2025.08.20

インド北部で土砂災害を引き起こした2025年8月3〜5日の大雨について

2025年8月3日から5日にかけて、インド北部のウッタラーカンド州では、南西モンスーンの影響で大気下層にアラビア海から非常に暖かく湿った空気が流れ込み、地形性の上昇気流が強まったうえ、ヒマラヤ山脈付近で低気圧性循環が形成されたことにより、雨雲が発達して豪雨が発生しました。この豪雨は土砂災害を引き起こし、100名以上が行方不明となり、10名が犠牲となりました1

インド気象局によると2、期間中最も降水量が多かったのは8月5日、ハリドワールで300mm、ナレンドラナガルで170mm、リシケーシュで150mm、ジョリーグラントで130mm、コートドワラで120mmの24時間降水量が観測されています。

最も降水量が多かったハリドワールにおける、8月4日0時(UTC)時点での全球を対象とした各国の気象モデルの降水予測を比較すると、イギリス気象庁のモデルが最も大きい降水量を予測していました(図1)。イギリス気象庁の予測モデルでは、豪雨災害が発生したインド北部のヒマラヤ山脈に近い地域で、局所的に100mmを超える降水を予測していることがわかります(図2)。

図1:2025年8月4日0時〜5日0時(UTC)の24時間降水量の比較 8月4日0時(UTC)時点の予測
図1:2025年8月4日0時〜5日0時(UTC)の24時間降水量の比較 8月4日0時(UTC)時点の予測

モデルのベースタイム:2025年8月4日0時(UTC)、場所はハリドワール ECMWF:ヨーロッパ中期予報センター NCEP:アメリカ国立環境予測センター JMA:日本気象庁 BOM:オーストラリア気象局 CMC:カナダ気象庁 DWD:ドイツ気象局 UKMET:イギリス気象庁

ウッタラーカンド州では、6月から9月頃のモンスーンの時期に降水量が多くなり、8月の月降水量の平年値は206.1mmです。今回は、1か月間に降るおよそ1.5倍の量の雨が、わずか24時間で降ったことになります。 気象モデルが今回の豪雨のような極端な現象を捉えることは難しいとされています。比較したモデルの中には、8月4日から5日までの期間に300mmの降水を予測しているモデルはありませんでしたが、100mmを超える予測結果もあったことから、豪雨の可能性を捉えられていたと言えそうです。

当社では、高精度の予報を提供するため、ウェザーニューズ独自の予測モデルに加え、他機関のモデルも活用したアンサンブル予報を行い、精度評価を通じて継続的な予報改善に努めています。引き続き様々な予測モデルの精度検証を重ねることで、モデルの特性を深く理解し、皆様により高い精度の気象情報をお届けできるよう努めてまいります。

図2:イギリス気象庁の予測モデルによる、2025年8月4日0時〜5日0時(UTC)の24時間降水量
図2:イギリス気象庁の予測モデルによる、2025年8月4日0時〜5日0時(UTC)の24時間降水量

Footnotes

  1. 1:インド北部 集中豪雨で大規模な土石流発生 山の麓の村襲う 10人死亡 100人超行方不明 ↩︎
  2. 2:https://internal.imd.gov.in/press_release/20250805_pr_4197.pdf ↩︎