2026.05.14

気象業務法の改正で何が変わる?その② 命を守るための新ルールが2026年5月29日から運用開始

気象庁は、大雨などの注意報や警報を再編した新しい「防災気象情報」について、5月29日から運用を開始すると発表しました。

これまでの気象警報や注意報は種類が多く、「どれを見ればいいのか迷ってしまう」と感じていた方も多いのではないでしょうか。今回の気象業務法と水防法の一部改正に伴う変更は、私たちの生活、そして命を守るために非常に重要なアップデートです。

本ブログでは、新しい防災気象情報について、知っておくべき変更点をウェザーニュースLiVEの解説員、山口剛央氏に聞きました。




なぜ今?気象業務法の改正の背景

昭和の時代、防災気象情報といえば「大雨警報」や「大雨注意報」などが主流でした。しかし、平成以降に気象現象が激甚化し、過去に類を見ない災害が頻発したことで、「土砂災害警戒情報(2005年〜)」や「大雨特別警報(2013年〜)」など、危険度の高い指標が次々と追加されました。

その結果、情報が複雑になり、以下のような課題が生じていました。

名称とレベルの不一致: 「警戒レベル4」の中に、「高潮注意報」と「高潮警報」のように名称の異なる情報が混在

類似情報の混在: 土砂災害に関する情報が、「大雨警報(土砂災害)」として出る場合と、「土砂災害警戒情報」として出る場合があった

対象が不明確な情報: 都市部の中小河川や下水道が溢れる「内水氾濫」に対する明確な避難情報が不足

このような状態では、避難指示を出す自治体も、情報を受け取る私たち市民も、瞬時に適切な判断を下すことが難しくなっていました。




何が変わるの?3つの大きな変更点

今回の見直しでは、複雑になった情報が整理され、避難の判断をよりスムーズに行えるようになります。

1. 危険度を直感的に把握できる「警戒レベルの数字表記」

これまで名称だけでは危険度が分かりにくかった警報や注意報ですが、新ルールではすべての情報名に警戒レベルの数字が付与されます。  変更例: 「高潮注意報」→「レベル2 高潮注意報」 「大雨警報(浸水害)」→「レベル3 大雨警報」

これにより、情報を見ただけで「今どのくらい危険が迫っているか」が一目でわかるようになります。



2. 「危険警報」の新設

これまで「注意報」「警報」「特別警報」という名称しかありませんでしたが、新たに「警戒レベル4」相当の情報として「危険警報」が運用されます。

 変更例: 「土砂災害警戒情報」→「レベル4土砂災害 危険警報」 「高潮特別警報、高潮警報」→「レベル4高潮 危険警報



3. 「今起きていること」を即座に伝える『気象防災速報』

警報のほかにも、これまで個別に発表されていた「記録的短時間大雨情報」「線状降水帯に関する情報」「竜巻注意情報」などが、「気象防災速報」という名称にまとめられます。

 変更例: 「記録的短時間大雨情報」→「 気象防災速報 (記録的短時間大雨情報)」 「顕著な大雨に関する情報」→「 気象防災速報 (線状降水帯発生)」 「竜巻注意情報」→「 気象防災速報 (竜巻注意/竜巻目撃)」

これは予測ではなく、「今まさに極端な気象現象が発生している」という実況をいち早く伝えるための情報です。「気象防災速報」という言葉を耳にしたら、「今、現実の脅威が起きている」と認識してください。



4. 例外:雪や風の運用に変更なし

この新しい5段階の警戒レベルの仕組みですが、すべての気象情報が当てはまるわけではありません。 「大雪」や「暴風」については、これまで通りの運用 となります。

大前提として、警戒レベルというのは「避難所などへ避難する行動」を呼びかけるためのものです。しかし、大雪や暴風の際は、むやみに外の避難所へ向かうよりも、頑丈な家の中に留まった方が安全な場合が多くあります。

そのため、今回の新しいルールには含まれておらず、暴風、大雪、暴風雪などの特別警報や警報、および強風や雷などの注意報については、これまで通りの運用が継続されます。




警戒レベル4までに全員避難

様々な呼び名の変更をご紹介しましたが、「警戒レベル4までに全員避難」という原則は決して変わりません。

レベル3が出たら: ご高齢の方など避難に時間がかかる方は行動を開始し、それ以外の方も避難の準備を始めてください。

レベル4(危険警報)が出たら: 速やかに安全な場所へ逃げてください。

レベル5が出たら: すでに極めて危険な状況、または災害が発生している状態です。命を直接守る行動をとってください。

ここまで説明をしてきましたが、「色々な情報があってよく分からない…」と迷った時は、 情報の名前にある「数字(レベル)」 に注目しましょう。レベル3(高齢者などは避難)が出たら準備を始め、レベル4(危険警報)が出たら速やかに安全な場所へ逃げる。まずはこれだけ覚えておきましょう。

いよいよ来月の運用開始に向けて、私たちウェザーニュースも「警戒レベル」を主語とした、より分かりやすい情報伝達の形を追求していきます。いざという時に正しい行動をとれるよう、番組やアプリを通じて、引き続き、皆さまに正確で最新の情報をお届けしてまいります。




(参考)もう一つの重要な法改正、気象予報業務の無許可事業者に対する規制強化とは

皆さんの命に直結する防災情報の見直し。実は、今回の気象業務法の改正には、「誰がその情報を発信するのか」という根本的な部分に関するルール変更も含まれているのをご存知でしょうか。

海外の事業者によって誤った警報情報が配信されたり、根拠の乏しい予報が拡散されるといった事態を受け、日本国内で気象予報業務を行う「外国法人等に対する規制の強化」が盛り込まれました。

海外の事業者によって誤った警報情報が配信されたり、根拠の乏しい予報が拡散されるといった事態を受け、日本国内で気象予報業務を行う「外国法人等に対する規制の強化」が盛り込まれました。

これにより、日本向けに天気予報などを提供する場合に、気象業務法に基づく許可や厳格な手続きが求められるようになります。

また、このAI時代においては手軽に情報を得られるようになった一方で、AIが精度の担保されていない無許可事業者の情報を参照し、利用者が気づかないまま誤った天気予報や防災情報を信じてしまうリスクが伴うため、ユーザーの情報リテラシー向上も重要となっています。

この規制強化の背景や、私たちの生活にどう関わってくるのかといった詳細については、以下のブログで詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

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