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2013年7月23日の都心周辺の局地的豪雨について

はじめに

2013年7月23日に、東京23区周辺で局地的な豪雨が発生した。特に東京都世田谷区周辺では16時30分までの前1時間に約100ミリの非常に激しい雨が観測された。この局地的な豪雨により23区周辺では道路冠水や河川増水が発生し、鉄道、旅客機でも強雨や落雷による遅延などの影響が出た。

豪雨の状況

図1に局地的豪雨が発生した際の解析雨量を示す。関東の複数の地域で雷雲が発生し、雨をもたらしたが、特に東京都世田谷区周辺では、1時間に100ミリを超える雨量が解析されている。1時間に40ミリ以上の激しい雨は世田谷区あたりを中心に幅10km程度に集中しており、豪雨は局地的であったことが分かる。

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図 1. 16:30までの前1時間雨量(気象庁解析雨量)

気象状況

1)概況

23日は梅雨前線が中国大陸から日本海西部にかけて停滞しており、関東地方の南から東海上の低気圧に向かって潜在的な前線(赤い点線)が停滞していた。関東地方はこの前線の北側で、23日の午前中は北東から東よりの風が卓越しており、海からの湿った空気(水色矢印)が入り込みやすい場であった(図 2)。


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図2. 7月23日15時の実況天気図

午前中、関東では西部の山沿いが雨雲の主な発生場所であったが、正午頃から東京と神奈川の県境付近で雨雲が発生・発達をし始めた。その後、雨雲の発生場所は次第に北に移り、14時頃には東京の都心で雨雲が発生した。都心周辺では16時頃にかけて雨雲が連続的に発生し、それぞれの雨雲は急激に発達した(図 3)。


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図3. 気象庁レーダー(左から順に、12時、14時、16時)

2)WITHレーダーで見る雨雲の動向

当社ではゲリラ雷雨を監視するために、全国約 80 箇所に Xバンドの独自レーダー「WITHレーダー」を設置している。WITHレーダーは高解像度、高頻度な観測ができ、局地的で急激に発達するゲリラ雷雨の雨雲を捉えるのに適しており、23日にWITHレーダーで捉えた雨雲の動向を示す。図 4は神奈川県厚木市に設置したWITHレーダーの15時13分から15時37分のエコーである。東京23区内に塊状の強いエコー(降水セルと言う)が複数見られ、雷雲は複数の降水セルから形成されていた(マルチセル型雷雨と言う)ことがわかる。先に発生したセルAがほぼ停滞しており、その北西側に新たにセルCが、南東側にセルDが発生、発達し、セルAと合体して(セルA’)、全体として強い降水強度が30分以上維持されていた。さらに北西側のセルBもゆっくりと南下し、この後、セルA’とつながった。このように、降水セルが連続して発生・発達することで、強雨が継続したと言える。

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図4. 神奈川県厚木市のWITHレーダーのエコー。
左下のレーダーのマークがレーダーの設置位置

図5は、東京都調布市のWITHレーダーで15:37に東方向を中心に斜めにスキャンしたエコーである。セルA’の一部とセルBが捉えられている。セルAは最大エコー頂高度が13,000mまで達しており、個々の雷雲は非常に激しい雨を降らせるものであったと推測できる。また、レーダーサイトのごく近く(図5左端の点線)には新しいセルが発生していることがわかる。

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図 5:調布に設置したWITHレーダーによる東方向への鉛直スキャンのエコー。
2013年15時37分(縦軸:高度(m)、横軸:東西水平方向(左が西))

豪雨発生メカニズムの考察

23日は図 2に示すように関東地方の南には潜在的な前線があり、比較的空気が湿っている場であった。また、昼頃には東京周辺では34°C前後まで気温が上昇し、大気の状態が不安定になっていた。また、関東平野では北東から東よりの風が卓越している場であったが、正午頃になると相模湾から神奈川県内へ南よりの風が強まり、東京と神奈川の県境付近で風の収束を見せ始めている。雨雲はその収束域周辺で発生し始め(図6左)、14 時には収束の地域が都心付近へと移るとともに、雨雲の発生位置も都心付近へと移っていった(図6右)。雨雲の発生のトリガーとなったのはこの東よりの風と南よりの風の収束であったと思われる。

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図6. 矢印)アメダスの風を約20kmメッシュで解析した風ベクトル(左...12 時、右...14 時)
赤線)風ベクトルの収束
(半透明の赤:都心付近の収束が強いエリア。
収束が 1.5[1/秒]以上を目安としている。) 緑線)風ベクトルの発散。

図7に示すように、中部山岳周辺は気温の上昇により局地低気圧(熱的低気圧)が発生しており、そこから連なる形で、都心周辺にも低圧部が形成されていた。関東平野の東よりの風の強まりは、この熱的低気圧の発達によると見られるとともに、神奈川から東京にかけて南よりの風が強まったのは、都心周辺の低圧部と関連していると思われる。このような気圧配置の結果、都心周辺で収束域が12時から16時頃にかけて、約4時間も継続した。

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図7. 左:SYNOP 気圧 右:アメダス気温(黄→赤にかけて気温が高い)

被害、影響状況

当時、当社ウェザーリポーターからは多数の報告が寄せられ、図 8左)は23日13時30分~19時にかけて送られてきたリポートである。青色の丸が「道路冠水している」という報告で、図8右)の局地的な豪雨が発生したエリア(約40ミリ以上の雨量)に集中しており、短時間の強い雨で多くの冠水が発生したことがわかる。また、被害状況の写真が図9のように多く寄せられ、写真に加えて「マンホールから水があふれている」、「雨が止んでも全然水が引かない」、「目黒川の水位がこんなに上昇したのは見たことがない」などの報告が寄せられた。なお、目黒川では一時的に氾濫危険水位を越え、首都圏を走る鉄道や、東海道新幹線は落雷や大雨による遅れや運転見合わせなどの影響が出た。

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図8. 左)リポートからみる冠水の有無 、右)12時から19時までの総雨量(気象庁解析雨量)

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東京都世田谷区(17:51)
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東京都世田谷区(16:40)
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東京都品川区(19:18)

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東京都目黒区(16:55)
図9. ウェザーリポーターからの報告

予測の可能性

当社では、観測データや衛星画像、ウェザーリポーターからの報告などを総合的、客観的に判定するゲリラ雷雨解析予測システムを運用し、雷雲の発生可能性を判定している。図10は23日の豪雨発生時におけるゲリラ雷雨発生可能性を表すINDEX及び、短時間予測降雨量である。12時(図10−a)、13時(図10−b)の時点では、都心周辺ではまだ雨雲は発生していないが、INDEXは0.6以上の高い値になっており、雨雲が発生しやすい状態であった。14時(図 10−c)にはINDEXが0.8以上となり、その直後に雨雲が発生し、16 時(図 10-d)頃にかけて、0.7以上の高い値が継続した。振り返ると、豪雨になった東京都世田谷区、目黒区付近を含めて、都心周辺で局地的な雷雨の発生の2時間程度前から、その豪雨発生の可能性が高いということが判断できていた。また、高い INDEXが2時間程度継続したということから、その間、次々に新たな雷雲が発生発達しやすい状態も継続していたと言える。

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図 10:ゲリラ雷雨解析予測システムの短時間予測雨量(色)と、ゲリラ雷雨発生可能性 INDEX
(コンター、黄色の太実線内は値が 0.6 以上、オレンジは 0.7 以上、赤は 0.8 以上)。
INDEX の数値が高いほどゲリラ雷雨が発生しやすい状態であることを示している。
10−a(上段左:23 日 12 時)、10−b(上段右:23 日 13 時)
10−c(下段左:23 日 14 時)、10−d(下段右:23 日 16 時)

ゲリラ雷雨防衛隊の取り組み

当社では、予測不可能とされているゲリラ雷雨に対して、人の目や体感、WITHレーダーなどのインフラをもとに総合的な解析を行い、事前にゲリラ雷雨を捕捉するサポーター参加型の取り組み「ゲリラ雷雨防衛隊」を行っている。2013年のゲリラ雷雨防衛隊の活動は今回の豪雨の起きた7月23日から始まっており、この豪雨に対しても、防衛隊の隊員からの報告や、ゲリラ雷雨解析予測システムなどをもとに、スマートフォンのアプリ「ウェザーニュースタッチ」や当社気象情報番組SOLiVE24を通して、激しい雷雨の危険性の共有、周知をしていた。


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まとめ

2013年7月23日の都心付近の局地的豪雨は、連続的に発生した雷雲(マルチセル型雷雨)によりもたらされていた。不安定な大気の状態と、都心付近の気温上昇、長時間維持される収束域などが主な要因と考えられる。今回の事例ではゲリラ雷雨解析予測システムにより実況データを解析することで、雷雲の発生を予測できており、WITHレーダーで連続的に発生する雷雲を捉えることができた。また、サポーターからの報告により、詳細な被害状況が明らかになった。弊社では、今後も事例を蓄積し、災害をもたらすゲリラ雷雨の予測やその危険性の共有・周知の仕方を高度化していく。



※このWxFilesの記載は速報値であり、二次災害あるいは今後同様の災害を少しでも減らすことを目的としています。