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2012年5月6日関東北部の竜巻、突風に関して(速報)

【概要】

2012年5月6日は日本上空を非常に強い寒気を伴うトラフが通過し、広い範囲で大気の状態が不安定になり、各地で積乱雲が急発達した。特に東日本では湿った南風と日照の影響で地上気温がかなり上昇し、積乱雲の発達が強化され、広い範囲で強雨、落雷、雹、霰等の激しい現象が発生した。つくば市では12時から13時頃にかけて竜巻による大きな被害が発生している。

6日は日本海の上空約5000m付近(500hPa)には氷点下27度以下という非常に強い寒気があり東進、関東上空の午前9時、21時の観測では5000m付近(500hPa)で氷点下20度前後まで下がっていた。一方で北陸沖から東北地方北部に進む地上の低気圧に向かって南西の風が流れ込み、関東エリアは地表付近では気温が上昇しやすい状況であった。

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つくば上空は館野高層観測500hPaデータ

【6日の関東地方の気象状況】

当日の関東地方は全般に大気の状態が不安定であった。日中、北陸沖から東北地方へ進む低気圧からのびるシアラインが関東地方にかかり雨雲が発達。その後、発達した雨雲のラインは東へ進みつつ南下し、この影響で、関東平野では広い範囲で短時間の強い雨や落雷、雹/霰、突風等の被害に見舞われた。つくば市(黄色)、真岡市(桃色)周辺において竜巻や突風による被害が発生した。

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【竜巻が確認されたエリアの気象状況詳細】

関東南部では南寄りの風が吹き、関東平野では内陸からの弱い北寄りの風と南風による地上収束が明瞭となった。竜巻をもたらしたと思われる雨雲は関東西部より東進。12時頃、久喜周辺で急激に発達し、つくば方面に流れ込んだ。

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11時の気温分布
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発達直前には、久喜の北西部に位置するアメダス館林の北西風が強まり(5m/s)、収束と渦度が強化されていた。この要因としては久喜市の北側を通過する雨雲からのコールドアウトフロー(北西風の強まった館林は12:00~12:20にかけて約2℃低下)の可能性が考えられる。

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図:12時SYNOP気圧解析
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図:収束発散図(12時20分)

また、気象レーダーによるつくば市周辺の観測では当時非常に発達した雲が東進していたことが確認できる。

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図: WITHレーダー反射強度、右はWITHレーダードップラー観測

【サポーター情報、現地調査による分析】

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12時30分~40分
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12時40分~50分
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12時50分~13時00分

竜巻発生前後にウェザーリポーターから届いた天気に関するリポート推移をみると、着目すべきは雹や霰を表す紫色のリポートである。埼玉県内では、雹や霰のリポート数は多くないが、茨城県内では、リポート数が急激に増えている様子が分かる。これは、発達した雨雲の通過により、降水は雨ではなく雹や霰として降ってきたことを表している。
また、竜巻を目撃したウェザーリポーター(つくば市)からは
「竜巻が来る前、西の方から雷の音がし始め、雹がバラバラと降ってきて、すぐに止み、西南の空に灰色の漏斗雲を見つけました。みるみるうちに大きくなり近づいてきて、北東の方向へ行きまし た。」
との報告があり、竜巻が接近する前に雹が降っていたという状況が分かる。

<サポーターから届いた竜巻に関するリポート>

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茨城県つくば市北条
(ののさん)
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茨城県つくば市作谷
(つくば人さん)
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茨城県つくば市北条
(ミニさん)

上記以外にも、つくば市周辺からは多くの竜巻の目撃情報が寄せられた。大規模な停電、車のガラス、家屋の屋根まで粉々状況の状況もリポートされている。

また、栃木県内においても真岡市周辺から益子町、茂木町にいたるまで被害のリポートが届いた。瓦やトタン、物置が飛ばされたり、大規模な停電や電柱の倒壊などのリポートが寄せられている。

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栃木県芳賀郡茂木町(masaさん)

【現地調査内容】

現地での詳細情報を把握するため、ウェザーニューズより現地に調査員を派遣して、6日、7日につくば市、同じく7日に真岡~茂木で被害範囲や目撃情報の詳細な調査を行った。つくば市周辺については被害状況から推定される竜巻のルートは下記のような状況であった。

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【ソラテナデータによる考察】

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つくば市周辺の4台のWITHセンサーで観測された気圧のデータでは、12時15分過ぎから12時30分過ぎにかけて、気圧の急激な下降や上昇が見られる。急激な下降の始まりから上昇の終わりまでの時間は約7分~15分である。乱雲の移動速度は、レーダーや気圧のデータから時速約60~80kmと推定され、これらから、気圧の変化に現れている擾乱の水平スケールは7~20kmと推定される。この擾乱は、竜巻をもたらした積乱雲に伴うメソサイクロンに対応する可能性がある。

【今回の事象に関する考察】

こうして得た情報も踏まえ考察すると、6日、つくば市周辺ではメソサイクロンを伴うスーパーセルと呼ばれる構造の積乱雲が通過したと思われる。このスーパーセルが強い竜巻の発生環境となり、落雷、雹/霰、竜巻をもたらしたと考えられる。

今回、発生したスーパーセルはレーダー等による観測では雲頂高度は上空14km以上まで程度まで達しており、12時から13時頃にかけて1時間程度強い状況を維持していたと考えられ、実際に竜巻が地面に接地して大きな影響をもたらしたのは長さ約10キロ程度の帯状の範囲であった。

関東平野では昨年2011年4月25日にも千葉県で竜巻が発生した事例があり、今後も上空に非常に強い寒気が入って、地上気温が上がるなどで積乱雲が発達する状況においては、十分に注意が必要と言える。

また、竜巻のEFスケール(改良藤田スケール)については2から3程度と推定され、日本域での竜巻としては発生は非常に強い強度であったと言える。

なお、今回の竜巻、突風については、当社独自のメソサイクロン検知方法の有用性を含め、今後もウェザーニューズにおいて調査、検証を継続して行う。