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台風24号による強風と大雨について

はじめに

台風24号は2018年9月30日20時頃、和歌山県田辺市に非常に強い勢力で上陸し、近畿、東海、甲信、関東、東北地方を通過しました。台風の中心が通過した近畿地方南部や東海地方、関東地方では40m/sを超える最大瞬間風速が観測されました。各地で屋根や看板が吹き飛ぶ、窓ガラスが割れるといった建物損壊の被害がみられたほか、中部電力管内では119万軒、東京電力管内では51万軒を超える大規模な停電が発生しました。鉄道では、東海道・山陽新幹線をはじめ、多くのJR線や私鉄が運休となりました。JR東日本は今回初めて、台風直撃前に首都圏の在来線を全てストップさせる大規模な計画運休を実施しました。空の便では、29日から10月1日にかけて少なくとも国内線の1,962便、30日だけで1,293便のフライトが欠航となりました。首都高速道路では、補修作業用の足場が崩れるといった被害が発生しました。また、大雨の影響で、九州や中国地方で河川の氾濫や土砂崩れが発生し、死者が出ました。

1.強風と停電

台風の影響で、大規模な停電が発生しました。当社は停電の状況を詳しく調べるため、30日13時から1日8時にかけて、全国のウェザーリポーターに停電の様子について質問し、「停電していない」、「完全に停電している」、「瞬間停電」の3つから選択して回答いただきました。約3万通の報告をマッピングしたところ、台風の進行方向に対して右側に位置する関東や東海地方に完全停電の被害が集中していることがわかりました(図1)。

▼停電の被害報告(アニメーション)
https://weathernews.jp/s/topics/201810/030005/?fm=tp_index
図1:ウェザーリポーターによる停電報告

また、最大瞬間風速の分布とウェザーリポーターからの停電報告を比較してみると、最大瞬間風速が25m/sを超えた地域で「完全に停電している」という報告が多くみられました(図2)。このことから、関東や東海地方では最大瞬間風速が25m/sを超える場合に停電のリスクが高まると言えそうです。

図2:9月28日12時~10月1日12時の最大瞬間風速と
30日13時〜1日8時の「完全に停電している」という報告の分布(赤線は台風24号の経路)

台風24号が日本列島に接近した9月28日から10月1日にかけて、全国の35地点で最大瞬間風速40m/sを超える非常に強い風を観測しました(図3)。

図3:台風24号接近時(9月28日12時〜10月1日12時)における最大瞬間風速(凡例は「10-15」であれば10m/s以上、15m/s未満を示す。赤線:台風の経路 赤×印:台風の中心位置)

期間を通して最も強く吹いたのは与論島(鹿児島県)で、29日に観測史上2位となる最大瞬間風速56.6m/sを記録しました。沖縄県と鹿児島県では、10地点で50m/sを超える風を観測し、台風の進行速度が遅かった沖縄付近では29日、一日を通して風の強い状態が続きました。

また、関東や東海地方では、東京で観測史上3位となる最大瞬間風速39.3m/s、八王子で同1位となる45.6m/s、浜松で同2位となる41.9m/sを記録しました(図4)。

図4:主要都市の最大瞬間風速
(緑色:台風21号、オレンジ色:台風24号)

 

2.台風の経路

台風24号は9月21日にマリアナ諸島近海で発生しました。発生後は西に進みながら勢力を強め、25日0時に猛烈な勢力である中心気圧915hPa、最大風速55m/sに達しました。その後、中心気圧950hPa、最大風速45m/sの非常に強い勢力でゆっくりと北上し、南西諸島付近を通過しました。台風は非常に強い勢力を保ったまま、30日20時に和歌山県田辺市に上陸しました。上陸後もそのまま北東へ進み、東海、甲信、関東、東北地方を通過して太平洋へ抜け、10月1日12時に北海道の東海上で温帯低気圧に変わりました(図5)。

図5:台風24号と台風21号の経路
(経路上の丸の色は中心気圧、灰色の実線は台風21号、
海上の色は9月30日の海面水温 (気象庁))

3.強風の要因

本州付近では、台風の移動速度が50km/hから80km/h程度まで上がりました。台風の進行方向の右側(危険半円)では、台風本来の風に移動速度が加わるため、左側より強い風が吹きます。今回も、最大瞬間風速が40m/sを超える地点は台風の進路の右側(東側)に集中しました(図3)。約1ヶ月前に上陸した台風21号の際には大阪周辺が進路の東側に入り、40m/sを超える暴風となりましたが、今回は進路の西側に入ったため、大阪の最大瞬間風速は17.5m/sで暴風とはなりませんでした。

図6:浜松、東京の瞬間風速の時間変化

記録的強風となった浜松や東京では、40m/s前後の著しい瞬間風速が30分以内の短時間で起きていました(図6)。その時の気圧を見ると、台風の中心が浜松や東京の北西側に接近し、10kmあたりの気圧傾度が1.3〜1.7hPa程度に大きくなっていました(図7)。台風は60〜70km/hの速い速度で北東へ移動していましたので、台風中心の南東側では台風本来の風に加えて15〜20m/s程度強い風が吹いていたことになります。つまり、大きい気圧傾度と速い移動速度が東海や関東地方の記録的強風の要因と言えます。

図 7:台風通過時の東海、関東地方の降水強度と海面気圧
(降水強度:気象庁レーダー [mm/h]、海面気圧:気象庁地上気象観測 [1hPa毎]、星印は気象庁解析の台風位置)

 

4.大雨について

9月29日から30日、沖縄から東海地方にかけての広い範囲で積算雨量200mm以上を観測し、多いところでは400mmを超える大雨となりました。30日の日降水量は、高知県の鳥形山(とりがたやま)で435.5mm、愛媛県の成就社(じょうじゅしゃ)で420.0mmを記録しました。鳥取県では30日、塩津(しおつ)212.5mm、青谷(あおや)241.0mm、倉吉218.0mm、茶屋204.0mmの4地点で日降水量の記録を更新しました(図8)。

図8:9月29日0時〜30日24時の積算雨量(mm)
(ウェザーニューズ解析雨量。黒線は台風の経路、
X印は3時間ごとの台風の中心位置を示す)

 また、1時間降水量については、全国の56地点のアメダスで50mm/hを超える非常に激しい雨を観測しました。特に、宮崎県の高鍋、和歌山県の新宮と潮岬では、80mm/h以上の猛烈な雨を記録しています。

5.高潮について

台風24号が非常に強い勢力を保ったまま、接近、上陸し、台風の中心付近や進行方向の右側で高潮が発生しました。名古屋では30日21時34分頃、221cmの潮位を記録しました(図9)。高潮となった理由としては、台風の中心が伊勢湾のすぐ北を通るような経路をとったことで、南寄りの風による吹き寄せ効果が大きくなったことに加え、満潮時刻に近いタイミングで接近したことが挙げられます。

図9:台風21号と台風24号時における最大潮位
(緑色:台風21号、オレンジ色:台風24号)

台風21号の際も名古屋では204cmの潮位を観測しています。そのときの経路は、今回よりも名古屋から離れていました(図10)が、台風が南から北へ進み、吹き寄せ効果を大きくする南寄りの風が伊勢湾で長時間継続したことで今回と同程度の高潮を引き起こしたと考えられます。

大阪でも最大で131cmまで潮位が上昇しましたが、台風21号の時(329cm)ほどにはなりませんでした。台風21号時と比較すると、台風24号の進路は大阪湾よりもやや南を通ったため吹き寄せ効果が大きくならず、顕著な高潮にならなかったとみられます。

図10:台風経路拡大図

 

まとめ

 台風24号は西日本から東日本を縦断し、大規模な停電や道路、鉄道、空の便への大きな影響が発生しました。約3万通のウェザーリポートによると、関東地方や東海地方など、台風の進路の東側の地域で停電が非常に多く発生し、これらの地域は最大瞬間風速が25m/sを超えた地域とおよそ対応していました。

 浜松で観測史上2位となる最大瞬間風速41.9m/s、東京で同3位となる39.3m/sなど、東日本の太平洋側では記録的な強風が吹きました。この強風は、60〜70km/hの速い速度で通過した台風の危険半円(経路の東側)に入り、また、台風中心付近の気圧傾度が特に大きい部分が通過したことが要因と考えられます。

 名古屋では台風が満潮時刻近くに通過し、南側に開けた伊勢湾に強い南風が吹いて、潮位が221cmとなる高潮が発生しました。台風21号の際に大規模な高潮による被害の発生した大阪周辺は、今回は台風の経路の西側に入り、吹き寄せ効果は小さく、顕著な高潮にはなりませんでした。

 

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