2025.07.20

AIでゲリラ雷雨の発生を予測、2,500台のカメラが天気の急変を監視

日本では7月〜9月にかけて、全国で毎日のようにゲリラ雷雨が発生しており、昨年は全国で約7.9万回発生しました。 ウェザーニューズでは、2008年に相次いだゲリラ雷雨による水難事故をきっかけに「ゲリラ雷雨による被害を少しでも減らしたい」という想いから専門チームを立ち上げ、ゲリラ雷雨の予測に取り組んできました。

今回は、AIを活用しカメラの画像からゲリラ雷雨発生のリスクを判定する「ソラカメ雲解析」について、開発を担当する木村文哉氏に話を聞きました。

ライブカメラネットワークを強化、設置台数を1年で5倍に拡大

ウェザーニューズのライブカメラネットワーク
ウェザーニューズのライブカメラネットワーク

ウェザーニューズでは、4,800万ダウンロードされているお天気アプリ「ウェザーニュース」を通じて、ユーザーの皆様から空の画像や動画、体感などをご報告いただき、1日20万件にも及ぶこれらのデータを予報に活用するというユニークな取り組みを実施しています。

その取り組みの一環として、ライブカメラネットワークを強化する目的で、2024年からソラコムのクラウド型カメラサービス「ソラカメ」と「ウェザーニュース」の連携を開始しました。「ソラカメ」は、ウェザーニュースアプリのユーザー向けの特典としてプレゼントしているほか、ウェザーニュースのオンラインショップでも販売し、ユーザーの皆さんに自宅のベランダや庭などの屋外に設置していただいています。「ソラカメ」の映像は、アプリから確認できる他、気象情報番組「ウェザーニュースLiVE」で全国の空の様子を紹介する際に利用しています。

本取り組みは多くの方にご協力いただき、現在は全国の映像公開数が2,500か所を突破、取り組み開始からわずか1年余りで、全国のライブカメラネットワークが5倍以上に拡大するなど、すごい勢いで広がっています。

※1 「ソラカメ」は株式会社ソラコムの商標または登録商標です

小型のウェブカメラ「ソラカメ」の画像をAIが解析、ゲリラ雷雨のリスクを3段階で判定

ウェザーニューズの予報センターでゲリラ雷雨予測を行う様子
ウェザーニューズの予報センターでゲリラ雷雨予測を行う様子

この全国2,500か所という圧倒的な設置台数を誇る「ソラカメ」のデータは、1分ごとにデータを受信しているため、1日あたり288万枚もの画像データを取得していることになります。当社のゲリラ雷雨専門チームは、膨大なデータをより良い予報としてユーザーの皆様に還元したいと考え、ライブカメラを活用したゲリラ雷雨の予測に挑戦することにしました。

梅雨の時期から夏の終わりにかけて被害が増えるゲリラ雷雨は、前線や低気圧による雨とは異なり、積乱雲が急激に発達することで発生します。そのため、雲の発達から被害発生までの時間が非常に短く、従来の観測機で降水を検知してからでは、対策が間に合わないケースが多々あります。しかし、ライブカメラは、雲の色、形、大きさといった状況をリアルタイムでデータとして取得・監視でき、「雨が降りそう」という予兆を捉えることができるので、ゲリラ雷雨の予測にうまく活用できると考えたのです。

「ソラカメ雲解析」の開発を担当する木村文哉氏
「ソラカメ雲解析」の開発を担当する木村文哉氏

「ソラカメ」から受信したデータはAIが解析し、雲の明るさや色味からゲリラ雷雨に発達する可能性を検討します。そして、ゲリラ雷雨発生の可能性を「可能性低い」「要注意」「危険」の3段階で判定し、予報センターのゲリラ雷雨担当が使用するシステムに表示するようにしました。

開発当初は、カメラの画角によっては空の解析精度が安定しないという課題がありました。しかし、AIを活用することで、建物と空の境界線を正確に認識し、建物部分を解析対象から除外できるようになり、予測精度が飛躍的に向上しました。

従来の観測機による雨の検知や、2,500台ものカメラを目視で確認するだけでは、ゲリラ雷雨のリスクを正確に伝えることは困難でした。しかし、AIの活用により空模様を迅速に判定できるようになったことで、発達中の雨雲を見逃すことなく捉える上で非常に役立っており、雨が降り出すまでのリードタイムを少しでも長く確保することが可能になりました。

今後は、画像解析技術のさらなる精度向上や、ゲリラ雷雨のリスクが低いエリアを解析対象から除くなど、ゲリラ雷雨予測の高度化・効率化を進めていく予定です。

世界中のどのカメラでも気象リスクを解析できる技術へ

カメラを活用した気象現象の解析はゲリラ雷雨に限った話ではありません。例えば、観測機での計測事例が少ない霧の解析など、AIを使って様々な気象現象が解析できるようになれば、実況把握の強化につながり、予報精度の向上が見込まれます。今後も引き続き、AI技術を活用した気象現象の解析にチャレンジしていきます。

予報の現場をご紹介!ユーザーと作るゲリラ雷雨予報の取り組み

ウェザーニューズのゲリラ雷雨専門チーム
ウェザーニューズのゲリラ雷雨専門チーム

(1) ゲリラ雷雨の可能性があるエリアに、予報センターから雲の監視を依頼

(2) 依頼を受けたユーザーは雲を監視し、怪しい雲を発見次第リポートを送信

(3) 本部に届く雲のリポートを分析し、独自レーダーや衛星画像など各種気象観測データおよび独自アルゴリズムなどを組み合わせて解析

(4) 本部がゲリラ雷雨発生の可能性が高まったと判断した場合は、「ゲリラ雷雨アラーム」登録者に対してゲリラ雷雨発生を事前にお知らせ

ウェザーニューズの予報センターではこのように日々のゲリラ雷雨を予測しています。天気・体感・風などの報告や気象データと組み合わせて分析することによって、従来の天気予報では予測が困難とされるゲリラ雷雨(豪雨)の前兆をいちはやく捉え、約1時間以内にゲリラ豪雨が発生しそうであれば、通知サービス「ゲリラ雷雨アラーム」に登録しているユーザーへ注意喚起の通知が配信します。 これからもアプリユーザーの皆さんと一緒に空を監視し、ゲリラ雷雨による被害を最小限に減らす取り組みを進めていきます。