2026.06.02
全世界の雨雲を1km四方の高解像度で予測!30時間先までわかる「世界版・雨雲レーダー」開発の裏側
日本の天気アプリ利用者数No.112の「ウェザーニュース」が、2026年4月30日に世界対応の大型バージョンアップを実施、これまでにない超高解像度な雨雲レーダーの提供を開始しました。
全世界を対象に「1kmメッシュ」「10分ごと(30時間先まで)」の雨雲レーダーが閲覧できるようになったほか、海外渡航中でも日本国内と変わらない品質で天気予報・気象情報・防災情報の利用が可能になりました。
本ブログでは、雨雲レーダーの世界対応について技術開発を牽引した、予報センター開発リーダーの猪飼氏に、開発の経緯についてインタビューしました。
ー 雨雲レーダーのグローバル対応ということで、見られる範囲が一気に広がりますね?
猪飼:予測する面積で言うと日本の「72倍」、対象範囲が一気に広がります。
予測を計算するメッシュの数(計算するエリア数)に換算すると、約6億4,800万メッシュになります。
今回の雨雲レーダーは、この膨大な数のメッシュに対して、30時間先まで予測、10分ごとに出力します。
ー 想像を絶する計算数ですね…とんでもないこの膨大な計算量の壁を、どうやって乗り越えたのでしょうか?
猪飼:そうですよね、天文学的な数字です(笑)これほどの計算量を日々処理し続ける会社は、気象業界でも非常に珍しいと思います。
この壁を乗り越える解決の糸口はクラウド技術にありました。 ひと昔前のオンプレミス(自社サーバー)環境だったら、巨額の投資をしないと不可能だった計算量が、現代の素晴らしいクラウド技術のおかげで、低いコストで実現することができました。
また、開発開始から約3か月という非常に短い期間でリリースすることができました。オンプレミスのようにサーバーが設置されるまで待つ必要もありません。必要な時に必要なだけ利用できるクラウドサービスだからこそ、スピードを落とさずにユーザーへの提供が可能になったと思います。
僕らはテクノロジーの進化をしっかりとキャッチアップして、そのパワーを最大限に活用させてもらった形です。
気象のプロとして「精度」と「納得感」にこだわった
ー 具体的にどのような工夫がされているのでしょうか?
猪飼:まず大前提として、“当たる予報”を作るには「今、現地がどうなっているか」をリアルタイムで正確に把握することが欠かせません。そのため私たちは、世界各国の気象庁から雨雲レーダーなどの観測データを直接、リアルタイムに入手しています。
今回の世界版雨雲レーダーでは、この貴重なデータを最大限に活かす仕組みを取り入れました。
実は、予測を2段階で作成しており、気象レーダーや地上の観測データが入手できる国や地域については、さらに細かく予測を計算し直しているんです。
このため、世界地図の表示から特定の場所へズームイン(拡大)したときは、「精度の高い予報」が見られるようになっています。
ただ、海外は日本と違って、データの品質にかなりバラつきがあるのが難点でした。そのまま使うと予報の精度が下がってしまうため、ノイズ除去など“データのお掃除(品質管理)”には時間をかけましたね。
ー 日本と違って、世界には気象レーダーがない国や場所(海上や砂漠など)、雨量の観測データが乏しい地域もありますよね。そこはどうカバーしているのでしょう?
猪飼:それらの地域においては、10〜15分ごとに全球を観測できる気象衛星や気象予測モデルなどを利用しています。例えば、衛星画像から「積乱雲」を解析する技術と気象予測モデルのデータと組み合わせて雨雲を推定するといった処理を入れています。
このようにリアルタイムに利用できる観測データをフル活用することで、気象レーダーが設置されていない地域でも雨雲レーダーを作ることが表示させることが可能になりました。

ー 日本では、ユーザーから届いた天気報告(ウェザーリポート3)を活用して予報精度をあげる取り組みをしていますが、グローバルでもウェザーリポートの活用予定はありますか?
猪飼:すでにグローバルの雨雲レーダーでも、ウェザーリポートを反映できるようになっています。
どれだけ技術を尽くしても、上空の衛星から見ているだけでは「地上で雨がポツポツ降っているか」を100%見極めるのは不可能。だからこそ、ウェザーニューズ独自の取り組み「ウェザーリポート(ユーザーからの天気報告)」が重要になります。
もちろん、送られたウェザーリポートをそのまま全部鵜呑みにするわけではありません。
日本で培ったノウハウを活かして、「雲が一切ない場所からのゲリラ豪雨報告」を取り除いたり、「気温30度なのに雪報告」が来たら弾くようなフィルタリングもかけています。
私の夢は、世界地図がユーザーからのウェザーリポートで埋め尽くされる景色を見ることです。サポーターの手によってレーダーの解像度が上がっていく、そんな世界を作りたいですね。
ー 私も実際にリリースされた雨雲レーダーを触ってみたのですが、30時間先まで滑らかに雨雲が動くのが本当に感動的でした
猪飼:まさに、私が今回一番こだわったのは「滑らかに雨雲が動く」ということでした。
予測精度が高いということはもちろん、ユーザーにとっての納得感にはこだわりたかったんです。
日本国内の雨雲レーダーを開発した当初も、台風の雨雲がこんな動きするかな?というような表現になったり、一つの雨雲が不自然に分裂して動いたりすることがありました。
今回のグローバル対応でも、気象のプロだからこそ感じる違和感を見つけてはデータを作り直し、開発した雨雲レーダーの表示を確認しながら、何度も何度も調整を繰り返しました。
まだ始まったばかり、安心して海外渡航できる「お守り代わり」の天気アプリへ

ー 「ユーザーの皆さんと作る天気予報」もグローバルに展開したということですね!最後に、今後のアップデートの計画や、目指す未来について教えてください。
猪飼:オーストラリアやカナダ、トルコ、東欧などのローカルデータを順次追加していく予定です。世界中から最新の実況データを取り込むことで、さらなる予測精度の向上に繋げていきたいですね。
また、今後は技術的な課題だけでなく「各国の法律や業務許可」といった壁にも直面することになります。実際、海外に対して自国のデータ提供を禁止する国もあるのが現状です。ウェザーニューズはアジアを中心に各国との連携を進めてきましたが、今後も各気象局と良い関係を築きながら、予測技術の向上に役立てていきたいと考えています。
今回の世界対応はゴールではなく、まだスタートラインに立ったばかりです。世界中どこに行っても、スマホを開けばウェザーニュースが使えるという安心感がある。そんな「最強のお守り」のような予測データを作っていきたいです。


