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超大型で上陸した台風21号について

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はじめに
 2017年10月23日に「超大型」で強い勢力の台風21号が静岡県御前崎市に上陸し、関東地方を通過して東海上に抜けました。「超大型」の勢力を保っての台風の上陸は、記録上初めてのことです。西・東日本では、台風接近前の21日頃から秋雨前線による雨が降り、さらに台風が接近、通過したことで、近畿地方から関東地方の太平洋側を中心に大雨となりました。和歌山県の新宮で532.0mm、三重県の小俣(おばた)で473.5mmなど、近畿地方や三重県を中心に記録的な雨となり、和歌山県紀の川市、大阪府岸和田市、奈良県三郷町(さんごうちょう)、三重県名張市、三重県多気町(たきちょう)などでは川の氾濫や土砂崩れが発生して死者や行方不明者が出ました。
 この台風の影響で、22日は九州や四国地方、23日は関東、東北地方の発着便を中心に、900便以上の飛行機が欠航しました。また、東海道新幹線で運転見合わせや立ち往生があった他、滋賀県大津市内のJR湖西線では、暴風の影響により電柱が倒れ、23日と24日は一部区間で連日運休となるなど、鉄道の運休や道路の通行止めが相次ぎ、各地で大きな影響が出ました。

1—1.被害状況:ウェザーリポート
 10月22〜23日の2日間で、合計30,128通の写真付きのウェザーリポートが届きました(図1)。22日は沖縄県〜宮城県、23日は福岡県〜北海道のウェザーリポーターから、河川増水や強風被害、道路冠水などの報告が寄せられました(図2)。特に、近畿地方では、和歌山県紀の川市の土砂崩れ・河川氾濫・浸水被害、大阪府南海本線の橋の陥没や強風被害をはじめ、大きな被害が見受けられました。

図1:ウェザーリポーターから寄せられた被害報告
図2:ウェザーリポートの中でも被害状況を報告する「減災リポート」
(左)10月22日、(右)10月23日

1—2.被害状況:ウェザーリポーター調査
 台風21号による被害状況を調査するため、10月22日6時から23日14時30分にかけて、スマホアプリ「ウェザーニュースタッチ」のユーザーに「雨の被害状況は?」と質問し、“道路冠水”、“土砂災害”、“浸水”、“被害なし”から選択いただきました。全国の19,175人から回答をいただき、976人から道路冠水、68人から土砂災害、76人から浸水の報告がありました(図3)。特に積算降水量が200mmを超えた関東や近畿地方では浸水が目立ちました。
 また、風の被害状況についても同時間帯に全国16,525人に質問し、“大きなものが飛ぶ”、“倒木”、“停電”、“被害なし”から選択いただきました。広い範囲から大きなものが飛んだという報告が寄せられ、最大瞬間風速が30m/sを超えた四国、近畿、関東地方からは倒木や停電といった被害が報告されました。

図3:「雨・風の被害状況は?」の調査結果

2.台風の経路と勢力の推移
 台風21号は10月16日3時に日本のはるか南海上で発生しました。発達しながら太平洋高気圧の縁に沿って西に進み、18日3時には強い勢力に発達しました。その後、海面水温が29〜30度の温かい海上を北上してさらに発達し、21日0時に明瞭な台風の目を持つ非常に強い台風となりました(図4)。

図4:台風21号の経路と海面水温
(経路上の丸は3時間ごとの最大風速。
海面水温は10月18日のデータ)


 北緯30度付近まで北上した22日朝以降は、偏西風の影響や海面水温の低下により衰弱を始めました。台風は偏西風に乗って速度を上げながら北東に進み、23日3時に強い勢力(最大風速40m/s)で静岡県御前崎市付近に上陸しました。その後、暴風域を伴ったまま関東地方を北上し、茨城県沖へ抜け、23日15時に北海道の南東海上で温帯低気圧に変わりました。
 台風21号は、強風の範囲が非常に広く、20日15時から温帯低気圧に変わるまで、風速15m/s以上の強風域の範囲が半径800kmを超える「超大型」の台風となりました。「超大型」の勢力を保っての台風の上陸は、記録上初めてのことです。これは、海面水温が非常に高く(30度前後)、台風が発達しやすい条件であったことに加え、中国大陸の高気圧から吹き出した寒気(季節風)による強風エリアが本来の台風の強風域と合わさったことによるものと考えられます(図5)。

図5:台風の強風域の半径
カラー:地上風速、矢羽根:地上風、紫の等値線:海面気圧、黒矢印:強風半径(気象庁発表)、
高:高気圧中心、右図中の青破線矢印は高気圧からの寒気の流れ

3.雨の特徴
 台風が日本列島に接近、通過した21日から23日にかけて、西・東日本で大雨となり、中国・四国地方から東北地方の各地で48時間に200mmを超えました(図6)。中でも、近畿地方では、22日の日降水量についても200mmを超えたところが多く(図7)、日降水量の記録を更新した地点は20地点を超えました。

図6:10月21日9時から23日9時の48時間積算雨量
(ウェザーニューズ解析雨量、実線は台風の経路)
図7:10月22日の近畿地方の日降水量
(カラーはウェザーニューズ解析雨量、
数値はアメダスの日降水量)


 紀伊半島南東部では、日降水量が300mmを超えました。特に、和歌山県の新宮では532.0mm(48時間で888.5mm、ともに観測史上1位)を記録し、土砂災害や河川氾濫などで82名が亡くなった2011年9月の台風12号の雨量を超える記録的な大雨となりました。
 大阪府岸和田市、和歌山県紀の川市、和歌山県新宮市、奈良県三郷町、三重県名張市、三重県多気町では河川氾濫や浸水、土砂崩れが発生しましたが、それぞれの最寄りの観測地点(葛城山(かつらぎさん)、新宮、八尾(やお)、名張、小俣)の雨量を見てみると、これらの地点においても観測史上1位、あるいは2位の大雨であったことがわかります(表1)。

表1:10月22日の日降水量の記録
(近畿地方と三重県の観測史上1位を記録したアメダス観測地点、
および河川の氾濫した名張の日降水量)

 地点日降水量
[mm]
観測
史上
 地点日降水量
[mm]
観測
史上


名張293.02位

温泉209.01位
小俣473.51位

兎和野
高原

187.51位
阿児292.51位八鹿181.01位
藤坂峠324.01位

奈良196.51位



長浜

187.51位田原本214.51位
東近江217.51位葛城256.51位


睦寄280.01位五條254.51位


206.51位吉野270.01位
八尾183.01位玉置山428.01位
関空島230.0 1位

  和歌山県  

葛城山274.5 1位
熊取281.5 1位かつらぎ219.0 1位

河内
長野

263.5 1位高野山352.5 1位
    新宮532.0 1位

 これらの地点における降水量の時間経過を見ると、台風の接近した22日夜、小俣(三重県)や新宮では最大で1時間に60mm程度の激しい雨が降り、他の地点では10〜30mm/hのやや強い雨が22日4時頃から24時間近く継続していました(図8)。

図8:近畿地方と三重県の主な被害地点近隣アメダスの降水量

 21日から22日にかけて、本州の太平洋側には秋雨前線が停滞しており、そこに台風が接近しました(図9)。台風の周りをまわる湿った空気が停滞する秋雨前線に流れ込み続けたことで、このような強い雨が継続したと考えられます。

図9:1時間降水量と秋雨前線、台風の位置
(1時間降水量はウェザーニューズ解析雨量、秋雨前線や台風の位置と経路は気象庁より)

 また、山梨県や関東地方の埼玉県、東京都、神奈川県を中心に多くの地点で22日6時から23日6時までの24時間降水量が200mmを超える大雨となりました(図10)。

図10:関東地方と山梨県の22日6時から23日6時までの積算雨量 (ウェザーニューズ解析雨量)

 21日夜までは1〜2mm/hの雨でしたが、22日の未明から23時頃までは秋雨前線により5〜15mm/h程度の雨が続き、その後、23日6時頃まで台風の接近、通過により最大50mm/h程度の激しい雨が降りました。(図11)

図11:関東地方と山梨県のアメダスの降水量

 この大雨により、東京都の多摩川や中川では水位が上昇しました。ウェザーリポーターから送られてきた台風動画リポートから、川が増水し濁流が流れている様子や、遊歩道まで水に浸かっている様子を把握することができました(図12)。

 

図12:10月23日6:56 東京都葛飾区 ライナスさん
中川の遊歩道が水没。あるはずのベンチ、花壇、椅子、が見当たらない。
ここまで水位が上がったのは初めて見た。
動画はこちらから
その他の台風動画リポートはこちらから

 

4.風の特徴
 台風が近くを通過した四国、近畿、東海、関東地方の沿岸部を中心に、最大瞬間風速が30m/sを超える暴風が吹きました。北陸地方でも台風の接近に伴い、暴風となりました(図13)。

図13:21日0時から23日20時の最大瞬間風速
(橙色の線は台風の経路)

 風による被害の発生した大阪市、神戸市、福井市、大津市のアメダスでは、23日0時から3時の間に最大で25〜45m/s程度の暴風が吹きました(図14)。住宅の半壊や転倒による怪我が発生した神戸では、観測史上3位となる45.9m/s(23日0時40分、北北西)を記録しました。また、大津市ではJR湖西線で電柱が倒壊するなどの大きな被害が出ましたが、その現地に近い南小松では観測史上1位となる44.2m/s(23日0時40分、北北東)を観測しました。

図14:神戸、大阪、南小松、福井の最大瞬間風速の時間変化(アメダス)


 神戸や南小松は北西側に山地が隣接しており、北寄りの風が吹く場合にそれぞれ「六甲おろし」、「比良おろし」というおろし風が発生しやすい地形であるため、台風21号が紀伊半島に最接近した0時から3時には、他の地域よりも強い風が吹きやすくなったと考えられます(図15)。
 また、関東地方では23日5時頃から8時頃にかけて台風が通過し、東京では23日5時20分に最大瞬間風速29.9m/s(南南東)を観測しました。

図15:近畿地方の地形(カラーは標高)と
10月23日1時の地上の風(気象庁毎時大気解析)

まとめ
 10月23日に静岡県から関東地方を通過した台風21号は、西日本から東日本の広範囲に大雨や強風をもたらしました。特に、紀伊半島南東部では1日の降水量が300mm、近畿地方では200mmを超える記録的な大雨となり、土砂崩れや河川の氾濫が多数発生しました。また、関東地方でも、埼玉県、東京都、神奈川県を中心に200mmを超える大雨となり、浸水などの被害が出ました。この大雨は台風本体の接近、通過だけでなく、台風の接近前から本州の南海上に秋雨前線が停滞し、台風の周りをまわって湿った空気が継続的に流れ込んだことによると考えられます。

 また、台風の通過に伴って、四国、近畿、北陸、東海、関東地方の沿岸部を中心に広範囲で最大瞬間風速が30m/sを超える暴風が吹きました。神戸では45.9m/s(観測史上3位)、南小松では44.2m/s(観測史上1位)の暴風が吹き、住宅の半壊、転倒による怪我、JR湖西線の電柱が倒壊するなど、多くの被害がありました。勢力の強い台風の接近により広範囲で暴風が吹いたことに加え、山地に隣接した平地というおろし風の発生しやすい地形が影響したと考えられます。  今後、当社では予測精度の向上に努めるとともに、災害の危険を早く察知し、減災・防災に繋がる情報をいち早く発信していきます。



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