2026.04.01
どこにでも置ける気象IoTセンサーで船や沿岸の安全をサポート、AIによる港のピンポイント予報が可能に

日本は島国のために港が多く、海外を行き来する大きな貨物船(外航船)の出入りや、国内の海上輸送(内航船)による物流が盛んです。
このため港では日々、様々な作業が行われています。 例えば、外航船が港に着岸できるかどうか離着桟の可否判断、風の強い日は、港に船をつけることができず荷物を降ろすことができません。
港にそびえ立つ巨大なガントリークレーンの操縦も風の強さによって作業を停止します。 風速が15〜20m/sを超えれば、クレーンが滑ってブレーキがきかなかったり、最悪の場合クレーンが倒れてしまう危険性もあります。
一方で、海岸の地形は非常に複雑で、わずか数キロ離れるだけで風の吹き方が一変してしまう環境にあります。
今回、沿岸部ならではの課題を解決する気象情報サービスとはどのようなものか。
また、安価で高性能な気象IoTセンサー「ソラテナPro」を用いたウェザーニューズならではの取り組みについて、実際の活用事例とともにまとめました。
港の気象の変化を可視化、複雑な地形に対応する高解像度な気象情報サービス
沿岸部で作業を行う方達にとって気象情報が欠かせません。 しかし、港に風速計がないこともあり今、ここでどれくらい強い風が吹いているのかわからないそうです。
正確な風速数値がわからないまま、最後は「経験と勘」に頼らざるを得ない――。 そんな現場のジレンマを解消するために、ウェザーニューズは港湾向けの気象情報サービス「ウェザーニュース for business」を提供しています。
本サービスは、PCだけでなくスマホからも利用可能で、屋外作業中でも専門的な気象・海象情報を簡単に確認することができます。
また、独自開発した100mメッシュの風と潮流の予測データが30分ごとに更新されるなど解像度の高さが魅力です。

たった1kgの高性能気象IoTセンサー「ソラテナPro」
設置後2週間〜AIが観測データを学習したAI予測モデルの提供が可能に
予報だけでなく、実際に観測機器を設置してこの場所の風速を観測したい、という方には 高性能な気象IoTセンサー「ソラテナPro」が便利です1。
サイズが約13cm(縦)×約13cm(横)×27cm(高さ)で重さはわずか1kg程度と非常にコンパクト。 気温・湿度・雨量・風速など7つの気象要素を1分毎に捉えます。
最大の特徴は、コンセントに電源を挿すだけで、その瞬間から観測を開始する「手軽さ」にあります。 観測の開始とともに観測データはクラウドサーバーへ送られ、「ウェザーニュース for business」から確認できます。
そして、風の実況データを見るだけでなく、このデータをAIに学習させることでAI予測モデルを作ることが可能になりました。
さらに驚くべきは、この予報が提供できるまでの早さ、設置から最短2週間でAI予測モデルによる予報の提供が可能です。
ソラテナProの観測データはウェザーニューズが管理するクラウドサーバーで管理されるため、設置からデータの提供開始、予報への反映までが非常にスピーディ。
なお、AIが学習する観測データは2ヶ月以上あると、さらに精度を高めることが可能です。
実はこの「ソラテナPro」、補完観測として気象庁より日本で初めて予報業務への利用認可を受けた気象観測機器です2。 この認可は、いわば国が認めた品質の証。
手軽な設置・運用が可能でありながら、予報の根拠として信頼できる品質を両立させています。

「ソラテナPro」で自律運航船「第二ほくれん丸」の安全航行をサポート
この「ソラテナPro」を活用したAI気象予測モデルは、すでに実用化に向けた現場で導入されています。その一例が、日本財団の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」における「DFFAS+」コンソーシアム3での取り組みです。
同プロジェクトでは、日立港と釧路港を結ぶ大型RORO船「第二ほくれん丸」を実証船とし、2025年の本格的な実用化を目指しています。 自律運航の管理を担う「フリートオペレーションセンター(FOC)」では、このAI予測モデルによる高度な予報を活用。特に精密な判断が求められる離着桟時の意思決定をサポートしています。
今回「ソラテナPro」を釧路と日立に設置する際、私たちはあえて「船の高さ」に合わせ地上14mという高さに設置を行いました。 海の上では遮るものがないため、海面付近と数十メートルの高さでは、風の吹き方が劇的に異なるからです。
ガントリークレーンの操作や、巨大な船の操船において本当に知りたいのは、足元の風ではなく「荷物が揺れる高さの風」であり「船体が受ける風」です。 どこでも置けるからこそ、最もリスクの高いところに設置を決めたそうです。

AIが沿岸で作業を行う人々の意思決定をサポートする未来
〜日本の海をもっと安全に〜
ウェザーニューズでは30年以上前から、沿岸作業を行う企業をサポートしてきました。 観測機器が入手できる場合は、人が手作業で予報を修正し、電話で最新の見解を伝えることで、現場の意思決定をサポートしてきました。 しかし現在では、予報担当者の思考回路をデジタルに落とし込み、そこに最新のテクノロジーを掛け合わせることで、その地点に特化した予報の自動作成が可能になりました。
人口が減少し、業界の人手不足が懸念され属人的な意思決定が課題となる中、 情報のデジタル化や意思決定の可視化によってデータに基づく運用を実現させることは非常に重要です。
人のノウハウをAIが読み取れる情報へ整備していくことで、AIが沿岸作業を行う人々の意思決定をサポートする未来もおとずれるでしょう。
日本の海を、もっと安全に。 そしてもっと効率的に。 私たちの挑戦は、これからも現場の皆様とともに続いていきます。
Footnotes
- 1:簡単で、すぐ使える 7つの観測要素を搭載する 高性能気象IoTセンサー「ソラテナPro」 ↩︎
- 2:「ソラテナPro」が日本初の補完観測の予報業務利用の承認を取得) ↩︎
- 3:DFFAS+ (Designing the Future of Fully Autonomous Ships Plus) とは: 日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の第2ステージで技術開発及び開発した技術の社会実装を担うコンソーシアム。日本郵船グループをはじめとする国内53社が参画し、2025年までの無人運航船の社会実装(実用化)と、技術の標準化を目指す「オールジャパン」の共同事業体です。 ↩︎
