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2012年5月6日の竜巻に関して
【ウェザーニューズの取り組み】
2012年5月6日、日本上空を非常に強い寒気が通過し、広い範囲で大気の状態が不安定になり、12時から13時頃にかけてつくば市やその周辺で竜巻による大きな被害が発生しました。
当社では、捉えることが困難な竜巻による被害を少しでも減らすために、竜巻研究の最先端で知られるオクラホマ大学と共同で研究を継続しています。具体的には、回転成分の強い雲を捉える、メソサイクロン検知システム(Mesocyclone Detection Algorithm、以下MDA)の応用、竜巻がどのような動きをするのかを予測するStorm Trackerのシステムの開発に取り組んでいます。
また、当社は独自の観測インフラであるWITHセンサー(全国約3000ヶ所に設置)により各地の気圧の変化等を1分毎に監視することができます。加えて、WITHレーダーやサポーターからのウェザーリポートによって現地の状況をいち早く把握し、近くのほかのサポーターに迅速に伝えることについても取り組んでいます。これらの独自のインフラを複数同時に活用することによって、竜巻を具体的に捉え、また、その情報を迅速に伝えることで、被害をより減らすことを目指しています。
【MDAによる解析(竜巻リスクの検出)】
MDAによって今回の事例を再解析した結果、活発な雨雲に対して回転成分を解析し、メソサイクロンを検知できることがわかりました。図1では6日12:30におけるレーダーエコーの様子を表しています。左図の赤くエコーの強い緑の円の中に、右図の四角く印をつけた回転成分があることがわかります。また、MDAは上層の複数の高さを対象に行っています。図2は、今回の事例におけるMDAランクの時系列変化を示します。
MDAランクとは、積乱雲の中の渦の強さを表す値で、5以上でメソサイクロンが発生し、10以上で竜巻の発生しやすい状況になります。つまり、MDAの値が高いほど、竜巻や突風の可能性が高くなります。今回の事例においては11時台にも、MDAは突発的な渦の強さの検出により、高い値を示すことがありましたが、12時35分頃からは800m付近を中心にMDAの値が高まっていることがわかります。地表面により近い部分でこの値が大きくなる場合に竜巻の危険性が高くなります。すなわち、竜巻の発生する条件が揃っていたことが、MDAより確認できます。
【Storm Trackerによる解析(竜巻進路の予測)】
MDAにより解析されたメソサイクロンの可能性がある雨雲に対して、Storm Trackerにより移動予測を行った結果、今回の事例では竜巻発生箇所が、Storm Trackerによる警戒エリア内に含まれていました。さらには、つくば市北条地区を通過し終えるまで追跡することが可能であったことがわかります。
【WITHレーダーの解析(突風リスクの検知)】
図4、5は、当社の独自インフラであるWITHレーダー(6秒ごとの観測が可能)が捉えた5月6日の筑西市近隣の雨雲の様子です。図4は降水強度を示しており、暖色(赤)ほど活発な雨雲を示しています。さらに、円で示した雨雲(およそ2000mの高さを観測)は、フック(カギ)状に変化しつつあり、地表でも激しい現象(突風など)がいつ起きてもおかしくない状況であったことがわかります。図5はドップラー速度の観測の結果です。この図では、赤色はレーダーから離れる向きの動き、青色はさらにその速度が速いことを示します。活発な雨雲周辺で色の変化が見られることから、水平方向速度の違い(水平シア)が大きくなっており、メソサイクロンが発生したと考えられます。
【WITHセンサーの気圧変化(突風リスクの検知)】
WITHセンサーの気圧データによる、当時発生していたメソサイクロンのスケール推定については、前回のWxFilesVol.13(速報)のとおりです。強い降水や突風が発生するような激しい気象現象になる場合、短時間における気圧の変動が大きくなります。図6の独自観測器WITHセンサー(茨城県坂東市設置)の気圧データを見ると、5月1日9時~5月9日24時の中で大きく変動している箇所があります。拡大したものが右下図です。ちょうど茨城県内で激しい現象が起きはじめた時間帯に対応しており(およそ12時~13時頃)、 今後、WITHセンサーの気圧データからも局地的な突風リスクを検知できることが期待されます。
【ウェザーリポート(竜巻の実況把握)】
実際に竜巻を目撃したウェザーリポーターからは、
12:48(つくば市田中)軍曹さん
「『雲行きが怪しいなぁ』と思って居たところ案の定ゴロゴロ言い出して 今は雹と雨の混合で降り出してきました」
12:49(つくば市北条)ののさん
「竜巻発生 こっちに向かってます」
12:55(つくば市作谷)つくば人さん
「いま竜巻が発生いろいろなものを巻き込んでかなりの距離を移動 只今停電中です。」
など、多くの声が寄せられました。第一報が届いたのは12時48分。 より多くのサポーターがリポートに参加することによって、より早く 発見、更に他のサポーターに対して危険な状況であることを伝えること ができるようになると考えています。
【まとめ】
当社のMDA、Storm Tracker、WITHレーダー、WITHセンサー、ウェザーリポートなどの独自のインフラを用いて、5月6日の竜巻について再度解析、調査を行ったところ、竜巻リスクの検知や、発生した竜巻の進路を予測できる可能性があることがわかりました。今後は、事前に現象を具体的に捉え、いち早く、皆様にお伝えすることにより、少しでも竜巻の被害を減らすことを目指して取り組んで参ります。