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ウェザーニューズ、「北極海の海氷まとめ2017」を発表

北極海の海氷域面積、冬季は過去最小を記録、夏季は6番目に

~独自衛星「WNISAT-1R」で北東航路の開通を鮮明に確認〜

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 株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)のグローバルアイスセンターは2017年の北極海の海氷に関する振り返りを発表しました。北極海の海氷域面積は毎年2〜3月に年間最大、9月に最小となります。今シーズンの年間最大面積は今年3月に記録した1380万㎢で、1979年の観測開始以来、同時期の海氷域面積としては最小となり、昨年に続いて最小記録を更新しました。また、9月に観測された年間最小面積は観測開始以来6番目に小さい447万km2でした。
 今シーズンの北極海航路は、北東航路(ロシア側)が昨年より3週間早い9月3日頃に開通(※)した一方、北西航路(カナダ側)はカナダ多島海の海峡の一部に海氷が残り、開通には至りませんでした。
 当社は2011年より北極海を航行する船舶の安全運航を支援する『Polar Routeing Service』を提供しています。今シーズンは独自の気象・海象観測衛星「WNISAT-1R」から得られる詳細な海氷データのモニタリングを試験的に開始し、北東航路の開通を鮮明に確認できました。ウェザーニューズは海氷の観測頻度を高め、高品質なサービス提供を目指していきます。
※開通の定義:海氷域に入ることなく全航路を通ることができると衛星観測データから判断される状況。

◆冬季は観測史上最小、夏季は過去6番目の小ささ、北極海航路は北東航路のみ開通
 北極海の海氷域面積は毎年2〜3月に年間最大、9月に最小となります。今年は3月に年間最大面積が1390万㎢となり、同時期の面積としては昨年に続き観測史上最小を記録しました。ただ、その後の融解のペースは例年と同程度で、9月に観測された年間最小面積は1979年の観測開始以来6番目に小さい447万km2となりました。
 今シーズンの北極海航路は、ロシア沿岸域での海氷の融解が昨年を上回るペースで進んだ影響で、北東航路(ロシア側)は昨年より3週間早い9月3日頃に開通しました。一方、北西航路(カナダ側)は、カナダ多島海の海峡の一部に海氷が残り、開通には至りませんでした。

図1:北極海航路の開通期間
(左)北東航路、(右)北西航路
図2:2008年以降の海氷域面積の推移


表1:北極海の海氷域面積の記録

数値は最新の方法で再計算しており、過去に発表した
プレスリリースと値が異なる年があります。


◆独自の気象・海象観測衛星「WNISAT-1R」で北極海航路の開通を確認
 北極海航路の中間には、最大の難所と言われるヴィルキツキー海峡(ロシア)があり、北東航路の航海にはここの海氷の融解が重要なポイントになります。
 図3は当社が今年7月に打ち上げた独自衛星「WNISAT-1R」が撮影した初観測画像(ファーストライト)で、7月24日(協定世界時に基づく日付)にヴィルキツキー海峡を撮影したものです。この時、海峡にはまだ海氷が残っており、北極海北東航路が開通していないことが分かります。一方、同衛星が9月16日に撮影した図4では、ヴィルキツキー海峡周辺に海氷がなく、北東航路の開通を鮮明に確認することができました。

図3:「WNISAT-1R」で撮影した
ヴィルキツキー海峡周辺の画像
(撮影日時:7/24 19:45 UTC )
図4:「WNISAT-1R」で撮影した
ヴィルキツキー海峡周辺の画像
(撮影日時:9/16 1:04 UTC )
※UTC:協定世界時。+9時間で日本時間


 グローバルアイスセンターでは、北極海の海氷状況のモニタリング及び予測のために、国内外の機関の人工衛星の観測データを取得・分析しています。しかしながら、北極海の安全な航海を支援するためにはより多くの海氷データが必要で、既存の衛星観測網では観測頻度が十分ではない等の課題がありました。そこで当社は海氷観測をミッションとする超小型衛星の開発を進め、今年7月に独自の気象・海象観測衛星「WNISAT-1R」を打ち上げ、海氷の試験観測を開始しました。

 図5は、アメリカの地球観測衛星「Terra」が、図3と同日に撮影したものです。「WNISAT-1R」が図3を撮影した時とは対照的に、「Terra」が北極海上空を通過した時は広い範囲が雲に覆われており、海氷観測に厳しい気象条件だったことが分かります。
 海氷の撮影は雲の有無に大きく左右されるため、観測衛星の増加によって観測頻度が増えると、海氷が鮮明に映った画像データを取得できる確率が高くなります。複数の衛星から得られるデータを活用することで、より詳細な海氷の状況を把握できるようになります。

図5:「Terra」で撮影した
ヴィルキツキー海峡周辺の画像
(撮影日時:7/24 12:10 UTC )


 今後、北極海は資源開発や北極海航路の有効性の観点からさらなる利用が見込まれます。当社はこれまでの北極海におけるサービスノウハウに加え、独自衛星による観測データを用い、北極海を航行する船舶の安全・効率運航を支援してまいります。

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