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高齢者ら避難行動要支援者の安否をLINEで確認する防災チャットボットの実証訓練を伊丹市で実施
防災気象 >株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)が参画するAI防災協議会(理事長:江口清貴)は、1月26日、兵庫県伊丹市で避難行動要支援者の安否をLINEで確認する新たな安否確認モデルの実証訓練を実施しました。本訓練は、ウェザーニューズが開発を担う対話型の災害情報流通基盤「防災チャットボット(SOCDA)」を実装したLINE公式アカウント「伊丹市 防災・要支援者安否確認」を用いた市民参加型の訓練で、避難行動要支援者を対象とした全国初の取り組みです。訓練当日は、避難行動要支援者とその親族ら230名が参加し、要支援者34名の安否を確認できました。ウェザーニューズは、要支援者の状況をより迅速に把握できるシステムを構築し、災害対策本部と要支援者が災害時につながる社会の実現を目指していきます。
避難行動要支援者の安否をSNSで確認
1月26日、AI防災協議会は優先的な支援を必要とする避難行動要支援者を主な対象とした「防災チャットボット(SOCDA)」の実証訓練を全国で初めて実施しました。当日は個人情報の提供に同意している避難行動要支援者とその親族ら230名が参加しました。10時にSOCDAによって安否確認のメッセージが一斉送信され、LINEの通知を受け取った避難行動要支援者やその親族らは、「現在どこにいるか教えてください」「要支援者の方の健康は大丈夫ですか?」などの質問に回答しました。16時までに避難行動要支援者本人から9件、親族から32件、計41件の安否情報が寄せられ、要支援者34名の安否確認に成功しました。
職員の方からは、「事前に通知文書を配布した際、事業賛同やお褒めの言葉、スマホを買ってでも参加したい旨の意見が多かった。」「8割以上が70代を超える中、事前登録のやり方がわからないという連絡が想定よりも少なかった。」「要支援者の個人を特定した上で、瞬時に集約することができるのは、災害対策にとても有効だと訓練を通じて実感した。」など、期待の声をいただきました。
また、今回の訓練は被災情報集約の実証訓練も兼ねており、職員からの災害状況報告もSOCDAによって整理、集約され、災害対策本部の情報共有に活用されました。
安否確認に関する伊丹市の課題と安否確認モデル事業
災害発生時、自治体は膨大な災害関連情報を整理、要約し、災害対策基本法に基づいて高齢者や障がい者など避難行動要支援者の安否確認を行っていますが、迅速な把握には多くの職員が必要になります。高潮によって関西国際空港が水没した平成30年台風21号の際、伊丹市では大規模停電が発生しましたが、市内の停電情報をリアルタイムには把握できず、現地調査または市民からの通報による情報収集となったため、停電範囲や刻一刻と変わる復旧情報を把握することができませんでした。また、同台風接近時に、78名の職員で1,968名の安否確認を実施しましたが、留守や家族の家に避難しているなどの理由から連絡がついた人はその6割にとどまりました。伊丹市に限らず多くの自治体では、優先的に支援すべき避難行動要支援者の迅速かつ効率的な抽出が課題となっています。
大規模災害時におけるこのような課題を解決するため、ウェザーニューズが参加する内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」では、府省庁の既存システムと連動して膨大な災害関連情報を統合し、政府の意思決定を支援する次世代の「避難・緊急活動支援統合システム」の開発に取り組んでいます。本システムの中で、当社は国立研究開発法人 防災科学技術研究所、国立研究開発法人情報通信研究機構とともに被災者とのSNSによるコミュニケーションを取り入れた対話型災害情報流通基盤「防災チャットボット(SOCDA)」を開発しています。SOCDAは、LINEを通して自律的に被災者とコミュニケーションを取り、対話の中から安否確認や避難場所、不足物資などの災害関連情報を自動で抽出・集約し、被災者に必要な情報を自動で提供するシステムです。
3者はSOCDAが伊丹市の課題解決につながると考え、2019年5月31日に伊丹市の職員とLINEを用いた被災状況集約と安否確認モデルの実証実験を行い(※)、今回、3者が参画するAI防災協議会は実際の避難行動要支援者を対象とした安否確認の実証訓練を実施しました。今後も自治体と実証実験や実証訓練を行い、検証を重ねることで、災害時に活用できるシステム構築と社会実装を目指していきます。
※プレスリリース:/news/27656/
ウェザーニューズ、兵庫県伊丹市で「防災チャットボット」を用いた新たな被災状況集約・安否確認モデルの実証実験を実施