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7月5日、梅雨前線による九州北部の大雨について

1.はじめに
 2017年7月5日、九州北部にバックビルディング型の線状降水帯が形成され、福岡県や大分県を中心に記録的な大雨となりました。朝倉(福岡県)と日田(大分県)の日降水量は、観測史上1位を記録しました。この大雨により河川の氾濫や建物の浸水被害、土砂災害が発生し、20名を超える犠牲者や行方不明者が出ました(7日現在)。また、鉄道では、九州新幹線や多くの在来線の一部区間が運休となり、高速道路や国道でも通行止めが相次ぎました。以下では大雨の状況や要因について振り返ります。

2.被害状況
  7月5日から6日にかけて、福岡県と大分県のウェザーリポーターから被害状況を報告する「減災リポート」(※1)が1,270通ほど届きました(図1)。福岡県うきは市からは流木が国道を塞いでいるという報告があり、大分県日田市からは道路冠水や土砂崩れなどの被害報告が寄せられました。

7/5 17:53 福岡県田川郡大任町
あふれたです
7/6 6:59 福岡県うきは市
倒木が流れてきて、国道を塞いでます
図1:九州から寄せられた「減災リポート」
※1「減災リポート」はスマホアプリ「ウェザーニュースタッチ」を通して、当社予報センターに寄せられる被害報告です。当社では、被害がいつ・どこで・どんな原因で発生したかを共有し、少しでも被害を軽減することを目的に、自助・共助による減災の取り組みを進めています。減災リポートマップhttp://weathernews.jp/gensai_map/

 

3.大雨の状況
 7月5日、九州北部では激しい雨が降り続き、記録的な豪雨となりました。5日の日降水量は、朝倉(福岡県)で516.0mm、日田(大分県)では336.0mmを記録し、観測史上1位の記録となりました(表1)。また、1時間降水量も朝倉で129.5mm、日田で87.5mmとなり、それぞれ1位、2位の記録となっています(表2)。

表1:7月5日の日降水量(アメダス)
表2:7月5日の1時間降水量(アメダス)

 過去20年における6月・7月の最大日降水量と、観測史上最大となった201775日の日降水量を比較しました(図2)。朝倉、日田の両地点において、過去20年の最大日降水量を大きく上回っていることがわかります。

 

図2:過去20年における6月・7月の最大日降水量と2017年7月5日の日降水量の比較 上:朝倉(福岡県)、下:日田(大分県)

 

 

 朝倉では5日9時頃から雨が降り始め、12時頃から約10時間にわたって激しい雨が継続しました(図4)。ピーク時には、15時38分に129.5mm/h(正時の観測では16時に106.0mm/h)の猛烈な雨が降りました。

図3:5日0時〜6日0時の24時間降水量
(ウェザーニューズ解析雨量)

 

図4:朝倉の1時間降水量(アメダス)

 

 

ウェザーニューズの解析雨量によると、9時には前線による雨が中国地方で降っており、九州北部では雨雲が散在していました。12時頃には九州北部が雨の中心となり、福岡県朝倉市付近で東西に伸びる帯状の強雨「線状降水帯」が発生し始めました。その後、線状降水帯は21時頃まで継続しました(図5)。

図5:ウェザーニューズ解析雨量(左から順に9時、12時、15時、18時の1時間降水量(mm/h))

4. 大雨の要因

4−1.梅雨前線の停滞
 7月4日に台風3号が西日本を通過し、5日には日本海にあった梅雨前線が西日本や東日本までゆっくりと南下しました。梅雨前線は太平洋高気圧と日本海の高気圧に挟まれて、動きが遅くなりました。また、5日は九州北部の付近に梅雨前線が停滞し、前線に向かって太平洋高気圧の縁をまわる暖かく湿った気流(暖湿気流)が流れ込んでいました(図6)。

図6:7月5日15時の気圧配置

4−2.線状降水帯の形成
 佐賀県鳥栖市に設置された独自観測レーダー「WITHレーダー」によって、5日16時半ごろ朝倉市の西側で発生した降水セル(雨粒などの降水粒子を多く含む空気の塊で、レーダーでは塊状の強い反射強度で示される)が東へ移動しつつ、高度7,000m〜10,000mまで発達する様子が観測されました。また、その西側で新たなセルが発生し、東へ移動、ということが繰り返されていました(図8)。このようにして「線状降水帯」が形成されたことが大雨の要因と考えられます。今回のように、降水セルが同じような場所で発生・移動を繰り返して形成される線状降水帯を、バックビルディング型線状降水帯と呼びます。

図7:佐賀県鳥栖市のWITHレーダーの場所と鉛直観測の位置
図8:佐賀県鳥栖市の「WITHレーダー」による反射強度の鉛直断面
(図7の点線が断面の位置。白丸・赤丸・青丸は同一のセルを示す。)

 バックビルディング型の線状降水帯が発生するためには、積乱雲の発生地点で風の強い収束が維持されることが必要です。当時の実況解析(図9)を見ると、大分県と熊本県や、福岡県の北東側と南西側で5度前後の気温差があり、明瞭な前線となっていました。5日午前からの散発的な雨によって前線の北東側で気温が低下し、東シナ海からの南西風がその冷気に乗り上げる形で上昇気流が発生したと推測されます。上空は西風となっており、前線付近で発生した積乱雲はこの風により、東側へと流されました(図10)。また、博多湾付近からの北西風が東シナ海からの南西風とぶつかり、強く収束していました。この風の収束も冷気の形成と合わせて、同じ場所での連続的な積乱雲の発生に寄与していたと考えられます。

図9:気象庁毎時大気解析の地上の気温(色)、風(矢印)、風の収束(等値線)
図10:線状降水帯の発生メカニズム

5. まとめ
 九州北部の大雨は、24時間の降水量が朝倉で516.0mm、日田で336.0mmという観測史上1位の記録的な大雨となりました。ウェザーリポーターからは、河川の氾濫や道路の冠水などの報告が寄せられました。この大雨は、線状降水帯が約10時間にわたり停滞することで発生しました。「WITHレーダー」の解析によると、積乱雲の発生・移動が同じ場所で繰り返される、バックビルディング型の線状降水帯であったことがわかりました。梅雨前線に伴って5日午前に降り出した雨により、福岡県の北東部や大分県で気温が低下し、低温の領域が形成されました。また、福岡県と佐賀県の県境付近で博多湾からの北西風と東シナ海からの南西風が収束していました。これらがバックビルディング型の線状降水帯を維持する要因となっていたと考えられます。

 なお、当社は7月6日に「九州豪雨特設サイト」を開設しました。災害の危険を少しでも早く察知し、減災・防災に繋がるような情報をいち早く発信していきます。
http://weathernews.jp/s/news/kyushu-rain/

 

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