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ウェザーニューズ、兵庫県伊丹市で「防災チャットボット」を用いた新たな被災状況集約・安否確認モデルの実証実験を実施

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 株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)は、5月31日、兵庫県伊丹市と「防災チャットボット」を用いた新たな被災状況集約・安否確認モデルの実証実験を実施しました。ウェザーニューズ、国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、防災科研)、国立研究開発法人情報通信機構(以下、NICT)は、SNSを活用した対話型災害情報流通基盤「防災チャットボット(SOCDA、ソクダ)」を開発しています。「防災チャットボット」は、LINEを通して自律的に被災者とコミュニケーションを取り、対話の中から安否確認や避難場所、不足物資、被災状況などの災害関連情報を自動で抽出・集約し、被災者に必要な情報を自動で提供するシステムです。今回の実験では、「防災チャットボット」を活用した新たな被災状況集約・安否確認モデルとしての可能性を確認することができました。今後は、他自治体とも連携し、全国で実証実験を行っていく予定です。

伊丹市で「防災チャットボット」の実証実験を実施

 5月31日、伊丹市でSNSを活用した官民連携の新たな被災状況集約・安否確認モデルの実証実験伊丹市水防図上訓練が実施されました。伊丹市の職員45名、ウェザーニューズ・防災科研・NICTの研究者が参加し、平成30年台風21号を再現した訓練が行われました。
 訓練では、まず平成30年台風第21号が接近した際に実際にTwitter上で発信された被災状況を知らせるツイートをもとに市職員が災害現場調査を実施し、その被害状況を「防災チャットボット」を利用して報告しました。

訓練当日の災害情報登録画面

 また、31日15時に伊丹市の職員が「防災チャットボット」を用いて安否確認メッセージを一斉送信し、訓練本部には参加した105名から返信メッセージが届きました。「防災チャットボット」は、メッセージに自動応答するとともに、安否情報を自動で抽出し、避難行動支援リストと照合しました。照合結果はリアルタイムに集計され、伊丹市の職員は一覧を見ることで市民の安否状況を瞬時に把握することができました。

伊丹市職員が「防災チャットボット」でメッセージを送信する様子
訓練当日の安否確認画面

 伊丹市の危機管理室長からは「平成30年台風21号の際は1日78名動員しましたが、安否確認は大変なものでした。今日の訓練で、「防災チャットボット」を通して市民から情報をいただけたら、かなり迅速に動けるのではないかという手応えを感じることができました。これから開発が進んでいくと思いますが、ぜひ実用化をお願いしたいです。」とコメントいただき、本システムの有用性を確認することができました。

訓練当日の様子
写真手前3名はウェザーニューズのスタッフ
訓練の安否確認状況 一覧画面

安否確認に関する自治体の課題と「防災チャットボット」の開発

 災害発生時、自治体は膨大な災害関連情報を整理、要約し、災害対策基本法に基づいて高齢者や障がい者など避難行動要支援者の安否確認を行っていますが、迅速な把握には多くの職員が必要になります。高潮によって関西国際空港が水没した平成30年台風21号の際、伊丹市では大規模停電が発生しましたが、市内の停電情報をリアルタイムには把握できず、現地調査または市民からの通報による情報収集となったため、停電範囲や刻一刻と変わる復旧情報を把握することができませんでした。また、同台風接近時に、78名の職員で1,968名の安否確認を実施しましたが、留守や家族の家に避難しているなどの理由から連絡がついた人はその6割にとどまりました。伊丹市に限らず多くの自治体では、優先的に支援すべき避難行動要支援者を迅速かつ効率的に抽出できるかが今後の課題となっています。加えて、これらは政府の緊急活動・支援活動にも影響を及ぼします。

 大規模災害時におけるこのような課題を解決するため、ウェザーニューズが参加する内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する戦略的イノベーション創造プログラムSIP「国家レジリエンス防災・減災)の強化」では、府省庁の既存システムと連動して膨大な災害関連情報を統合し、政府の意思決定を支援する次世代の「避難・緊急活動支援統合システム」の開発に取り組んでいます。当社は、防災科研、NICTとともに、本システムの核となる、被災者とのSNSによるコミュニケーションを取り入れた対話型災害情報流通基盤「防災チャットボットSOCDA、ソクダ)」を開発しています。現在開発中の「防災チャットボット」は、LINEを通して自律的に被災者とコミュニケーションを取り、対話の中から安否確認や避難場所、不足物資などの災害関連情報を自動で抽出・集約し、被災者に必要な情報を自動で提供するシステムです。今回は、「防災チャットボット」によって集約された被災状況の調査結果を、Twitterの被災報告などと、また安否確認情報を避難行動要支援者のデータと照合することで、新たな被災情報集約・安否確認モデルとして活用できるのではないかと考え、その実用性を確認するための実証実験を行いました。今後は、他自治体とも連携し、全国で実証実験を実施していく予定です。

参考:戦略的イノベーション創造プログラムに参画

 戦略的イノベーション創造プログラム(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program; SIP)は、内閣府に設置された総合科学技術・イノベーション会議主導のもと、府省連携や産学官連携により分野横断的に課題に取り組み、基礎研究から実用化・事業化までを見据えて一貫して研究開発・社会実装を推進する国家プロジェクトです。SIPが掲げる12課題のうち「国家レジリエンス(防災・減災の強化」に参画し、SNS等を用いた対話型の災害情報流通基盤「防災チャットボット」の研究開発に取り組んでいます。本システムは、「国民一人ひとりの避難支援」や「災害対応機関の緊急活動支援」で活用される計画で、2020年以降の社会実装を目指して、それぞれ実用性を確認する実証実験を進めています。

 ウェザーニューズは、次世代の防災システムの開発や実証実験を繰り返し、避難行動から避難生活までを支援する一人ひとりの避難支援情報の提供を目指していきます。

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