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風力発電量予測モデルをEUで開発、再エネ最先端の欧州で採用された予測技術を日本へ

電力市場向けに、高精度な風力発電量予測サービスを提供開始

ポルトガルの電力会社RENから4.5GW受注、136か所の風力発電量を15分単位で予測

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 株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)は、気象データと最新技術で企業のDXを推進する気象データ提供・分析サービス「WxTech®️(ウェザーテック)」において、日本の電気事業者向けに新たな風力発電量予測サービスの提供を本日開始しました。電力取引時間や企業のニーズにあわせて、5〜30分単位の風力発電量予測データを7日先まで提供します。

 当社は、AIを用いた新たな風力発電量予測モデルをウェザーニューズ フランス(パリ)で開発し、4月から欧州向けに風力発電量予測サービスの提供を開始しました。すでに、ポルトガルの電力会社REN(本社:リスボン、CEO:Rodrigo Costa)から全国136か所の陸上風力発電所の発電量予測を受注し、4月1日から運用を開始しています。欧州の気象会社8社が入札に参加し、RENによる精度検証トライアルの結果、当社との契約に至りました。

 今回、再生可能エネルギーの普及が最も進むEUの市場に対応する先端技術を導入し、日本でサービスを展開します。発電所の過去の発電量実績データと気象データをAIで学習させた風力発電量予測モデルに、日本の1kmメッシュの風の予測データを入力することで高精度に予測します。欧州と同等の高品質なサービスを必要とする、発電・送電・配電や小売などエネルギー事業の皆様からのお問い合わせをお待ちしています。

「風力発電量予測」に関するお問い合わせはこちらから
https://biz.weathernews.com/wxtech-windpower/

ポルトガルの電力会社RENに風力発電量予測を提供

 Redes Energéticas Nacionais(REN)は、ポルトガルの風力発電所から供給される全電力の送電を担う電力会社です。今回、RENは136か所の陸上風力発電所から供給される全ての再エネ(発電総量4.5GW)に対して、当社の風力発電量予測の導入を決定しました。4月1日に運用を開始し、15分間隔の風力発電量予測を7日先まで提供しています。なお、発電所の増設が計画されていることから、RENで送電する電力量は今後さらに増加する見込みです。

 
風力発電所のイメージ写真

RENなどの送電事業者は、風力発電事業者が発電した電力を自社の送電網を通じて需要家や一般消費者に供給します。このとき送電網に流入する再エネ発電量と需要量を想定して、需要と供給のバランスを維持することで送電品質を維持しています。発電供給量と需要の計画の誤差分は、市場から調達するか自社の予備調整力で補完する必要があり、再エネを含む発電供給量と需要の差が少ないほど送電運用コストが軽減されることから、精度の高い再エネ発電量予測が求められています。

 また、RENはポルトガルにおける風力や太陽光発電などの再エネ供給の成長を支援することや、送電事業者として環境負荷を低減することにコミットしています。将来的には、再エネ発電所から提供される気象や発電量の実績データをリアルタイムで処理することで発電供給量の予測や需給バランス運用の精度を向上させ、出力抑制の最小化を図っていく予定です。

 さらに、RENではこれらの取り組みを促進するために新しく整備される法制度への対応も今後のテーマとなっています。

欧州で風力発電量予測モデルを開発、予測サービスを提供

 当社は、電力事業者向けに1kmメッシュの風力発電量予測データを5〜30分単位で提供します。現在、日本の電力取引時間は30分間隔ですが、企業のニーズにあわせた時間で提供することも可能です。データはクラウドを経由してAPIで提供することも可能で、企業システムと容易に連携させることができます。

 本サービスでは、発電所の過去数年間の発電量実績データと当時の気象解析データをAIで学習させた風力発電量予測モデルに1kmメッシュの風の予測データを入力することで、風力発電量を高精度に予測します。また、風力発電量予測モデルへの入力値として、発電機の高さに対応した地上60mから200mの風向・風速の予測データを用いることでさらに精度を高めます。

 欧州の場合は、各国気象局および当社独自の数値予測モデルのアンサンブルから最適な風の予測値を選択することで、5〜10kmメッシュの解像度で予測を提供することができます。

1kmメッシュの風速データの出力イメージ

 

 当社は、欧州における電力・流通・農業市場など「環境気象事業」の立ち上げを目的として、2017年にフランスの気象会社Metnext(※)を買収して、パリに「ウェザーニューズ フランス」を設立しました。ここでの欧州の発電量予測の技術により、日本においても欧州と同等レベルの風力発電量予測の提供が可能になりました。

※2017年1月17日発表 プレスリリース「ウェザーニューズ、仏気象会社Metnextを買収」
/news/15227/
 

 

風力発電量予測のサービス仕様

データ種別
風力発電量予測
単位
kWh
時間解像度
5分〜30分間隔(7日先まで)
各国の電力取引時間や企業のニーズにあわせた時間解像度で提供。
空間解像度
1kmメッシュ
更新頻度
5分〜6時間毎
提供方法
API提供など

 サービス導入検討に際して、発電所の情報と発電実績値を用いて精度評価を実施することも可能です。詳細については下記URLよりお問い合わせください。
https://biz.weathernews.com/wxtech-windpower/

 

4月にFIP制度がスタート、高い精度の風力発電量予測で損失リスクを軽減

 「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた再生可能エネルギーの導入を加速する方策として、2022年4月から日本政府によりFIPフィードインプレミアム制度(売電価格に一定のプレミアム補助額を上乗せする制度)やインバランス制度の改正、アグリゲーターのライセンス制度が開始されました。

 今後、FIT(固定価格買取)制度からFIP制度に移行が進んでいくなか、計画値と実績値に差が生じた場合にはペナルティが発生する場合があり、インバランス料金制度もより厳格になるため、計画誤差が売電収支に影響することがあります。このような背景から、風力や太陽光などの発電量予測や電力需要予測の精度向上の取り組みが今後ますます重要になります。

 当社は、風力・太陽光発電など再生可能エネルギーの主電源化、系統運用のための需給バランスの最適化、再エネバックアップ電源確保の3つの取り組みについて、「WxTech®️(ウェザーテック)」で揃えている気象データセットや発電量予測、需要予測などのサービスで支援していきます。

 

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