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Wx Files Vol.26 2014年4月4日にさいたま市で発生した突風について

2014年4月4日15時20分頃、さいたま市桜区で突風が発生し、市立神田小学校の倉庫の屋根が飛ばされたり、乗用車や家屋の窓ガラスが割れるなどの被害をもたらした。当社の現地調査によると、この突風は竜巻の可能性が高く、その規模はEF0と推定される。ただ、断定するのは難しく、ガストフロントの可能性もある。
※EFスケール=竜巻の規模を示すスケール、Enhanced Fujitaスケール

1.現地調査結果

当社では、突風が発生した翌日の4月5日早朝より、現地調査を行った。図1-1、図1-2は、この現地調査により得られた被害状況である。

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図1-1)被害の分布図

赤丸が現地調査で被害の確認された場所。コメント中の番号は、図1-2の写真に対応する。矢印は、被害状況から推定される風向きである。


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図1-2)被害状況の写真。番号は、図1-1上の地図の場所に対応する。


今回の突風による被害はさいたま市立神田小学校の約100m西側から始まり、そこから東北東方向に約1㎞にわたって被害が点在し、国道17号線より東側では主だった被害は見受けられなかった。被害の南北方向の幅は約50mであった。飛散物、屋根の被害面、アンテナなどの倒れた方向から、強風は西から南西寄りの風が卓越していたと推定される。
現地の住民の方によると、
「音に気づき外をみたら、雨戸を閉める間もなく強風が来た。」
「今まで聞いたことないような音、ダンプカーが過ぎ去るような音だった。」
「強風は短い間だった。」
「上空に飛散物の渦を見た」
とコメントされており、強風は突然発生し、短時間に終わったようである。また、上空に竜巻のような渦を見たという証言もあった。

以上のように、
・被害が線状に伸びていること
・上空の渦の目撃証言があること
・飛散物が渦を巻いて巻き上げられていたという証言があること
から、今回の突風は竜巻によるものであった可能性が高い。ただ、被害は線状でありながらも点在していること、推定される突風の風向が南から西風の一方向で竜巻の事例でよく見られるようにランダムな方向ではないことから、竜巻の渦が完全に地上まで達していなかった可能性やガストフロント※1の可能性もあり、完全に特定することは困難であった。

※1) ガストフロント:積乱雲から周囲へ吹き出して広がる冷たい空気が周辺の空気とぶつかってできる小規模な前線。突風や強い上昇気流を発生させる


2. ウェザーリポーターからの現地報告

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図2-1)突風に関するウェザーリポートの報告位置の分布(番号は図2-2の番号と対応する)

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図2-2)ウェザーリポーターの報告

①は15時41分にさいたま市桜区のウェザーリポーターから、5台の車の窓ガラスが突風で割れたという被害や、ガストフロント先端の上空に形成された棚雲(Shelf Cloud)と、メソサイクロンの中心付近にできる壁雲(Wall Cloud)と推定される形状を撮影した写真が報告された。また、同時刻に②③のようにさいたま市浦和区から接地していない不完全な漏斗雲と、棚雲とみられるリポートが報告された。このような緊急性の高いウェザーリポートは、通常、写真撮影後数分で報告されることが多く、報告の位置とタイミング、および他の観測データ等から推定した積乱雲の構造を図7に示す。

尚、このようなウェザーリポーターからの被害報告などは、2014年4月2日より埼玉県との共同で開始された「さいたま減災プロジェクト」のサイト(http://weathernews.jp/gensai_saitama/)で閲覧することができる。

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3.気象状況

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図4)4月4日15時の気象庁速報地上天気図(左)と
毎時大気解析(右、色:地上気温、矢羽根:風、白点線は局地的な前線)


15時の気象庁速報地上天気図(図4左)によると、三陸沖に発達しながら北東に進む低気圧があり、突風の発生は寒冷前線が既に関東地方を通過した後であった。一方、詳細に見ると(図4右)、前述した三陸沖の低気圧から関東地方にかけて、南からの暖かい南西風と北からの風がぶつかりあい、局地的な前線が形成されてゆっくりと南下していた。また、4日15時の気象庁毎時大気解析では、関東上空約5500メートルでは気温が-22℃と、この時期としては強い寒気が入っており、大気の状態が不安定になっていた。

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図5)4日15時30分の気象庁レーダーエコー(色)と
WITHセンサーの現地気圧から解析した海面気圧(コンター、黒線は990hPa以上、赤線は990hPa未満)


埼玉県内ではこの局地的な前線の通過に伴い、13時頃から17時頃にかけて発達した積乱雲が発生、通過し、特に15時から16時30分頃にかけては埼玉県東部で激しい雷雨となった。また、WITHセンサー※2の気圧解析によると、突風が発生した時刻に近い15時30分には、20〜30km程度の小低気圧(図5中、黒点線)が検知された。突風をもたらした積乱雲は、この小低気圧による風の収束の強まり、上昇気流の強まりと連動して発達していたと推測される。

※2) WITHセンサー:全国約3000箇所に設置したWNI独自の気象観測器


竜巻はメソサイクロンと呼ばれる数kmから10km程度の低気圧性の渦を伴うスーパーセル型積乱雲から発生することが多く、今回の突風においてもWITHレーダーによってメソサイクロンが検知された。図6のように、ドップラー速度でレーダーに近づく風、離れる風のペアのパターンが突風の発生したさいたま市付近に見られ、これはメソサイクロンの存在を示唆する。地図と比較するとメソサイクロンの大きさは約5kmであった。

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図6)羽生のWITHレーダーの4日15時39分58秒の反射強度(左)とドップラー速度(右)。
ドップラー速度は赤がレーダーから遠ざかる風、青がレーダーに近づく風を示す。点線の円はドップラー速度から推測されるメソサイクロンの位置。
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図7)各種データおよびウェザーリポートから推定されるスーパーセルの構造
スーパーセルの構造図は Lemon and Doswell (1979)を元に当社にて作成。

今回の突風をもたらした積乱雲はスーパーセル積乱雲と考えられる。WITHレーダー、地上風分布、ウェザーリポートから推定した構造を図7に示す。ガストフロントとメソサイクロン中心などの位置関係が推定される。

4.まとめ

2014年4月4日15時20分頃、さいたま市桜区で発生した突風による被害は、長さ約1km、幅50mの西南西〜東北東方向の帯状に分布していた。現地の聞き取り調査やウェザーリポート、気象観測データ等も併せて判断すると、突風は竜巻の可能性が高く、規模はEF0と推定される。ただ、竜巻そのものの目撃証言やウェザーリポートはなく、ガストフロントによる突風の可能性もある。 当社では、今後もこのような災害の調査を積み重ね、さらにはWITHレーダー、WITHセンサー等の独自観測インフラによるリアルタイムでの突風の検知を行い、減災プロジェクトにて被害状況を迅速に共有することで、今回のような突風の被害の軽減につなげていきたいと考えている。

※このWxFilesの記載は速報値であり、二次災害あるいは今後同様の災害を少しでも減らすことを目的としています。


【参考文献】
Lemon and C. A. Doswell III, 1979: Severe thunderstorm evolution and mesocyclone structure as related to tornadogenesis. Mon. Wea. Rev., 107, 1184–1197.