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1月22日、南岸低気圧に伴う関東地方の大雪

はじめに

 2018122日から23日未明にかけて、本州の南海上を低気圧が通過し、20142月以来、4年ぶりに東京で20cmを超える積雪を観測するなど、関東地方を中心に大雪となりました。

 この積雪の影響で、高速道路では通行止めが相次ぎ、東京都内では雪の影響とみられる交通事故が800件以上発生しました。また、鉄道のダイヤ乱れや特急列車の運休が発生し、帰宅時間帯には混乱が見られました。空の便については、22日から23日の2日間で成田・羽田空港を中心に国内線の400便以上が欠航となり、成田空港では滑走路が閉鎖して約9,900人が空港で一晩を過ごすなど大きな影響が出ました。

1.大雪による帰宅への影響

 今回の首都圏の大雪について、当社や気象庁は事前に予報をしており、22日14時30分には気象庁から東京に大雪警報が発表されました。しかし、帰宅時間帯に混乱が見られたことから、当社は、早めの帰宅を試みた人が実際にどの程度いたのか把握するため、帰宅実態調査を実施しました(図1)。

 23日6時から10時にかけて、スマホアプリ「ウェザーニュースタッチ」の関東地方のユーザーに「早めの帰宅を試みましたか?」と質問しました(“指示があり早退”、“自ら早退”、“気持ち早めor普段通り”、“その他”から選択)。3,003人の回答から、4割以上が早退し、4割が普段通りに帰宅していたことがわかりました。

 普段通りに帰宅した方からは、「すでに電車も混んでいていつもの倍の時間がかかりました。(東京)」、「高速に乗ったら出口のノーマルタイヤがスタックしてて9時間高速の上で止まってました。早朝帰ってきました。(神奈川)」など、時間がかかったという回答が目立ちました。

 一方、自ら、あるいは会社からの指示で早めに帰宅した方からは、「早めに退社しましたが、やはり電車は遅延していました。もう少し遅かったら、危うく帰宅困難になるところでした。(東京)」、「午後2時に指示が出てその時間は電車は平常運転だったので無事帰宅。(神奈川)」など、無事に帰宅できたというコメントが多く寄せられました。
 また、“その他”と回答した方については、「有休をとりました。(東京)」「家にいました。(埼玉)」など出社しないことを選んだ場合と、「職場に泊まった。(茨城)」、「泊まる予定で来た。(東京)」など帰宅しないことを選択した場合にわかれました。

 雪に不慣れな関東地方では、少しでも積雪すると車の事故や交通混乱が発生するリスクが非常に高くなりますので、一人ひとりが事前対策をとることが混乱回避につながります。

2.積雪状況

 1月22日、当社には合計24,346通のウェザーリポートが寄せられました。そのおよそ半分を占める10,945通が関東地方から、約1/4にあたる6,413通が東京都から届きました。(図2)。

1/22 14:09 神奈川県横浜市鶴見区 うらんちゃんさん「現在0.7℃、気温どんどん下がってきています。水分の多い雪のようで、道路はビチョビチョです。」

 

1/22 15:16 東京都小金井市 あく太郎さん「職場で帰宅命令が出まして、帰ってきました。すんごい勢いで降っています。」

 

1/22 17:53 東京都豊島区 西武池袋線池袋駅 ロランさん「絶賛遅延中。改札規制中。」
1/22 22:04 東京都豊島区巣鴨 まあさん「雪がかなり積もりました。ブーツの足首まですっぽり埋まります。」
1/22 23:19東京都江東区 HR38さん「箱崎でスタック。帰るのを諦めてもうすぐ3時間。ほとんど動きません。」
 
1/22 23:38東京都練馬区 ねこすけさん「家の前に道を作ろうかな。遠くで救急車が。(積雪21cm)」
 
1/22 23:53 東京都新宿区 らいさん「結構積もりました。」

 

1/24 06:48 東京都渋谷区 エド・ストレイカーさん「首都高速3号渋谷線。6:40現在 通行止継続中です。」
 

図2:ウェザーリポーターから寄せられた報告

 

図3:アメダス東京の積雪深が20cmを上回った 22日21時〜23日10時の積雪報告 (アメダスの数値は22〜23日の最深積雪を示す。)

 

 当社は、積雪を定量的に把握するため、22日14時から23日24時にかけて「積雪の深さは?」と問いかけ、全国8,085人に定規で測っていただきました。アメダス東京の積雪深が20cmを上回った時間の積雪分布を見ると、東京湾の沿岸では5cmから15cm積雪したところが多く、沿岸から約10km以上内陸側になると15cmや20cmを超える積雪になっている様子がわかります(図3)。このように、ウェザーリポーターの報告から、都心周辺での積雪を詳細に把握することができました。

 

 

 

 

図4: レーダー、アメダス、ウェザーリポートを用いて解析した最深積雪

このウェザーリポーターからの報告とアメダスやレーダーの観測データを合わせて積雪を解析したところ、関東平野では西部の内陸部を中心に20cmを超える積雪となったことがわかりました(図4)。

 

 

 

 

 

 

 

 アメダスによる日最深積雪は関東地方の都市部の多くの地点で記録を更新しました。東京の積雪は平成に入ってから2番目に多い23cmとなり、その他の都市でも10cm以上の積雪を記録しました(表1)。



表1:関東地方の主要地点における2018年1月22日と2014年2月の日最深積雪の比較

  アメダス
地点
  2018年1月22日
  2014年2月
 日最深積雪
記録
※平成元年以降 
 日最深積雪
 記録
※平成元年以降 
東京
 23cm
 2位
 27cm
(2月15日)
 1位
熊谷
 19cm
 5位
 62cm
(2月15日)
 1位
秩父
17cm
12位 
 98cm
(2月15日)
 1位
横浜
18cm 
 5位 
 28cm
(2月15日)
 1位
千葉
10cm 
 6位 
 33cm
(2月9日)
 1位
前橋
29cm 
 3位 
 73cm
(2月15日)
 1位
宇都宮
27cm 
 3位 
 32cm
(2月15日)
 1位
つくば
(舘野) 
15cm 
 6位 
 26cm
(2月9日)
 1位
 水戸
19cm 
 2位 
 14cm
(2月9日)
 7位

 東京で20cmを超える積雪を観測したのは、27cmを記録した2014年2月15日以来、約4年ぶりのことです。2014年2月は、8日と14〜15日の2度にわたって南岸低気圧の影響で大雪となっており、関東地方の内陸部の熊谷で62cm、秩父で98cmという積雪を記録しました。

 

3.南岸低気圧の特徴

 1月21日に中国大陸で発生した低気圧は、ゆっくりと発達しながら東シナ海から九州・四国地方の南海上を東へ進みました(図5)。22日21時には関東地方の南の八丈島付近に達し、中心気圧は996hPaとなりました。21日21時には1016hPaでしたので、24時間で20hPa降下し、爆弾低気圧に近いような急速な発達となりました(表2)。この低気圧は、発達しながら八丈島付近を通過するルートを通り、関東地方に大雪をもたらす典型的な南岸低気圧であったと言えます。

表2:南岸低気圧の中心気圧の変化

 2014年2月の大雪の時は、今回に比べて熊谷や秩父などの内陸部を中心に積雪が大幅に多くなりました(表1)。日降水量も今回とは大きく異なり、熊谷では今回は12.5mmでしたが、2014年2月15日には114.0mmにもなりました。低気圧のコースを比較すると、2014年2月の2つの低気圧の方が今回の低気圧より南で発生し、関東甲信地方へより接近していることがわかります(図5)。このため、より多くの水蒸気が関東地方に流れ込み、結果としてより多くの降水、そして積雪をもたらしたと推測されます。

 

4.大雪の推移

 関東地方では22日6時頃から埼玉県や東京都を中心に弱い雨や雪が降り始めました。雨や雪の範囲は昼頃にかけて広がり、次第に強さも増していきました。12時には茨城県の中央から千葉北西部、東京23区、神奈川の沿岸部にかけてを境目に、内陸側では雪、海側では雨となりました。この境界線は、地上気温が約1〜2℃の場所と対応しています。南岸低気圧の接近とともに寒気が南下し、22日18時には関東のほぼ全域が雪になりました(図6)。
 

図6:ウェザーリポートの天気報告(上段)とアメダスの気温(下段)
(上段の赤線はおよその雨雪の境界線)

 積雪23cmとなった東京では、22日早朝から弱い雨や雪が降り出し、8〜9時には雨や雪の報告が東京都のウェザーリポートの過半数を占めるまで増加しました(図7)。それとともに、22日早朝には約4℃であった気温が下がり始めました(図8)。気温の低下と同時に湿度が上昇していることから、この気温低下は主に、雨の蒸発や雪の融解・昇華によって空気中の熱が奪われたことによると考えられます。12時には気温が1℃となり、雨は次第に雪に変わりました。その後、深夜にかけて降水が続き、24時間降水量は24mmとなりました。積雪も1時間に2〜3cmの速さで増加し、最深積雪は23cmに達しました。

図7:東京都におけるウェザーリポートの各天気の割合(1月22日6時〜12時、前10分間の集計)
図8:アメダス東京の気象状況の推移(1月22日1〜24時)

 関東の南海上には22日の朝から局地的な前線が形成されていました(図9左)。8時頃から関東地方で降り出した弱い雨や雪は、この局地的な前線に伴うものと思われます。12時頃にかけて降水により拡大した関東地方の冷気は、低気圧の接近に伴って北寄りの風が強まることでさらに南下し(図9中央)、18時には高度約250mで0℃以下の冷気が関東の南岸に達しました(図9右)。

図9:高度約250m(975hPa)の気温と風
(気象庁MSMモデル実況解析、点線は解析される局地前線、「低」は南岸低気圧の中心)

 この地上付近の北寄りの風の強まりは、東京都調布市に設置した独自気象レーダー「WITHレーダー」の観測でも捉えることができました。12時0分には地上付近の北寄りの風の層は厚さ1000m程度でしたが、18時1分には2000m程度まで厚くなり、風速もより大きくなりました(図10下段)。また、18時1分には高度2000mから6000mにかけて鉛直方向に伸びた雪雲が見られました。これは、低気圧に伴う温暖前線の北側の層状雲の上層に見られる「生成セル(generating cell)」と呼ばれる雲と思われます。生成セルは雪粒子の急速な成長をもたらすことから、この時間帯の強い降雪に寄与していた可能性があります(図10右列の黄点線)。

図10:調布WITHレーダーが捉えた図11A-B間の水平鉛直観測データ
(上段が反射強度、下段がドップラー速度(青:レーダーAに近づく風、赤:Aから遠ざかる風、右列の高度2000m以上の赤い部分は実際にはレーダーに近づく風を示す))。右列の黄点線で囲った部分は「生成セル」を示す。
図11:調布WITHレーダーの設置場所(A)と観測の水平位置(A-B)

5.まとめ

 1月22日、南岸低気圧の通過に伴い、東京都、埼玉県、群馬県を中心に広い範囲で20cm以上積雪し、関東地方では2014年2月以来、4年ぶりの大雪となりました。この大雪の要因としては、2014年2月の南岸低気圧と同様に急速に発達したことで、東京で24時間に24mmのまとまった降水をもたらしたこと、また、低気圧接近前からの局地的な前線に伴う降水や接近した低気圧による寒気の南への引き込みにより、関東地方のほぼ全域が1〜2℃以下の冷気に覆われたことが考えられます。これらは関東地方に大雪をもたらす南岸低気圧に共通した特徴であり、今回の低気圧もその典型的な南岸低気圧であったと言えます。

 なお、南岸低気圧による大雪は例年、1月から2月にかけて多く発生します。1月25日には平成で1番の最強寒波が襲来するなど関東地方は平年より寒く、南岸低気圧が接近すると雪が降る可能性が高いため注意が必要です。


 今回の大雪では、当社や気象庁が事前に大雪を伝えていましたが、帰宅時間帯に交通の混乱が見られました。雪に不慣れな関東地方では、一人ひとりの事前対策が非常に重要になります。当社は、帰宅実態調査を通して知りえた情報をふまえて、次の雪に備えてできることをウェザーリポーターとともに模索していきます。

 

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