2026.06.15
2026年6月、日本に大雨をもたらした台風6号(チャンミー)

台風の概況
2026年5月27日9時(JST)(2026年5月27日0時(UTC))、台風6号(チャンミー)はカロリン諸島近海で発生しました。発生後は北西に進みながら勢力を強め、6月1日の夜には暴風域を伴って沖縄本島に最接近・直撃。翌2日には奄美地方に最接近し、種子島の北を通過して九州の南東に達しました。
その後も東北東に進んで6月3日4時30分(JST)ごろ、和歌山県南部に上陸しました。上陸後も太平洋沿岸を東北東に進み、九州・四国・近畿・東海・関東甲信に大雨や暴風をもたらしながら、同日21時に関東の東で温帯低気圧に変わりました。

統計的に、6月の台風は大陸方面に向かうものが多く、日本に近づく場合でも南海上を通ることがほとんどです。今回、台風6号が日本に上陸した要因として、日本の西側で偏西風の影響により高気圧が強まっていたことと、熱帯の対流活動の影響で太平洋高気圧が平年よりもやや強まっていたことで、例年よりも北側に進路を取ったと考えられます。また、日本近海は海水温が平年よりも高い傾向にあり、台風が勢力を維持したまま通過しました。

また、台風6号によって様々な被害が発生しました。
沖縄県うるま市では、最大瞬間風速40 m/sを超える暴風を観測しました。この風の影響で、一時3万戸以上の停電、航空便の欠航、路線バスやゆいレールの運休など、地域の交通網は麻痺し、生活インフラに大きな打撃を与えました。
四国・近畿・東海地方では、局地的に降った雨により河川の水位が急激に上昇し、和歌山県の古座川では川の水が堤防を越える「越水」が発生しました。さらに串本町では、命の危険が迫っていることを示すレベル5氾濫特別警報が発表されるなど、極めて危険な状態となりました。
関東甲信越地方では、シアーライン(風の収束線)の形成に加え、小規模な低気圧が形成されたことで都心部に降水が集中しました。東京都心で12時間降水量が172.5mmに達したほか、横浜でも6月の観測史上最多雨量を記録しました。短時間での記録的な大雨により、目黒川や神田川といった都市部の河川で水位が急上昇し、レベル4氾濫危険情報が相次いで発表されました。

台風進路の精度評価
台風6号の進路予測について、9つの気象予測モデルによる予測を評価しました。 図1は、台風が発生する前の2026年5月27日9時(JST)(2026年5月27日00時(UTC))における、各予測モデルの進路予測を示しています。多くの予測モデルは実際の台風6号の進路と同じく、沖縄に接近し、西日本〜東日本の南岸付近を北東に進む予測をしています1。

FNV ens mean:Google DeepMind (CC BY 4.0) NCEP EM:アメリカ国立環境予測センター ECMWF EM:ヨーロッパ中期予報センター UKMET EM:イギリス気象庁 JMA EM:日本気象庁 ICON EM:ドイツ気象局 CMC EM:カナダ気象庁 AIFS EM:ヨーロッパ中期予報センター AIGEFS EM:アメリカ国立環境予測センター(AI全球アンサンブルモデル)
図2,3は、台風の中心位置の予測と実況の誤差を表したグラフで、横軸は予報時間(*時間先の予測)を、縦軸は予測と実況の誤差(km)を示しています。Google DeepMindが開発したFNV3 ens mean (Data courtesy of Google DeepMind, GDM-FNV3 ensemble mean, used under CC BY 4.0.)は120時間先の予報でも200 km以下の誤差水準を維持しており、一貫して最も低い誤差を示しました。


当社では、高精度の予報を提供するため、ウェザーニューズ独自の予測モデルに加え、他機関のモデルも活用したアンサンブル予報を行い、精度評価を通じて継続的な予報改善に努めています。引き続き、AI気象予測モデルも含め様々な予測モデルの精度検証を重ねることで、モデルの特性を深く理解し、皆様により高精度な気象情報をお届けできるよう努めてまいります。
◇ 参考 ◇ 1日20万通のユーザー報告を予報精度向上に活用
ウェザーニュースでは、天気アプリ「ウェザーニュース」のユーザーから1日あたり約20万通の天気報告「ウェザーリポート」が寄せられており、この「ウェザーリポート」を日々の予報に活かし、精度の向上に取り組んでいます2。
こうした取り組みによる精度の高い情報発信は、具体的な行動にも結びついています。今回の台風6号接近時には、45.5%の人がテレワークへの切り替えや休業を選択。また、39.8%の人が事前にベランダの片付けといった強風対策を行うなど、多くの人が事前の備えや働き方の変更といった行動を取っていました。
一人ひとりの「事前の備え」や「命を守る行動」をサポートできるよう、私たちはこれからも予報精度のさらなる向上を目指し、世界中の予報モデルや独自開発のモデルに加え、皆様から届く「ウェザーリポート」を活用し、より精度の高い気象情報をお届けします。



Footnotes
- 1:図1〜3は、Google DeepMind (CC BY 4.0)、アメリカ国立環境予測センター、ヨーロッパ中期予報センター、イギリス気象庁、日本気象庁、ドイツ気象局、カナダ気象庁、ヨーロッパ中期予報センターのデータを基に筆者が作成。 なお、「ens mean」および「EM」 は「Ensemble Mean」の略で、各予測モデルのアンサンブル予報の平均値を意味します。アンサンブル予報とは初期値や計算条件を少しずつ変えて、同じ予測シミュレーションを複数回計算する手法です。 ↩︎
- 2:リポートを活用した予報精度検証の取り組みについては、こちらのブログをご確認ください「【4年連続予報精度No.1】精度評価の裏側と精度を高める3つのポイント」 ↩︎

