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今冬の雪はどうなる?ウェザーニューズ、降雪傾向(12〜3月)を発表
【降雪傾向】降雪量は北海道から山陰にかけての日本海側で平年より多くなる予想
〜日本海の海水温が高い影響で水蒸気の供給が増加 西日本を中心に寒気が流入〜
モバイル/インターネット >株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:石橋 知博)は、今冬の「降雪傾向」を発表しました。今冬(12〜3月)の降雪量は、寒気や低気圧の影響を受けて北海道日本海側から山陰で平年並か多く、北~西日本の太平洋側と九州北部で平年並の予想です。
太平洋の海面水温は弱いラニーニャ現象時に近い状態となっていることと、インド洋の海面水温分布の影響で日本付近では偏西風がやや南に蛇行し、西日本を中心に寒気が流入しやすくなる見込みです。北日本では冬型の気圧配置が現れますが、周期的に低気圧が通過し、通過後に寒気が流れ込む時期もある予想です。また今シーズン中は日本海の海面水温が平年より高く、水蒸気の供給が多くなる予想です。これらの要因により、日本海側を中心に降雪量が平年並か多い傾向となります。一方、太平洋側は、気温は北日本を中心に平年より高い傾向ですが、寒暖の変動が大きく、平年同様冬型の気圧配置が現れて晴れる日が多い時期と、低気圧や気圧の谷の影響を周期的に受ける時期とがある見込みです。また寒気が強い時には日本海側からの雪雲が流れ込むところもありそうです。これらの影響により、降雪量は平年並となる予想です。関東甲信では南岸低気圧や気圧の谷の影響で雪の降る日があり、特に1月前半は内陸部を中心に積雪するおそれもあるため十分な備えが大切です。
雪のピークは北日本日本海側と東日本太平洋側は1月前半、東日本日本海側と西日本で1月末~2月初め、北日本太平洋側とオホーツク海側は2月後半の予想です。
※平年:気温や降雪量の平年は1991〜2020年の過去30年間の平均
<ポイント> |
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今冬(12〜3月)の降雪傾向
<降雪量とその要因について>
今冬の降雪量は、北海道から山陰の日本海側で“平年並か多い”、北~西日本の太平洋側と九州北部で“平年並”の予想です。予想のポイントとなるのは、太平洋とインド洋の熱帯域の海面水温分布と大気循環、それに伴う偏西風の蛇行です。
現在、太平洋熱帯域ではエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない中立の状態となっていますが、海面水温は弱いラニーニャ現象時に近い状態となっています。この状態は、今冬の間(2025年2月頃)まで続く予想です。また、インド洋熱帯域の海面水温は東部を中心に平年より高い状態で、今後3月にかけて徐々に低下し平年並に近づいていく予想です。
今冬はインド洋東部からフィリピン近海の対流活動が平年より活発になり(①)、中国の内陸で偏西風が平年よりも北に蛇行します。この下流にあたる日本付近では、平年に近い位置ながら偏西風がやや南に蛇行します(②)。このため、日本付近は西日本を中心に平年程度に寒気が南下する見込みです(③)。また、北日本を中心に低気圧の影響を受けやすい予想です(④)。今シーズン中は日本海の海面水温が平年より高く、水蒸気の供給が多くなる予想です(⑤)。これらのことから、今冬の降雪量は、北海道から山陰にかけての日本海側で“平年並か多い”、北~西日本の太平洋側と九州北部で“平年並”となる見込みです。
気温と降水量の傾向が今シーズンと類似しているのは、2021〜2022年と2022〜2023年の冬で、気温は北~西日本で平年並かやや低い傾向で寒暖の変動が大きくなっていました。降雪量は日本海側を中心に平年並か多い傾向でした。
<雪のピークの時期について>
雪のピークは、北日本日本海側は1月前半、東日本日本海側と西日本で1月末~2月初め頃の予想です。これらの時期は冬型の気圧配置が強まって寒気が南下しやすい見込みです。また、東日本太平洋側は1月前半、北日本太平洋側とオホーツク海側は2月後半の予想です。これらの時期は、低気圧や気圧の谷の影響で雪が降りやすくなる見込みです。なお、今冬は弱いラニーニャ現象時に近い状態が冬の間続く予想で、南岸低気圧の通過頻度は平年並か少なくなりそうです。ただ、寒気の入るタイミング次第では南岸低気圧の通過時に東北南部や関東甲信を中心に大雪になる可能性があるため、事前の備えが大切です。交通機関に大きな影響が出る可能性もあるため、随時最新の情報をご確認ください。
昨冬(12〜3月)の降雪傾向の振り返り
昨冬はエルニーニョ現象が発生していた影響で、冬型の気圧配置は長続きせず、2月を中心に南から暖かい空気が流れ込んだ時期があったため、気温は全国的に非常に高く、降雪量は、北日本日本海側、西日本太平洋側では平年よりかなり少なく、北日本太平洋側、東日本日本海側、東日本太平洋側、西日本日本海側では平年より少なくなりました。
しかし、気温の変動が大きく、12月の中旬から下旬にかけてと1月下旬には、一時的に冬型の気圧配置が強まって寒気が流れ込み、日本海側の地方で大雪となった所がありました。また、2~3月上旬は東日本太平洋側と北日本太平洋側では低気圧の影響で平野部でも雪の降った日があり、大雪となった地域もありました。今冬は、昨冬と比べて日本海側を中心に降雪量が多くなる見込みです。
エリアごとの降雪傾向
エリア | 本格化時期 | ピーク時期 | 降雪量 | 降雪傾向 |
北日本 | 12月上旬 | <日本海側>
<太平洋側・ | <日本海側>
<太平洋側・ | 10月19日に稚内と旭川、10月20日に網走・札幌・帯広、11月6日に釧路、11月7日に室蘭・函館・青森・盛岡、11月18日に秋田・山形・福島、11月19日に仙台で初雪が観測されました。室蘭と函館は平年より遅かったものの、その他の地点では平年並か早くなりました。 <日本海側> <太平洋側・オホーツク海側> |
東日本 | 12月中旬 | <日本海側>
<太平洋側> | <日本海側>
<太平洋側> | <日本海側> <太平洋側> |
西日本 | 12月中旬 | <全域> | <日本海側>
<太平洋側> | <日本海側> <太平洋側> |
今冬の降雪傾向について
当社では日々、長期気象予測を行っていますが、現在の気象予測の技術水準では予測精度の誤差が大きくなる場合があります。今回の降雪傾向発表にあたり、複数の気象機関や長期予報の有識者からの見通しを元に、総合的に見解を出しています。本リリースにおける情報につきましては、発表日(11月19日)における最新の見解になります。
(参考)気候変動が降雪量に及ぼす影響について
今冬は日本海の海面水温が平年より1~2℃(場所によっては2℃以上)高く推移すると予想されており、場所によってはドカ雪や降雪量の増加が起こることも考えられ、注意が必要です。
今後、気候変動が降雪量に及ぼす影響について、現時点を超える温室効果ガスの緩和策を取らない場合は、2100年ごろには20世紀末よりも日本の気温は年平均で4℃程度、冬季は5℃程度上昇することが予測されています。すると、雪の降り始める時期が遅くなり、降り終わる時期が早まります。北陸や西日本は初雪が新年になってから観測される年も現れると考えられます。また、1月に入っても気温が0℃を下回らなくなり、本州の平地でも場所によっては降雪がほとんど観測されなくなる可能性があります。また、冬季に降る雪の総量は減ると予測されています。一方で、もともと気温が低い真冬の北海道や、標高の高い北アルプスでは、年によっては降雪量が増えると予想されています。また、北陸の内陸や山沿いでは、ドカ雪(一晩などの短い時間で一気に降る大雪)の頻度が増えると予測されています。これは、温暖化に伴い気温や海面水温が上昇することで、空気中の水蒸気量が増えることが要因と考えられています。
ウェザーニューズでは、気候変動や地球温暖化によって、私たちの暮らしにどのような変化があるかを分析し、防災・減災の情報発信につなげていく考えです。
※参考文献
文部科学省及び気象庁『日本の気候変動2020』
気象研究所などの研究グループ『地球温暖化により極端化する北アルプスの降雪』
気候変動監視レポート 2022:https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/2022/pdf/ccmr2022_all.pdf
地球温暖化予測情報 第9巻:https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/GWP/Vol9/pdf/04.pdf