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株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)は、2020年に東京で開催される国際スポーツ大会を見据えて、選手・チームの戦略策定や観客の暑さ対策に活かせる気象データを収集・分析するため、マラソン・競歩・トライアスロン・セーリング・ラグビーなど各競技会場での事前観測を開始しました。マラソンコース周辺での観測は、2020年の実用化を目指す1〜5mメッシュの超高解像度「都市気象予測モデル」の本格的な検証も兼ねており、8月2日にウェザーニューズと筑波大学が協力して、このモデルの検証としては初となるコース周辺での観測を実施しました。今後は、その観測データを用いて、日陰の位置や、気温・暑さ指数、ビル間を吹き抜ける風の流れが正確に表現されているかなどを検証し、実用化に向けた調整を進めていきます。
当社は、日本代表チームにとって気象が大きなアドバンテージになるよう、最良の準備につながる競技会場の気象データを蓄積・提供していくとともに、2020年の夏までに観客の熱中症対策にもつながる世界トップレベルの予報技術の実用化に取り組んでいきます。
今夏がラストチャンス、トライアスロンなど各競技の会場周辺で観測
ウェザーニューズのスポーツ気象チームは3年前から競技会場周辺で観測を毎年実施しており、ラストチャンスとなる今年も夏の現地観測を開始しました。7月30日7時、スポーツ気象チームはトライアスロンのスイム(水泳)1.5km、バイク(自転車ロードレース)40km、ラン(長距離走)10kmのコースを競技時間に合わせて移動しながら観測しました。最初にお台場の海水温を計測した後、携帯観測機で地上1.5mの気温、湿度、WBGT、風向、風速、路面温度を観測しました。また、選手が日向/日陰の位置をイメージしやすいよう、コース周辺の動画を撮影しながら移動しました。この日の競技想定時間(7:30〜9:30)におけるコース周辺の気温は、朝にも関わらず平均気温32.9度、最高気温38.8度となり、観測スタッフが熱中症になりそうなほど気温が上昇しました。
7月31日は競歩、8月2日はマラソンコース周辺で観測を実施し、8月4日には2回目のトライアスロンの観測を予定しています。今後はマラソン、セーリング、ラグビーなど約10の競技会場で観測を繰り返し、9月にかけて選手目線の気象データの収集を続けていきます。
「都市気象予測モデル」をマラソンコースで検証
東京のビル街を走るマラソンコース上の詳細な気象状況を予測するため、当社は2017年9月より筑波大学計算科学研究センター日下博幸教授と「都市気象予測モデル」の実用化に向けた共同研究を行っています。
8月2日に実施したマラソンコースの観測は、このモデルの検証を兼ねており、スポーツ気象チームの移動観測チーム、予報センターと筑波大学による定点観測チームの2手にわかれて観測しました。
移動観測チームは、スポーツ気象チームの浅田らが競技時間に合わせて朝6時に新国立競技場をスタートし、携帯観測機を用いて日向/日陰の条件で気温、湿度、WBGT、風向、風速、路面温度を5kmごとに観測し、選手が日向/日陰をイメージしやすいよう道路の動画を撮影しながら42.195kmをおよそ3時間かけて移動しました。
一方、定点観測チームは、「都市気象予測モデル」の検証をメインミッションとしており、予報センターの坂本らと筑波大学の学生がコース周辺の4エリアにわかれて、朝7時から30分ごとに日向/日陰の条件で気温、湿度、WBGT、風向、風速、路面や建物の表面温度を観測しました。
当日は晴れて朝6時から30度を超え、移動観測チームが9時までに観測したコース周辺における路上の日向の最高気温は33.6度、WBGTは30.8度となりました。また、定点観測チームが9時までに観測した西新橋エリアの路上の日向の最高気温は32.3度、公園の日向の最高気温は31.4度となり、道路と公園では約1度の差がありました。
参考:2020年夏までに「都市気象予測モデル」の実用化を目指す
「都市気象予測モデル」は、1〜5mメッシュの超高解像度で建物の影響を反映し、都市部の気温・暑さ指数・風向・風速・湿度などをシミュレーションする次世代の予測モデルです。
このモデルは筑波大学計算科学研究センター日下博幸教授の研究室で開発され、当社と共同で実用化に向けた開発と検証を進めています。実用化できれば、都市部の路地の気温・湿度や日陰の位置、ビル間を吹き抜ける風など、建物の影響まで表現した世界最高レベルの予測を提供することができます。
当社はこの技術を2020年夏までに実用化し、マラソンとトライアスロンのチーム支援だけではなく、観客の熱中症対策にも活用していきたいと考えています。