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ウェザーニューズ、「北極海の海氷傾向2020」を発表

北東航路は8月中旬、北西航路は9月中旬に開通する見込み

~シベリアで続く異例の高温、北東航路の海氷融解スピード上がる~

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 株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)のグローバルアイスセンターは、2020年の北極海の海氷傾向を発表しました。現在、北極海の海氷は例年並みのペースで融解が進行していますが、6月20日にシベリア北部ベルホヤンスクで観測史上最高の38度が記録されるなど、今年はシベリア周辺で異例の高温が続いているため、今後は北東航路(ロシア側)周辺の海氷の融解が早く進むことが予想されます。今夏の北極海航路の開通は、北東航路は8月中旬から、北西航路(カナダ側)は9月中旬からとなる見込みです。
 近年、地球温暖化の影響で海氷の融解が急激に進んでおり、海氷域面積を20年前の同時期と比べると最大で約300万㎢減少しています(図1)。これは日本の国土の約8倍の面積に相当します。このような温暖化の影響や航海距離短縮によってコストを節約できるという利点から、北極海航路は近年定常的な利用が進んでいるほか、北極海で生産された液化天然ガスを運搬するLNG船の主要航路となっています。当社は、北極海航行のニーズに応えるため、北極海を航行する船舶の安全運航を支援する『Polar Routeing』サービスを2011年から継続的に提供しています。独自の超小型衛星「WNISAT-1R」の観測結果を既存衛星画像と組み合わせ、観測データが少ない北極海の海氷分布をより正確に把握することで、今夏も船舶の安全運航を支援していきます。

 


図1:2019年9月(年間最小時)の海氷の様子と
 海氷域面積の推移(人工衛星による解析画像)

 


北極海の海氷傾向2020

 北極海の海氷域面積は例年、冬季の2〜3月に年間最大、夏季の9月に年間最小となります。今年は3月に年間最大を記録し、海氷域面積は2015年以降では最大の1,440万㎢程度となりました。現在、海氷は融解による減少期に入り、6月27日時点における面積は約924万㎢となっています(図2)。

図2:北極海の海氷分布(2020年6月27日時点)と
過去の航路開通期間(緑色)および2020年の予想開通期間(赤・黄色)

 今後夏にかけて融解は急速に進み、9月中旬には海氷域面積は今年最小の約423万㎢まで減少すると予想されます(図3)。これは、1979年の観測開始以来5番目に小さい面積となる見込みです(表1)。

図3:2012年以降の海氷域面積の推移
 
 
表1:北極海の海氷域面積の年間最小値(小さい順)
※1979年以降、2020年は予想

順位
海氷域面積(万㎢)
1位
318
2012
2位
396
2019
3位
402
2016
4位
407
2007
5位
423
2020(予想)
6位
426
2015
7位
427
2011
8位
446
2018
 


 海域別に見ると、北東・北西の両航路の沿岸でそれぞれ海氷の融解が進行しています。当社の独自衛星「WNISAT-1R」による観測画像をみると、ベーリング海とつながるチュクチ海では5月から海水面が現れ始めたことがわかります (図4) 。また、北東航路上のカラ海における融解が例年以上の早さで進行していることが確認できます (図5)。これは、隣接するシベリアが顕著な高温傾向にあることと関連しているものと考えられます。

図4:「WNISAT-1R」で撮影したチュクチ海
(撮影日時:2020年5月11日19:35 UTC)
※UTC:協定世界時。+9時間で日本時間
図5:「WNISAT-1R」で撮影したカラ海
(撮影日時:2020年6月8日3:00 UTC)

 北極海航路の開通は、北東航路の開通はシベリア沿岸域の気温が高いことが影響し、昨年の8月20日よりやや早い8月中旬から、10月上旬まで続く見込みです。北西航路は、カナダ多島海の海氷の融解し、9月中旬に開通する見込みです(図2)。

※開通の定義:海氷域に入ることなく全航路を通ることができると衛星観測データから判断される状況。



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