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はじめに
2018年2月5日から8日にかけて、北陸西部では福井県嶺北地方・石川県加賀地方を中心に記録的な大雪となりました。特に福井市では、7日に積雪深が147cmとなり、1981年の昭和56年豪雪以来、37年ぶりに140cmを超える積雪が観測されました。特に積雪増加が顕著だった4日から6日は2日間で96cm積雪が増加し、昭和56年豪雪の時に匹敵するものであったことがわかります。
この大雪の影響で、石川県と福井県を結ぶ国道8号では一時約1,500台の車が立ち往生しました。陸上自衛隊による除雪作業が行われ、9 日未明に全ての滞留車両が解消するまでに約 3 日要しました。また、福井県・石川県を中心に在来線の運休が相次いだほか、石川県の小松空港では5日から8日の4日間にわたり全便が欠航となりました。長期化した交通への影響は物流にも打撃を与え、店頭の商品が品薄になったり、ガソリンスタンドの給油がストップするなど、食料や日用品の供給にも大きな影響を与えました。
1.積雪の状況
5日から8日にかけて断続的に強い雪が降った北陸西部の積雪状況を積雪深調査やアメダスの積雪記録、ウェザーリポーターからの報告、レーダーの観測データを合わせて解析し、解析積雪マップ(図1)を作成しました。この図から、7日夜には福井県や石川県を中心に100cmを超える積雪となっていたことがわかりました。
・積雪深調査
5日から8日にかけて北陸や西日本の方に対して「積雪の深さは?」と問いかけ、計731人に定規で測っていただきました(※)。報告によると、福井県嶺北地方から石川県加賀地方にかけて、大人の膝上を超える積雪60cm以上という報告が相次ぎ、100cm以上積もったという報告もありました(図2)。
※調査詳細:5日14〜22時北陸の80人、6日6〜22時北陸の124人、6日9〜22時西日本の288人、7日6〜23時北陸の130人、8日6〜22時北陸の109人が回答。
・アメダスの積雪記録
アメダスでは、2月7日に福井で147cm、金沢で87cm、富山で75cmの積雪を記録しました。福井で140cm以上の積雪を記録したのは、1981年2月以来37年ぶり、金沢で80cm以上の積雪を記録したのは2001年1月以来17年ぶりのことです。また、平年値(1981〜2010年)と比較すると、福井では平年の3.8倍、金沢では2.9倍の積雪となり、記録的な大雪であったことがわかります。
・ウェザーリポート
2月4日から8日にかけて、当社には全国から48,184通のウェザーリポートが寄せられ、北陸3県からは5日間で1,209通の雪の報告が届きました。3県とも6日の報告数が最も多く、通常の約2倍のウェザーリポートが寄せられました(図3)。
図3:ウェザーリポーターから寄せられた報告
2.大雪の推移
北陸での降雪は4日午後から強まり始め、5日から6日が降雪のピークとなり、積雪深は福井で約110cm、金沢で約80cm、富山で約60cm増加しました(図4,5,6)。
福井の積雪深の増加は単調ではなく、顕著な増加が3回見られました。5日午前、5日夜から6日昼過ぎ、7日未明から昼過ぎに大幅に増えていることがわかります。特に5日22時から6日14時にかけての16時間で、1時間に約4cmのペースで積雪が増え、65cmの増加となりました。
3.大雪の要因
2月5日から7日にかけて日本付近は冬型の気圧配置となっており、北陸地方には上空約1,500mで−12〜−9℃の強い寒気が流れ込んでいました(図7)。また、強い降雪をもたらす日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が北陸付近に停滞していました。
今回の大雪は北陸に停滞したJPCZが大きな要因となっています(図8)。JPCZは、冬型の気圧配置の時、日本付近に流れ込む季節風が長白山脈を迂回し、日本海で合流してできる収束帯です。風がぶつかることで生じる上昇気流が雪雲の発達を促すため、JPCZの付近では発達した雪雲が次々に発生し、強い雪が降ります。
今回の大雪をもたらしたJPCZは、5日から7日にかけて100km程度の範囲で少しずつ位置を変えながら北陸付近に停滞し、断続的に強い降雪をもたらしました(図9)。
福井市では、JPCZがかかった5日9~10時頃は1時間に8cm、6日9~10時頃は1時間に9cmの積雪増加がありました。一方、金沢市や富山市で積雪が増加した5日18時頃は、JPCZが能登半島方面にあり、JPCZから離れていた福井市では積雪増加はありませんでした。
この期間、JPCZが停滞した要因としては、日本付近の気圧配置があまり変化しなかったことが考えられます。冬型の気圧配置の際に日本海で発生する低気圧は通常、1~2日で北陸に上陸して消滅するか、北日本を通過後、オホーツク海や太平洋へ抜けます。ただ今回は、日本海で発生した低気圧が、日本海北部へ南下してきた寒冷渦に取り込まれ、北海道の西側で3日から6日にかけてほぼ停滞しました(図10)。その結果、日本付近の気圧配置はほとんど変化せず、JPCZが北陸西部に停滞する状態が続きました。
福井で最深積雪119cmを記録した2011年1月や、196cmを記録した1981年1月(昭和56年豪雪)の際も、冬型気圧配置に加えて北海道付近に低気圧が位置する同様の気圧配置が見られました。
昭和56年豪雪では、前年の12月27日から29日の間に、1日あたり45cm、51cmと積雪が増加しました。その後も積雪量は増え、1月には196cmとなり、3月初めまで積雪深が100cmを超える状態が続きました。今回、福井では4日から6日の間に、1日あたり42cm、54cmと積雪が増加しており、昭和56年豪雪の時の増加量に匹敵していたことがわかります(図11)。
5.まとめ
2月5日から8日にかけて北陸西部で記録的大雪となり、福井市の最深積雪深は37年ぶりに140cmを超え、147cmを記録しました。福井市の急激な積雪増加は4日から6日の2日間で96cmとなり、1981年の昭和56年豪雪の時に匹敵するものであったことがわかります。当社に寄せられたウェザーリポートの件数も6日をピークに、雪かきが困難なほどの積雪の様子が北陸西部から多数寄せられました。また、積雪深調査では、福井県嶺北地方から石川県加賀地方にかけて、大人の膝上を超える60cm以上の積雪報告が相次ぎました。
今回の大雪は強い降雪をもたらすJPCZが3日間ほど北陸西部に停滞し、少しずつ位置を変えながら北陸西部各地で複数回、強い雪を降らせたことが原因で発生しました。JPCZの停滞は、日本海北部の低気圧が動きの遅い上空の寒冷渦と結びついて停滞し、本州付近の気圧配置が変化しない状態が続いたためと考えられます。
雪は一旦ピークを過ぎましたが、10日は北陸西部の広範囲で雨が降るため、路面状況の悪化、冠水、落雪、雪崩などのリスクが高まります。11日以降は再び冬型の気圧配置になり、13日頃にかけて大雪の恐れがあります。融雪による二次災害やその後の大雪に引き続き警戒が必要です。