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Wx Files Vol.23 2013年台風26号による大雨について
2013年10月15日から16日にかけて、台風26号が関東地方へ接近し、300ミリを超える大雨をもたらした。伊豆大島では大規模な土石流が発生し、多数の死者が出るなど甚大な被害が出た。他にも関東地方の各地で土砂崩れや河川の氾濫などの災害が発生し、また鉄道や航空、道路などの交通機関に大きな影響を及ぼした。以下に台風やそれによる大雨、強風、災害の状況を振り返る。
1. 台風の経路と大雨の状況
台風26号は10月11日にグアム近海で発生し、北西から北北西へと進んだ。その後、15日に北東へと転向し、16日朝に関東地方へ接近した。台風は房総半島沖を通過した後、三陸沖を北上し、16日15時に北海道の南東海上で温帯低気圧に変わった。
本州付近では台風の接近に伴い、10月15日から16日にかけての2日間にわたって強い雨が降った。図2は15日0時から16日9時にかけての33時間の雨量である。
2. ウェザーリポートから見る被害状況
台風の接近に伴いウェザーリポートが多く寄せられ、被害の状況をほぼリアルタイムに把握することができた。
1)大雨に関するリポート
関東地方では、15日の夕方から強い雨が降り始めた。伊豆大島からは「経験したことのない雨量」、「恐怖を感じる」といった報告が届いた。図3は各地の天気の報告の推移で、16日5時前後をピークに激しい雨(ゴォ―ッと音を立てて降る雨)になっていたことがわかる。
大雨に伴い、道路の冠水の報告が多く寄せられた。千葉県を中心に、神奈川県、東京都、埼玉県、茨城県の広範囲で道路冠水が発生していた(図4)。道路冠水の報告が多く寄せられるようになったのは16日午前3時頃で、それは激しい雨(ゴォ―ッと音を立てて降る雨)の報告が報告全体の40%を超えた頃に対応する(図5)。
過去の大雨の事例においても、激しい雨が40%程度に達するとその地域で道路冠水が発生しており、激しい雨の報告の割合が道路冠水の一つの指標になると考えられる。
図3:大雨に関するウェザーリポート
2)強風に関するリポート
一方、強風に関するリポートは、関東地方では16日未明から「歩行困難、外出危険な風」の報告が急増し、看板やトタン屋根が飛ばされる、または倒木など、強風・暴風による被害が発生した。関東地方では、風のピーク時には50%を超えるリポーターが「外出危険、歩行困難」と感じており、それが3時間前後も継続した。特に台風が近くを通過した千葉県では70%前後、茨城県では90%前後の方が「外出危険、歩行困難、急に風が強まる」と感じていた。2013年9月に東海地方に上陸した台風18号では、愛知県や静岡県でこの割合が60〜70%であったので、今回の風も台風18号と同程度かやや大きい影響であった。
図6:強風に関するウェザーリポート
3. 大雨の要因
この大雨の主な要因としては、勢力の強い台風が接近したことに加え、接近の前日から前線が停滞し、台風の東側の湿った空気が継続して流れ込んだことが考えられる。16日3時の実況天気図(図8)では関東地方の付近に停滞前線が解析されている。
気象庁毎時大気解析データでより詳しく見ると、関東から静岡県の沿岸にかけて気温と風向の差が大きい所(図9の赤線)が見られ、前線が形成されていた。この前線は15日18時頃から台風が関東に接近する16日6時頃までの約12時間、ほとんど停滞していた。記録的な雨量となった伊豆大島はこの前線上に位置していた。台風周辺の非常に湿った南東からの風がこの前線に向かって流れ込み、上昇して、同じ地域で連続的に積乱雲を発生・発達させ、前線付近や前線の北側で激しい雨を継続させたと考えられる(図10左)。図9のように、千葉県周辺では前線は台風接近とともに北西側に20キロメートルほど移動したが、伊豆大島付近ではほとんど動かなかったことが、伊豆大島での強雨の継続につながったと考えられる。
このような台風の北側に形成される停滞前線は、2004年10月に伊豆半島に上陸した台風22号の事例においても見られた(図10右)。この時もアメダス伊豆大島では245ミリの雨が降っている。秋に本州付近に接近する台風においては、台風の暖かく湿った空気と秋の相対的に冷たく乾いた空気の間にこのような停滞前線が形成されることが多く、この前線付近で大雨に警戒が必要である。
※このWxFilesの記載は速報値であり、二次災害あるいは今後同様の災害を少しでも減らすことを目的としています。