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北極海の海氷を観測し北極海航路を支援、台風や火山の噴煙観測にも挑戦

ウェザーニューズの超小型独自衛星『WNISAT-1R』完成

〜2016年春にカザフスタン・バイコヌール宇宙基地から打ち上げ〜

株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)は、北極海の海氷を観測し北極海航路を航行する船舶をサポートするための超小型衛星『WNISAT-1R』が完成し、カザフスタン共和国・バイコヌール宇宙基地から2016年春に打ち上げると発表しました。2016年夏から本格的な北極海の海氷観測を開始し、『Polar Routeing Service』のサービス強化を目指します。また、北極海の海氷のみならず、台風の雲頂高度や火山噴火の際の噴煙高度の観測にも挑戦して参ります。

※打ち上げ機関の都合により、スケジュールは変更される場合があります。

ウェザーニューズの超小型衛星『WNISAT-1R』完成、2016年春に打ち上げ予定

 当社は北極海航路を利用する船舶の安全運航を支援する目的で、2013年11月、北極海の海氷を観測するための超小型衛星『WNISAT-1』の打ち上げに成功しましたが、撮像機器の故障によりミッション遂行が延期となっていました。
 今回、その“リカバリー”衛星として開発を進めていた超小型独自衛星2号機『WNISAT-1R』の製作が完了しました。初号機『WNISAT-1』打ち上げ及び運用の経験をもとに、姿勢センサーの耐放射線性強化や搭載カメラの冗長化を行いました。また、次号機以降の技術開発を目的とした新たな機器を搭載するなど機能追加を行っています。
 2016年春にカザフスタン・バイコヌール宇宙基地からソユーズロケットによる打ち上げを予定しています。

『WNISAT-1R』フライトモデル

光学観測ミッション

1.北極海の海氷を観測

 4つの観測波長(赤・緑・パンクロ+近赤外)のカメラで海氷を撮影します。氷の識別のために可視と近赤外のカメラを基本とし、カラー画像を得る目的で可視を赤・緑とパンクロに分解した、4基構成としました。撮影された画像により、海氷と海水面の判別や海氷の分布を解析し、海氷の現状把握や予測精度向上、および北極海航路支援サービス『Polar Routeing Service』の強化を行います。

2.台風や火山の噴火を観測

 北極海の海氷のみならず、台風や火山噴火時の観測を行います。台風の広がりや、火山灰の拡散状況を把握するとともに、ステレオ撮影による立体観測を行うことで、台風の雲頂高度や火山の噴煙高度の解析に挑戦します。

3.季節ごとの撮影対象エリア

春〜秋季 : ロシアの北西部沿岸、カナダの北部沿岸地域、アラスカ北部沿岸
冬 季 : バルト海、カナダ東岸、渤海、オホーツク海
臨 時 : 火山噴火や台風などの大規模な気象事象発生の際はその該当エリア

GNSS-R観測ミッション

次号機以降の技術革新に向けて、日照条件や天候に左右されない観測方法を確立するため、GNSS-R受信システムを搭載しました。GNSS-RとはGNSS Reflectometryの略で、GNSS衛星からの反射波を用いて地球表面の状態を観測するものです。この手法を用いて海氷や陸地からの反射波を受信、解析し、海氷と海水面の判別や海氷の分布状況の評価実験を行ないます。

GNSS-R観測ミッション概念図

『WNISAT-1R』基本情報

サイズ 524×524×507mm(突起部含まず)
質量 43kg
搭載主要機器 光学カメラ計6台
−可視光3台(赤・緑・パンクロ)
−近赤外1台
-予備2台
GNSS-R受信システム
撮影画像の地表分解能 400m(近赤外/赤)、200m(緑/パンクロ)
打ち上げ時期 2016年春(予定)
ロケット ソユーズ
射場 カザフスタン共和国バイコヌール宇宙基地
軌道 太陽同期軌道、高度600km

今後のスケジュール

2016年2月 バイコヌール宇宙基地へ輸送
2016年3月〜4月 打ち上げ
2016年5月 初期運用
2016年6月〜 定常運用

北極海の海氷観測ミッションの技術革新に向け、東京大学や東海大学と協力

 超小型衛星を利用した北極海の海氷観測ミッションは世界的に見ても前例のない取り組みです。より多くの知見を結集し、超小型衛星の活用を世界規模で促進していくため、東京大学や東海大学と協力し北極海の海氷観測ミッションを行ないます。取得されたデータは各協力機関に提供し、超小型衛星を活用した海氷観測技術の向上や、撮像データの解析技術向上に役立てられます。

参加機関 協力内容
東京大学 極域海氷観測データの解析及び衛星運用・試験手法の共同研究
東海大学 衛星データの取得と解析の共同研究