TOP > NEWS > 2022

ニュース

AIを用いた太陽光発電量予測でインバランスリスクの低減を支援

電力市場向けに、高精度な太陽光発電量予測データをAPI提供

1kmメッシュの高精度な日射量データを用いて、30分毎のPV発電量を予測

エネルギー気象 >

 株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)は、気象データと最新技術で企業のDXを推進する気象データ提供・分析サービス「WxTech®️(ウェザーテック)」において、電気事業者向けに1kmメッシュの高解像度な日射量予測を用いた太陽光発電量予測データのAPI提供を開始しました。今年4月にはFIP制度が開始されることで、太陽光発電量の計画値と実績値の誤差が売電収支に大きく影響することから、電気事業者にとって太陽光発電量の予測精度向上は急務となっています。そこで、当社は日射量予測モデルの改善によって一般的な予測と比べて予測精度を11%向上させ、この日射量データを用いた高精度な太陽光発電量予測モデルを開発しました。

 本サービスでは、電力取引に適した30分毎の太陽光発電量の予測データを72時間先まで提供します。予測方法は、発電所の緯度経度のほか、ソーラーパネルの出力や設置角度など、発電所の情報をもとにピンポイントな太陽光発電量予測データを算出する“物理モデル”と、過去の発電量実績データと気象データをAIで学習させることでさらに高精度に予測する“統計モデル”から選択いただけます。“物理モデル”は発電所の情報を入力するだけで予測データを取得できることから、これから新設する発電所でもすぐに導入いただけます。発電を開始してから1年後には、蓄積した実績データを学習して予測する“統計モデル”に切り替えることもできます。

 また、当社は2020年12月に提供を開始した電力市場向け気象データセットを1kmメッシュに高解像度化しました。今回予測精度を改善した日射量を含む全15種類の気象データについて、1kmメッシュで72時間先まで30分毎にAPIで提供します。ご好評につき期間限定の無償トライアルを2022年度中まで継続しますので、下記URLからお気軽にご連絡ください。

「太陽光発電量予測データ」や「電力市場向け気象データセット」に関するお問い合わせはこちらから
https://biz.weathernews.com/pv30min202201/
東京都周辺の1kmメッシュ日射量予測のイメージ

太陽光発電量予測データをAPIで提供開始

 当社は、高精度な日射量予測を活用し、電気事業者の運用に適した30分間隔の太陽光発電量予測データをAPIなどで提供します。データはクラウドを経由してAPIで提供するため、企業システムと容易に連携させることができます。また、専用ウェブサイトからCSVファイルをダウンロードすることも可能です。

 太陽光発電量予測データは、“物理モデル”と“統計モデル”から選択することができます。“物理モデル”は、発電所の緯度経度やソーラーパネルの出力、方位角・傾斜角、PCS(パワーコンディショナー)出力・効率などの情報から、ピンポイントな太陽光発電量予測データを計算し、提供することができます。

 例えば、基本的にソーラーパネルは真南に向けて傾斜角10〜30度で設置されていることが多いですが、緯度による太陽高度の違いや方位角の違いなどの設置環境が発電量に影響します。このような、設置環境やソーラーパネルの仕様の違いを予測に反映します。

 一方、“統計モデル”は、発電所の緯度経度や過去数年分の発電量実績、当時の気象データをAIで学習させることで、“物理モデル”より高精度に予測できます。

 これから新設する発電所の場合は、過去の実績データがないため、運用開始と同時に”統計モデル”を利用することは困難ですが、“物理モデル”はソーラーパネルやPCSなど発電所の情報を入力するだけで予測データを取得できることから、運用開始と同時にご利用いただけます。また、1年後には実績データを学習に用い、“統計モデル”に切り替えることもできます。

太陽光発電量予測の予測値と実績値との比較 (青色は発電量実績、橙色は発電量予測。誤差がないほど精度が高いことを示す。)

 サービス導入前には、電気事業者が所有する発電所の情報や発電量の過去の実績データを用いて精度検証も行っており、事前に太陽光発電量の売電収支を計算することができます。また、“物理モデル”と“統計モデル”を活用した場合のそれぞれの精度を比較することで、事業にあった最適な発電量予測モデルを選択いただけます。

太陽光発電量予測データのサービス仕様

データ種別
太陽光発電量予測
単位
kWh
空間解像度
1kmメッシュ
時間解像度
30分間隔(72時間先まで)
更新頻度
30分毎、5回/日、1回/日から選択可
提供方法
API提供、または専用ウェブサイトからCSVファイルをダウンロード

 

日射量予測モデルを改善、気象庁より11%高い予報精度

 当社は電気事業者に高精度な日射量の予測データを提供するため、2020年12月に機械学習を用いた「日射量予測モデル」を開発しました。日射量予測に必要な雲の透過率を推定する際には上空の湿度から推定するのが従来の方法でした。しかし、当社は独自AI技術を用いて、上空の湿度や温度などから推定される雲の水分量や、風向風速から計算される収束量などを、雲の透過率を高精度に推定できる特徴量として選択し、機械学習する新たな予測モデルを開発しました。

 そして、今回は予測モデルにインプットする大気濁度と雲透過率の算出方法を見直し、日射量予測モデルをバージョンアップしました。
 これにより、2021年12月については、当社のこれまでの予測モデルと比べて8.5%、MSM(気象庁)と比べて11%の精度改善を確認しました。なお、精度評価には数値予測モデルの予測誤差を表す基本的な指標であるRMSE(Root Mean Squared Error、二乗平均平方根誤差)を用いています。

 

電力市場向け気象データセットを1kmメッシュに高解像度化

 当社は、太陽光発電量予測のデータ開発に伴い、電力の需要予測や発電量予測に必要な気象データをまとめてパッケージ化した電力市場向け気象データセット(※1)のうち、72時間先までの短期予測を1kmメッシュに高解像度化しました。

 メッシュを細かくすることで、より詳細な表現が可能になるため、データの精度も高まります。5kmメッシュの天気予報では晴れのエリアでも、1kmメッシュで見ると晴れ・曇り・雨が混在し、場所によっては雨の予報になることもあります。同様に、太陽光発電に最も重要な日射量予測についても、5kmメッシュの予報では500W/m2でも、1kmメッシュで見ると600W/m2、400W/m2などエリアによって異なる場合があります。

 また、新たに1kmメッシュの積雪予測・積雪実況データと“過去の気象予測”を追加しました。ソーラーパネル上に積雪がある場合は、通常通りに太陽光発電量を予測することができませんが、30分間隔の積雪予測・実況解析データを用いることで、積雪も加味した予測が可能になります。2018年以降の“過去の気象予測“は、電気事業者によるAIを用いた発電量予測および電力需要予測システムの開発や、精度向上の検証に利用することができます。

 なお、データセットに含まれる日射量予測は、今回、日射量予測モデルを見直すことで精度を更に向上させています。

※1 2020年12月プレスリリース:電力市場向けに電力需給計画を支援する気象データセットを販売開始
/news/33247/
2021年5月プレスリリース:日射量、気温等の1kmメッシュ実況解析データを30分毎にAPI提供
/news/35778/

 

 本データセットでは気温、気温EPI(Error Potential Index)、全天日射量、全天日射量EPI、直達日射量、散乱日射量(※2)、風向、風速、降水量、天気、積雪など、様々な気象要素の予測や実況データを1kmメッシュで取得することができます。電気事業者はクラウドに保存された気象データをAPIなどで取得できるため、データの閲覧や保存だけでなく、需給管理システムなどの既存システムとの連携も容易です。時間前市場やスポット市場での電力取引などにご活用ください。

※2 全天日射:地表面が受け取るすべての太陽光を指す。直達日射の水平面成分と散乱日射の和。
 直達日射:太陽から直接地上に到達する光のこと。
 散乱日射:太陽光が大気中の粒子等により散乱・反射されて 地上に届く光のこと。

 

1kmメッシュに対応した電力市場向け気象データセット一覧

データセット
予測期間
気象要素
気温
気温
EPI
全天日射量
全天日射量
EPI
直達
日射量
散乱
日射量
降水量
降雪量
風向
風速
露点
温度
相対
湿度
気圧
天気
積雪深
短期予測
スタンダード
72時間先
-
-
-
-
-
-
短期予測
プレミアム
72時間先
-
実況解析
-
-
-
-
-
-
-
積雪予測
72時間先
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
積雪実況解析
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-

〜無償トライアル期間を再延長〜

 当社は2020年12月の電力市場向け気象データセットの販売開始時から、無償トライアルを提供しています。現在も電気事業者様の新規事業での利用を中心に、多数のお問い合わせをいただいていることから、期間限定のトライアルを2022年度中も継続します。

▼本サービスのお問い合わせ、無償トライアルのお申し込みはこちらから
https://biz.weathernews.com/pv30min202201/

4月にFIP制度がスタート、高精度な太陽光発電量予測で損失リスクを軽減

 政府は「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入を加速する新たな方策として、2022年4月からFIP(フィードインプレミアム)制度をスタートします。加えて、インバランス制度の改正やアグリゲーターのライセンス制度の開始が予定されています。

 FIP制度は、FIT(固定価格買取)制度のように固定価格で買い取るのではなく、売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再生可能エネルギーの導入を促進するものです。FIP制度下では、計画値と実績値に差が生じた場合にペナルティを支払う必要があり、インバランス料金制度もより厳格になることから、誤差が売電収支に大きく影響することになります。

 FIP制度の開始が目前となっていることから、電気事業者にとって太陽光などの発電量予測や電力需要予測の精度向上は急務となっています。さらに、太陽光発電量や電力需要を高い精度で予測するためには、もとになる日射量、気温、風などの気象データの予測精度が重要になります。このような背景から、当社は日射量データの予測精度を向上させるとともに、独自の太陽光発電量予測モデルを根本から見直し、新たな太陽光発電量予測モデルを開発しました。

 

 当社は、太陽光発電量予測データの提供を通して、FIP制度を利用した売電のほか、自己託送やオフサイトPPAによる再エネ供給事業をサポートし、再生可能エネルギーの主力電源化を支援してまいります。

本ニュースをプリントアウトしてご覧になりたい方はこちら