2025.12.08

AIは台風予測に革新をもたらすか!?台風専門チームが最新のAI予測モデルを運用開始

日本では毎年のように台風による大きな被害が発生し、その動向を示す天気予報への注目度は非常に高まります。日本に限らず、台風は世界中で人々の生命や財産、経済に大きな影響を及ぼしています。

本ブログでは、ウェザーニューズが取り組むAIを活用した天気予報の最新事例として、今年から本格的に運用を開始したAIを活用した台風進路予測について、予測精度の評価結果とウェザーニューズの強みについてご紹介します。




独自観測網とAIを連携、ウェザーニューズが挑む高解像度予報の最前線

ウェザーニューズでは、予報精度向上のために積極的にAIを活用したいと考えており、最先端のAI技術を独自に構築した観測網と連携させています。

例えば、突発的なゲリラ雷雨の予測には、AIを駆使した独自のライブカメラネットワークが欠かせません。全国2,500箇所に設置された小型ウェブカメラ「ソラカメ」から届く画像をAIがリアルタイムで解析し、ゲリラ雷雨のリスクを3段階で判定しています1

他にも、全国13,000箇所に広がる独自の観測網や、アプリユーザーから寄せられる天気の報告(リポート)をAIの教師データとして活用しています。このAIを活用したダウンスケーリング技術により、国が提供する一般の天気予報(5〜20km程度)よりはるかに細かい1kmメッシュという高解像度の予報を実現しています。

こうした技術とデータ活用は、台風進路予測にも活かされています。

AIを活用してゲリラ雷雨を予測する様子
AIを活用してゲリラ雷雨を予測する様子



台風進路予測におけるAI予測モデルの優位性は歴然

ウェザーニューズには、あらゆる気象予測のモデルを分析する熟練の予報士が多数在籍しています。

従来は、大気の動きを表す膨大な方程式をスーパーコンピュータで解いて予測する「物理予測モデル」を中心に運用していました。 しかし 2025 年からは、過去の膨大な気象データを学習し、パターンから未来を推定する「AI予測モデル」の試験運用と精度評価を開始しました*。

図1は、10月までの台風について精度評価を実施した結果です。 AI予測モデルの評価結果は、予想以上に優れたものでした。 まず、すべてのAI予測モデルが、従来の物理予測モデルよりも高い精度を示しました。 さらに、AIと物理モデルの平均誤差を比較したところ、台風の進路のズレ(予測誤差)はAIモデルの方が約40%小さいことも分かりました。

図1:台風の進路予測について精度検証を実施
図1:台風の進路予測について精度検証を実施

さらに私たちは、AI予測モデルが物理予測モデルよりも早い段階から正確な進路を示しているケースがあることに気づきました。一般的に、天気予報は予測対象の時刻が近づくほど精度が高くなります。 しかし、ある台風では、AI予測モデルが1週間前の時点からほぼブレなく同じ進路を示し続けるというケースが確認されました。 この結果をみたグローバルストームセンターのスタッフは、AI予測モデルが持つ可能性を強く感じたといいます。

AIの予測に可能性を感じる一方で、AI予測モデルが物理予測モデルに及ばない点があることも分かりました。 それは、降水量の予測です。上記の通り、進路予測についてはAI予測モデルが圧倒的な精度を示していますが、降水量の予報については、依然として物理予測モデルのほうが高い精度を誇っていることがわかったのです。 こうして、私たちはAI予測モデルの試験運用期間を通じて、熟練予報士たちの分析によって各モデルの「クセ」や「特性」をノウハウとして社内に蓄積することができました。




熟練予報士がAIを活用することで、高品質な独自台風予報が可能に

ウェザーニューズでは、これらの綿密な精度評価を経て、今年の夏から台風の予測にAI予測モデルを活用することにしました。

精度が高いからといって、AIが導き出した結果をそのまま採用するわけではありません。 台風の進路予測を作成する際には、社内に蓄積されたノウハウをもとに、複数の予測モデルの結果を比較します。そのうえで、最も信頼性が高いと判断されるモデルに重み付けを行い、最適な予報を作成しています。 また、進路を予測するAI予測モデルと、雨を予測する物理予測モデル、それぞれの得意な部分を組み合わせて、信頼性の高い予報を提供できるようにしています。

AIの活用によって、台風に関する予測精度は大幅に改善し、社内では驚きと期待の声で溢れています。 グローバルストームセンターのスタッフは「AIモデルは今後さらに進化し、新たなモデルも登場してくると思われます。引き続き、精度検証を継続しながら特性を深く理解し、最適な運用手法を確立することで、精度が格段に向上すると思います。より早い段階から精度の高い気象情報を提供できれば、防災対策に大きく貢献できると信じています」と話してくれました。

参考: 図2は、台風22号の各機関の予測を比較したものです。ウェザーニューズ(オレンジ色の線)では、グローバルストームセンターのノウハウを活かし、AI予測モデルの結果を採用することで、いち早く高精度に進路予測を提供することができました。

高精度な台風進路予報を見るなら「ウェザーニュース」

ウェザーニューズの独自台風進路予報は、お天気アプリ「ウェザーニュース」の有料会員向けコンテンツ2や、法人向け気象情報サービス「ウェザーニュース for business」3などから確認することが可能です。

これらのコンテンツでは、13個のモデルの結果を比較しながら見ることができ、進路方向や時間のブレ幅を確認することができます。

また、台風による交通影響が発生する場合は、どこで、いつからいつまで、影響が出るかも詳しく解説しており、ウェザーニュースアプリの中でもアクセス数が高いコンテンツとなっています。

法人向け気象情報サービス「ウェザーニュース for business」の台風関連情報
法人向け気象情報サービス「ウェザーニュース for business」の台風関連情報

日本の気象業務法では、テレビや新聞、ウェブサイトなどに公開される台風の進路予測には、気象庁の情報のみを使うよう定められています。これは、防災上の混乱を防止するためです。

このような法規制がある中で、ウェザーニューズでは法律を遵守しつつ、必要とする特定のユーザーに対してのみ独自の台風進路予測を提供しています。 当社では、高精度で実用的な天気予報を提供することで、利用者ごとの最適な意思決定を支援しています。ウェザーニューズは引き続き、台風の予報精度の向上に取り組み、持続可能な社会の実現へ貢献してまいります。





Footnotes

  1. 1:AIでゲリラ雷雨の発生を予測、2,500台のカメラが天気の急変を監視 ↩︎
  2. 2:予報精度No.1のお天気アプリ「ウェザーニュース」のダウンロードはこちら ↩︎
  3. 3:法人向け気象情報サービス「ウェザーニュース for business」 ↩︎