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太陽光発電所の日射量の正確な把握で、発電の効率化や保守点検の最適化を支援

新たなAI日射量解析モデルを開発し、1kmメッシュの日射量解析データを改良

〜電力取引に合わせた30分毎の太陽光発電量実績推定データも提供開始〜

株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:石橋 知博)は、AIを用いた独自の日射量解析モデルを開発し、電力市場向け気象データセット「WxTech®️ for Energy」の1kmメッシュの高解像度な「解析日射量データ」を改良、当社比で約27%の精度改善が見られました。さらに、新たに本解析データを活用した「太陽光発電量実績推定データ」の販売も本日開始しました。

当社は2021年より日射量の解析データを提供していますが、昨今日射計を設置できていない中小規模の発電所から日射量把握のニーズが増加していることから、より精度を高めるために機械学習を活用した独自のAI日射量解析モデルを開発しました。

本解析モデルは、季節による雲や大気の変化を考慮するためAIを用いた月別の解析モデルを構築し、衛星画像や数値気象モデルから推定された直近の雲水量データを用いて毎晩自動的に再学習を行っています。また、複数バンドの気象衛星画像から地表面を推定するリモートセンシングの手法と機械学習を組み合わせて、厚い雲などの雲の状態の効率的な判別を実現しています。さらに、雲影や積雪指数の活用や日の出時の赤外バンドを用いた推定手法の開発により、雲透過率のより正確な推定を可能にしています。このAI日射量解析モデルに地上実況などを取り込み、1kmメッシュの「解析日射量データ」を算出しています。本解析データを活用した「太陽光発電量実績推定データ」は、太陽光発電所の位置情報やパネルの容量/向きなどをインプットするだけで発電量を推定できます。

これらのデータは電力取引に合わせた30分単位でAPIで提供されます。太陽光発電事業者や運用管理・保守点検(O&M)事業者は、日射計なしで正確な日射量や発電量を把握し、発電量のパフォーマンス向上や発電設備の早期故障検知のほか、太陽光発電量予測の精度向上などにご活用いただけます。

再エネ導入の推進で太陽光発電による効率的な電力供給がより一層求められることから、当社は継続して日射量の予測・解析の精度向上に努めていきます。

お問い合わせはこちらから電力市場向け気象データセット
https://wxtech.weathernews.com/contact/inquiry/
https://wxtech.weathernews.com/services/weather_Energie.html

AI日射量解析モデルを開発、より高精度な解析日射量データを提供

太陽光発電所の日射量のデータを正確に把握することは、発電所のパフォーマンス分析やソーラーパネルの早期の故障検知、高精度な太陽光発電量予測モデルを開発するために重要です。気象庁の日射量の観測地点は全国約50地点のため、多くの場合は日射計を自社で設置する必要がありますが、高価でかつ定期的なメンテナンスを必要とすることから、特に中小規模の発電所ではほとんど設置 されていない状況です。今後は、大規模な太陽光発電所の適地不足などが進むことから、中小規模の発電所は増加すると考えられ、より一層解析日射量のニーズは増える見込みです。

当社は2021年5月より電力市場向け気象データセット「WxTech®️ for Energy」で日射量や気温など実況解析データを提供してきましたが(※1)、この度、日射量の実況解析データの精度向上を図るため、AIを用いた新しい手法で独自の日射量解析モデルを開発しました。

1kmメッシュの日射量の実況解析データのイメージ

当社の日射量の実況解析データのメリットは、自社で日射計を設置することなく、容易に発電所の日射量を把握できる点です。データはクラウドを経由してAPIで提供するため、企業は緯度経度を指定するだけで、必要なタイミングにデータを取得することが可能です。

太陽光発電事業者や発電所のO&M事業を担う企業では、解析日射量データから正確な日射量の把握や太陽光発電量を高精度に推定することが可能となり、ソーラーパネルなど発電設備の故障の早期発見や、発電量のパフォーマンス分析に活用できます。また、自社で太陽光発電量を予測する場合、過去の解析日射量データを利用することで、より精度の高い太陽光発電量予測モデルの構築が期待できます。

 

AIで解析技術が進化、解析日射量をより高精度に

<ウェザーニューズのAI日射量解析モデルの特長>

1:季節変化を考慮したAIを用いた月別の解析モデルを構築、衛星画像と雲水量データで毎晩自動で再学習
2:リモートセンシングの手法と機械学習の合わせ技で厚い雲でも推定可能に
3:雲影指数の活用や赤外バンドを用いた推定手法の開発で、雲透過率の推定の精度を改善

1:今回新たに開発したAIを用いた日射量の解析モデルは、季節による雲や大気の状態の変化を考慮するため、前年の同じ時期数か月分のひまわりの衛星画像・数値気象モデルから推定した雲水量(凝結している水分量)をAIにインプットして深層学習を施した月別モデルを構築しており、更に、最新の気象状況を取り込むために直近5日前までのひまわりの衛星画像および数値気象モデルから推定された雲水量のデータを月別モデルにインプットして毎晩ファインチューニングによる再学習を実施しています。

2:また、本解析モデルではひまわりの複数バンドの気象衛星画像データから地表面を推定するリモートセンシングの手法を後述の前処理・後処理に組み込み、機械学習との合わせ技で雲の状態の効率的な判別を可能にしており、従来の手法では推定が難しかった厚い雲に覆われている状態など雲の状態を推定した上で、大気圏外の日射が地上に到達するまでに散乱減衰する効果(雲透過率)を求めて地上の解析日射量を算出しています。

3:さらに、雲透過率をより正確に推定するため、インプットするひまわりの気象衛星画像データを推定が容易になるように前処理するとともに、後処理(ポストプロセス)として雲影指数・積雪指数・都市土壌指数などを導入して、雲と誤認識されやすい雲の影や雪、白い建物などを除外できるようにしています。加えて、これまでの手法では推定が困難だった夜間の雲透過率についても、ひまわりの赤外バンドのみを用いた推定手法をあわせて開発することにより、日の出の時刻からの日射量の解析値の精度を改善しました。これにより、今後は日の出後数時間のナウキャストの予測についても精度の向上も見込んでいます。

当社ではこのようにAIを用いた独自の日射量解析モデルを用いて、初期値として地上実況(SYNOP)などを取り込み、30分毎の日射量を算出しています。本解析モデルの活用により、解析日射量の精度は当社比で約27%向上しました(2024年7月〜2025年3月の2 乗平均平方根誤差(Root Mean Squared Error))。

精度比較(縦軸は誤差の大きさを示すRMSE
値が低いほど予測誤差が小さく精度が高い)

 

実況解析データのサービス仕様

データ種別
実況解析データ
気象要素
気温、全天日射量、降水量、降雪量、風向、風速、露点温度、相対湿度、天気
空間解像度
1kmメッシュ
時間解像度
30分毎
更新頻度
48回/日
提供方法
APIなどによるデータ提供

 

解析日射量データを活用した「太陽光発電量実績推定データ」を販売開始

今回開発したAIを用いた日射量の解析データを活用して、新たに「太陽光発電量実績推定データ」の提供を開始しました。日射量の解析データを用いた独自の太陽光発電量推定モデルに、太陽光発電所の位置情報とパネルの容量や向きなどの諸元データをインプットすることで、発電所ごとの発電量を推定することが可能です。解析日射量データと同様に、太陽光発電所の早期の異常検知や、中長期的な発電所のパフォーマンス分析などにご活用いただけます。

太陽光発電量実績推定のサービス仕様

データ種別
太陽光発電量実績推定データ
単位
kWh
空間解像度
1kmメッシュ
時間解像度
30分毎
更新頻度
48回/日 または1回/日
提供方法
APIなどによるデータ提供

 

電力市場向け気象データセットで、電力取引や需要予測の高度化を支援

当社は企業向けの気象データ提供サービス「WxTech®️(ウェザーテック)」において、2020年12月に電力の需要予測や発電量予測に必要な気象データをパッケージ化した電力市場向けの気象データセット「WxTech®️ for Energy」の販売を開始しました。当日計画・翌日計画・翌々日計画及び、スポット市場や時間前市場での取引向けのデータなどにご利用いただけます。

当社は古くからオンプレミスの環境でカスタマイズした電力需要予測や気象データを提供することで電力需給計画を支援してきましたが、本サービスはクラウド環境での気象データ提供サービスになります。電気事業者はクラウドに保存された気象データをAPIなどで取得できるため、データの閲覧や保存だけでなく、需給管理システムなどの既存システムとの連携も容易です。本気象データセットでは、気温や日射量、風向、風速、降水量、天気など、様々な気象要素の予測データや実況解析データをピンポイントで取得できます。

今回アップデートした解析日射量を含む「実況解析データ」は、気温、全天日射量、降水量、風向、風速、相対湿度、天気についてリアルタイムに解析し、電気事業者の運用に適した30分間隔、1kmメッシュの高解像度で提供するサービスです。

電力市場向け気象データセット一覧

日本の太陽光発電の動向

第7次エネルギー基本計画では、2040年度の電源構成に占める再エネ比率は4割~5割、うち23〜29%が太陽光発電を目指すとされています(※2)。2023年度の速報で、再エネ比率は約23%のうち太陽光が約10%という状況で、今後さらに太陽光発電の導入が進む見込みです。また、2050年ネット・ゼロの実現に向けた野心的な目標として、2035年度の温室効果ガス60%削減、2040年度の温室効果ガス73%削減を掲げています(※3)。

 

当社は電力市場に最適な気象データを提供することで、再エネの主力電源化を支援してまいります。

 

※1  2021年5月17日発表:日射量、気温等の1kmメッシュ実況解析データを30分毎にAPI提供
/news/35778/
※2  2025年2月18日 経済産業省 資源エネルギー庁
第7次エネルギー基本計画 2040年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/
※3 2025年2月18日 環境省 地球温暖化対策計画
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/keikaku/250218.html

 

 

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