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史上最大規模のエルニーニョにより東南〜南アジアで干ばつや熱波が発生

〜夏にかけて平常に戻る見込みも、5月ごろまで高温少雨傾向が継続〜

株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)は、東南〜南アジア各地で顕著となっている高温少雨傾向と2014年から継続しているエルニーニョ現象についての見解と今後の見通しを発表しました。現在、史上最大規模と言われているエルニーニョ現象は衰退傾向にあるものの、まだ継続しています。この影響で、東南~南アジア域で高温少雨傾向となっており、今年1月以降、ベトナム南部メコンデルタ地域では過去100年で最悪といわれる干ばつに見舞われ、4月にはインドで熱波による被害などが発生しています。今後、この高温少雨傾向は6~7月頃まで継続すると予想されており、被害の拡大に注意が必要です。
 当社は、引き続きエルニーニョ現象と各地への影響を監視していきます。

エルニーニョ現象と東南~南アジア域での高温少雨傾向について

2014年夏に発生した史上最大規模と言われているエルニーニョ現象は衰退傾向となっています。図1を見てみると、赤道付近(緑点線枠部分)の海面水温は2016年1月以降、徐々に下がりつつあることがわかります。今後、このエルニーニョ現象は7月頃に向けて徐々に衰退し、海面水温も平年並みに戻る見込みです。一方、衰退傾向にはあるものの、熱帯太平洋東部では現在も海面水温が平年よりも最大約3℃高い状態が続いています。

図1.海面水温平年偏差(作成:ウェザーニューズ、データ:NOAA)
左:2016年1月  中:2016年2月  右:2016年3月

エルニーニョ現象発生時の3~5月、東南〜南アジアの広い範囲で高温傾向となることに加え、インドシナ半島を中心とする東南アジアでは少雨傾向も重なることがわかっています(図2参照)。

図2.エルニーニョ現象発生時の3〜5月の天気傾向(出典:気象庁)
黒点線枠は高温少雨傾向が顕著なエリア

エルニーニョ現象が発生すると、海面水温が上昇する熱帯太平洋東部では暖かい海水によって上昇気流が発生し、雨雲が形成されやすい状態となります。反対に東南~南アジア域では、その上昇した空気が下降して高気圧が卓越し、雨を降らせる雲が発達しにくく、このため晴れる日が多くなり、気温も継続的に高い状態となります。(図3参照)。

図3.エルニーニョ現象の概念図

今年もこの状況に当てはまり、東南〜南アジアの各地で干ばつや熱波が発生しています。ベトナムの南部メコンデルタ地域では今年の初め頃から大規模な干ばつが発生し、農業などに甚大な被害がでています。南アジアのインドでも4月にも熱波が発生しました。
 図4の4月20日時点の前30日平均最高気温平年偏差を見ると、東南〜南アジアで高温傾向となっていることがわかります。インド全体で見ると平年より1℃前後、インドシナ半島の広い範囲で2℃前後高くなっており、これまでに被害が報告されていない地域でも今後、干ばつや熱波による被害の拡大に注意が必要です。

図4.2016年4月20日時点の前30日平均最高気温平年差
(作成:ウェザーニューズ、データ:SYNOP)

今後、夏にかけての傾向

この後、エルニーニョ現象は7月終わり頃にかけて弱まり、平常状態に戻る見込みです。ただし今回のエルニーニョ現象は規模が大きかったため、全球で気温が高めとなっています。そのため平常状態へ戻るまでに時間がかかると見込まれており、東南〜南アジアで現在起きている高温少雨の天気傾向もしばらく続くと予想されます。
 2016年5〜7月の気温の平年偏差予測によると、東南~南アジア域では7月に向けて徐々に気温が平年並みに推移していく見込みですが、まだ5月はインドやインドシナ半島を中心に平年よりも2℃前後高い状態が続きそうです。また、2016年5〜7月の降水量の平年偏差予測を見てみると、東南アジア域の一部で引き続き平年より降水が少ない傾向となりそうです(図7参照)。高温傾向も重なるため、すでに干ばつが発生しているベトナムだけでなく、インドシナ半島全域で干ばつなどの被害拡大に注意が必要です。

2016年5月
2016年6月
2016年7月
図5.7月までの気温の平年偏差予測 (作成:ウェザーニューズ、データ:気象庁)
2016年5月
2016年6月
2016年7月
図6.7月までの月毎降水量の平年偏差予測 (作成:ウェザーニューズ、データ:気象庁)

タイ西部、ミャンマーでの高温傾向は、この先1か月程度は継続する可能性があり、注意が必要ですが、7月の終わり頃にかけて、エルニーニョ現象の衰退と季節変化によって、東南アジア〜南アジアでは全体的に、徐々に平年並みの気温へと戻っていく見込みです(図8参照)。ただし、降水量に関しては、7月以降に、インド北西部、インドネシアのジャワ島やカリマンタン島で、平年よりも多雨傾向となる予想となっています。これはエルニーニョ現象によって東南〜南アジアで晴天が続いたことでインド洋の海水が温められ、海面水温が高い状態が継続し、その周辺で雲が発生しやすい状態となっているためと考えられます。また8月以降は熱帯太平洋東部の海面水温は低めで推移し、ラニーニャ現象が発生する可能性も出てきています。当社は今後もエルニーニョ現象の衰退とラニーニャ現象の動向を監視していきます。

図7.アジア主要地点の
7月までの降水量と気温の傾向