2026.06.26

世界最先端のAI気象予測技術を活用し、独自データとAIの融合で高解像度かつ高精度な予報に挑む

ウェザーニューズは最新のAI気象技術を活用し、社会の安全に貢献していくため、2026年5月下旬にイギリスで開催されたカンファレンス「UEF2026」に、昨年に引き続き参加しました。

今回、UEFでウェザーニューズが取り組むAI気象予測技術について発表を行った工藤風貴氏、藤野純平氏に話を聞きました。実際に登壇して話した自社の取り組みだけでなく、気象業界における最新のAI動向についても聞くことができました。




UEFとは?世界各国から気象専門家が集結

「UEF(Using ECMWF's Forecasts)」とは、世界最先端の予報技術を持つECMWFが主催する年次のカンファレンスです。世界中からECMWFの気象予測データのユーザーが一堂に会し、開発者へのフィードバックや意見交換、参加者同士での経験の共有を行う貴重な場となっています。

ウェザーニューズから参加および発表を行うのは、昨年のUEF2025に引き続き、2年連続・2度目となります。

今回「UEF2026」のメインテーマは「Extreme Temperature Forecasts」でした。近年、EU圏での猛暑による被害など、極端な高温は気象業界の大きなテーマとなっています。




AI活用で1kmメッシュの高解像度予報の精度向上を実現

日本という環境に目を向けてみると、気温予測技術は様々な課題を抱えています。

日本は海岸線や山地が入り組んでおり、従来の単純な計算(気温減率による補正)だけでは、地形に影響される局地的な気温変化を正確に捉えきれませんでした。 また、世界中から集められる多様な気象モデルを組み合わせる際、空間や時間の解像度を統一する前処理が不可欠ですが、予報精度の向上に限界を感じていました。

そこで私たちは、自社の独自観測網(アメダスや企業データ、アプリユーザーからの報告などを統合した1kmメッシュの解析データ)を「正解データ」としてAIに学習させた、AIダウンスケーリング技術を開発しました。

技術の詳細は別のブログで紹介しています。

今回のUEF2026では、ECMWFの予測値とAI活用の組み合わせで、どれほどの精度向上の効果があるか、2つの猛暑日について検証した結果を発表しました。

<ケーススタディ1>2025年8月5日 関東地方(フェーン現象による広域の猛暑)

この日はフェーン現象による吹き下ろしの風と強い日射が原因で、群馬県伊勢崎市で41.8℃を記録した日です。 従来のモデルでは35℃以上の範囲を過小評価していましたが、AIダウンスケーリングを用いた予測では、35℃以上の猛暑エリアを非常に精度良く捉えることができ、予測スコアが大幅に改善しました。



<ケーススタディ2>2025年7月30日 関西地方(盆地での局地的な猛暑)

こちらはフェーン現象ではなく、内陸の小さな盆地に熱が蓄積したことが原因で、兵庫県柏原市で41.2℃を記録した日です。 AIダウンスケーリングは盆地周辺の高温エリアを捉えることには成功しましたが、非常に局地的かつごく短時間だけ発生した40度を超える高温を正確に予測することには苦戦していました。また、1日の気温の推移を見ると、やや高めに予測する傾向が見られました。


発表内容はこちら(Thursday, 4 June 2026)からご覧いただくことができます。



今回の検証から、当社のAIダウンスケーリングは、2025年の日本の夏シーズンにおけるフェーン現象のような「広範囲にわたる猛暑」に対して極めて、高い効果を発揮することが実証されました。一方で、盆地などで発生する「局地的かつ短時間の高温」の予測には、まだ課題が残されています。

ウェザーニューズは引き続き、AIに学習させる教師データそのものの精度を高めていきたいと考えています。




気象業界における最新のAI動向をキャッチアップし、社会の安心安全に貢献

現在、ウェザーニューズでは自社特有のデータを最大限に活かしたAI気象モデルの開発を独自に進めています。その開発基盤として活用しているのが、ECMWF(欧州中期予報センター)が欧州気象局とともに開発し、この分野のデファクトスタンダードとなりつつあるオープンソースのフレームワーク「Anemoi」です。

今回、私たちが現地へ赴いた大きな目的の一つは、この「Anemoi」の開発者や、さらに次世代のAI気象モデルの開発者たちと直接コミュニケーションを取ることでした。

実際にイベントを通して、データ同化の専門家でありECMWFのAIモデル開発をリードする方や、予報運用・データ配信基盤を構築するエンジニアの方など、AI気象予測の世界的なトップランナーたちと密なディスカッションを交わすことができました。

さらに、AIモデルの開発チームと個別にミーティングを行う機会にも恵まれました。私たちが「ユーザーからの天気報告(ウェザーリポート)を入力データとして活用する、新しい予測モデルの構想」を伝えたところ、その独自性や圧倒的なデータ量に大変強い興味を示してくれたことに、新鮮な手応えを感じました。

ウェザーニューズでは、この「Anemoi」を活用し、既存モデルとAIを融合させたハイブリッド型の予測モデル開発を進める予定です。こうした技術開発を通じて、極端な気象から人々の命と暮らしを守り、社会の安心・安全に貢献したいと考えています。




✈️旅の小話:イギリスの天気と「ウェザーニュース」の新機能「世界の雨雲レーダー」の活躍

最後に、現地の天気事情について少しだけご紹介します。

私たちが訪れた5月下旬のイギリスは、熱波の後に高気圧が弱まって上空に寒気が流入していたため、大気の状態が不安定でした。非常に変わりやすい空模様で、一日に何度かにわか雨が降る「降ったり止んだり」の天気が続きました。

そんな旅の道中、最近アップデートされた当社のアプリ「ウェザーニュース」の新機能「世界の雨雲レーダー」を現地で実際に使ってみました。 イギリスの変わりやすい空模様の中でも、雨雲やにわか雨の様子を表現できており、異国の地でも私たちのアプリが非常に頼りになることを身をもって実感することができました!(工藤・藤野)