのリスクがありえるか」「そのときの対応策は何か」という情報を生み出すものです。

システムの運用を通して多くのお客様との対話することで、お客様がどのような状況下でどのような情報に関心を持たれるか、またその傾向などを学習し、対応品質が向上します。

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